「大阪の味」「大阪の元気」を世界に、と奮闘する3代目

オオサカジン運営事務局

2020年11月27日 09:38

恩地食品株式会社 / 代表取締役社長 恩地宏昌 氏

「あ~おんちかった」――40代以上の人なら、このフレーズを覚えている人も多いはず。ラジオCMが終わって10数年がたつが、今も「恩地のうどん」を思い出すのは、それだけ簡潔なダジャレのインパクトが強かったからだろう。CMで知名度をグンとアップさせた大阪府枚方市に本社を置く恩地食品。3代目社長の恩地宏昌氏は「大阪の味を世界に広めたい」と、大阪人らしいノリの良さであの手この手を繰り出す。



知名度を一気に高めた「あ~おんちかった」


恩地家はもともと、冬場に作った氷を氷室で保管して夏に出荷する事業を営んでいた。夏場の副業としてやっていたのがうどん作りで、恩地製麺所ができたのは1926(昭和元)年。祖父の他界に伴い家業を継いだ父がうどん作り専業に舵を切った。
タレントでラジオパーソナリティーの浜村淳さんを起用したテレビCMが始まったのは1976年。当時の製麺業では考えられないチャレンジだった。社長をはじめ社員の名刺には今も「あ~おんちかった」の言葉が印刷されている。



当時の麺屋は3K職場。人が来ないもんですから、テレビを営業マンにしようと考えたようです。その求人効果は抜群で、1985年に初めて大学新卒者を採用した際には希望者が殺到しました。
「あ~おんちかった」というのは、実は浜村さんが考えたものなんですよ。締めの言葉をどうしようかと考えていたら、浜村さんが、これでどうですかと。CMは30年続けて打ち切ったのですが、このフレーズをうちにいただけないかとお願いして、譲ってもらった形です。


「食生活の提案者」目指し、女性社員が活躍する新商品開発


「鍋焼きうどん」を関西で初めて売り出したのは恩地食品だが、新商品開発やリニューアルには大きな力を注いでおり、春夏、秋冬ごとに新しいラインアップを増やしている。担当するのは、社長直轄の開発チームだ。会社の企業理念「恩地の目指す方向」の一つに「技術革新と創造によって食生活の提案者であれ」というのがあり、まさにそれを実践していると言える。



組織に横ぐしを通す形でチームをつくっています。麺の改良なら研究室、他社動向は営業、食材・資材調達はマーケティング・企画、大量生産技術は製造現場と、各部署から参加して、毎週試作・試食を繰り返しています。10月から新チームが発足したのですが、6人中4人が女性で、リーダーも初めて女性が就きました。やはり女性目線は大切で、スーパーなどの麺売り場に行って「殺風景、かわいさがない」と感じた女性社員の声も開発に生かしています。


「かるしお」認定製品も3品。塩分なしでコシを実現


新商品の一つが、「かるしお」認定商品。国立循環器病研究センターが推奨する減塩食品のことで、塩分のとりすぎによる循環器病リスクを低減する目的で考案。同センターが審査の上、おいしさと栄養バランスを兼ね備えた製品に認定マークを付与する。恩地食品では「国産丸うどん」と減塩だし、それに、夏季限定の「冷し国産うどん」が認定を受けている。



営業の社員が展示会を見に行って、面白くて意義があると思って社内で提案したのがきっかけです。国産丸うどんは、国産小麦から製粉した小麦粉のみで作っており、塩分は含みません。うどんのコシや弾力は、小麦粉を練ることで生まれるグルテンの働きによるのですが、塩がないとグルテンの働きは著しく落ちます。そこをハードとソフト両方の技術でクリアしました。


あっと思わせるレシピも続々。たこ焼きうどんも商品化?


うどんのほか、そばや中華そば、焼きそばの麺類のほか、大阪の味にこだわっただしも販売。ホームページではこれらを使ったレシピも豊富に紹介している。こちらを担当するのは営業グループ主任の山口博之さんと女性社員の2人だけ。「きしめんにあずきとアイスをのせて」や、うどんを使った「タコのペペロンチーノ」などあっと言わせるメニューも。「社長からはスイーツを作れと言われています(笑)」と山口さん。



消費者の嗜好は多様化しています。それに合わせて麺も進化させ、1人前の量も200グラムから180グラムに減らしましたが、新しい食べ方もあっていいのではと考えたんです。今は商品化はしていませんが、粉もん同士のコラボで「たこ焼きうどん」も開発しました。

レシピは、社員が食べてポイント化して評価していたのですが、今後、お客様からコメントを得られるようにYouTubeで配信していきます。


職人の技術と勘を生かし、大阪の味を愛情で育てる


恩地食品は創業以来、「手打ちを超えためんづくり」と「愛情(こころ)で育てた大阪の味」にこだわってきた。その大阪の味を世界にというのが、社長就任以来の3代目の悲願だ。

手打ちのうどんやそばは、伸ばした麺生地をたたんで包丁で切って作ります。すると、断面は四角くなりますが、四角い麺は保湿性に乏しく、乾きやすいのです。そこで昔ながらの切り口の丸い「大坂のおうどん」と「ビリケンさんのカレーおうどん」をお土産商品として開発しました。丸うどんは四角麺の弱点を抑えるとともに、つるんとした食感やだしのりの良さなどで、手打ちを超えた麺だと思っています。
うどんは100%機械でできますが、2割は職人の技術と勘に委ねています。人がかかわることで愛情が込められますし、握ってみないと硬さもわかりませんから。

海外に輸出するためには、日持ちをよくしなければなりません。半生うどんは3か月くらいしか持たないので、乾麺も視野に入れて輸出できる麺づくりにも挑んでいきます。「おんちのうどん」ではなく、業界全体で大阪のうどんを世界に発信していきたいですね。




恩地食品株式会社
本社:〒573-0067 大阪府枚方市伊加賀緑町2番2号
オフィシャルサイト:https://www.onchi.co.jp/