2022年04月08日 09:30
消防用ホースは、少しでも厚みが違ったり傷がついていたりすると規格外品となり、産業廃棄物として破棄されてしまいます。破棄するにも費用がかかる上、使わずに捨てるのはもったいない…ということで、丈夫で耐久性、耐水性に優れた素材を活かし、『らうらうじ-second hose-』を立ち上げました。
これはOsaka Metroの引退車両の部品である、つり手や連結器のジャバラを再利用し新たなアイテムに商品化する『OsakaMetroクリエイト×廃車再生プロジェクト』で、3月23日から発売を開始しました。地下鉄車両は30〜40年で引退となるのですが、少しでも廃車車両からゴミを減らしたい!ということで、つり革の手すりと連結器のジャバラを回収させていただいて、カバンへとアップサイクルしています。ジャバラの生地は、少し重いのですがとても丈夫。カバンの部材にはぴったりなんです。
消防用ホースでつくったカバンにタグをつけるような軽作業は、元々障がいを持った方が働く作業所にお願いしていました。
作業所で働く方との繋がりはありましたが、そこまで深く首を突っ込んでいた訳ではなかったんです。
しかし消防用ホースのカバンを販売して数ヶ月後、東北大震災があったんですよね。企業として見て見ぬ振りはできない、ただ大きい会社さんほどの支援金はない、自分たちにできることはなんだろう…と考えていた時に、震災地の障がいを持つ方の状況を耳にしました。
施設は元々土地を使って野菜などをつくり、それを売ることでお小遣いにしていたものの、原発事故の関係で一切土地が使えなくなり、国からの補助金以外が入らなくなり…健常者の方も困っていますが障がい者の方がもっと大変な思いをされていることを知ったんです。
ぬくもりのあるボタンをつくる、という仕事を作業所の方と一緒に考えました。近くの家具屋さんの余った木材を使用している為、木の種類が違うので、色が違うボタンが出来上がるんです。出来上がったボタンは定期的に購入させていただき、バングラデシュに送りフェアトレード商品(※1)としてカバンに装飾してもらい、完成後百貨店で販売。「応援」という形でやらせてもらっています。
滋賀のサンワード野洲工場の近くには作業所が多いのですが、お付き合いがあった中のひとつの作業所でダウン症女性が描いた絵を拝見させていただきました。その絵の構図や色使いに感動してしまって。そこですぐに一緒にものづくりをしましょう!と。生地にその絵をプリントしてカバンやポーチをつくり、『らうらうじ-YUKA-』として販売をしています。
その後、京都のギャラリーで原画展をした際はご本人にも来ていただいて物販もして…たくさんの方に来場していただきました。来て下さったのは障がいのある方が身内にいらっしゃるという方が9割でした。いろんなお話をさせていただいたのですが…障がいを持ったお子様を持たれている方は、お子様の未来を真剣に考えられているからこそこういった取り組みはやっていかないと、と改めて感じましたね。ただ自分たちは民間企業で利益を追求していかなければならない。
『いいことやってるね』ではなく『うまいことやってるね』といってもらわないといけないので。
早急に結果を出せるビジネスモデルを構築していくのが今の課題ですね。
『持っている才能』と『僕たちのノウハウ』を一緒に形にしていくのが大前提なので、デザイナーさんと同様、顔写真とプロフィールを出せる方、親御さんにご了承いただいた方ならデザイナーとして契約という流れでさせてもらっています。
ただ、障がいを持ったお子様の活躍を世に知ってもらうことをためらう親御さんもいます。
オープンに前に出てくることができる風土に今後整えていくのが今の日本の課題だと感じますね。
OEMの仕事は、お客様に言われたことをその通り作る仕事。もちろんものづくりをする上で基準は必要なので、例えばロゴが5ミリずれているからアウト!というのはわかります。ただ、実際手に取る方がどれだけ喜ぶかを考えた時、基準からほんの少しずれているだけでだめになるOEMの仕事はちょっと違うなという思いがありました。とはいえ、自社商品をつくるにしてもクライアント様の商品を邪魔するものはつくれない、じゃあどうするかと考えた時に、企業の本質である社会への貢献を第一に考えたものづくりをしたいと思ったんです。そんな時に消防ホースの話がやってきました。
1年かけて商品化し、できたカバンは百貨店の催事で1週間で約200万円売り上げました。店頭に立って『人が持っていないカバンが買えてよかった!』『これ何でできてるの?』というお客様の声を聞いて、お客様が笑顔になるものづくりをしていれば自分たちもやりがいがある!という実感のもと、OEMと同時進行でやりたいことを重ねてきたんです。
OEMは発注起業様次第なので、いつまでたっても自分たち主導の仕事ではないとコロナで気付けたからこそ、自分たちで発信できて自分たちでつくれるものはこれから力を入れていこう、と力を合わせ売り上げを増やしてきているところです。
工場は新卒、本社は基本中途採用をして新しい社員を迎えています。一度、年度の途中で営業職が欲しくて募集をかけたんですよね。そしたら、『SDGsにかかれる仕事がしたい』と国立大学の子がやってきてくれたんです。でも、国立大の子がうちに来るのはもったいない…と思って採用を見送ったんですよね。
その後あるマーケッターの方から『今SDGs(※2)に一番敏感で考えている方は、生まれた時から平和な時代を生きていない、環境に対する意識がめちゃくちゃ高い、自分ひとりで考える機会も多いZ世代(※3)だ』という話を聞いて。Z世代向けにSDGsを語っていった方が良いって言われて、採用すればよかった!って後悔しました(笑)。
面接だからいいことを言っているのかと思っていたらそうではなくて、お金ではなく、本気でやりたいことをやっていきたい子たちがこれからは必要ですね。
今は自社ブランドをもっと皆様に知ってもらうべく活動中ですが、ちゃんと結果を出して行きたいと思います。そしていずれは若い方が集まり勉強できる気軽な空間をつくりたいです。内装は障がい者アート、提供するコーヒーはオーガニック、パンは障がい者施設のパン工房のパン、店員はお客様対応できる障がいを持つ方、SDGsに絡む商品を陳列販売・・・等々。人の気持ちが温かくなり、笑顔いっぱいな空間をつくっていって、全国に広げて行きたいです。もちろん1社では出来ないので、一緒にやってくれる会社を探しながら広げていきたいですね。できれば大阪府下か滋賀県野洲の工場近くで始めたいです。お金も時間もかかるかもですが、できたら楽しいですね!