2022年09月02日 09:30
2030年には、ファンデーションで肌を整えることがビジネスマンの身だしなみになっているでしょう。
5年前は男性の脱毛なんて考えられませんでしたが、今や普通のこととして受け入れられている。同じように、メンズメイクも近い将来“普通”になるんです。
大阪芸術大学の放送学科を卒業後、テレビ番組制作会社で美術制作に携わりました。次第に広告業界にも興味が湧き、転職して広告代理店で営業や顧客分析も経験しました。その後ベンチャー企業に転職するのですが、そこで初めて美容業界を知ることになり、取り扱うことになったのがたまたま美容系商材だったんです。
お客様にとって最適な商品が他にあるとわかっていながら、売上げのために自社商品を勧めなければならない。これで本当によいのだろうか?これが自分のしたいことなのだろか?と問うようになりました。
卸売りであれば自社商品に縛られず、お客様にぴったりの商品を提案することができる。
そう考えた私は、2013年に美容商材を専門に扱う商社『シンビシン』を立ち上げました。
『シンビシン』という社名は、『新しい美容』『震える感動を与える美容』『真の美容』という3つの『シンの美容』を提供し、お客様の『心(シン)』を上向きにしたいという願いを込めて名付けました。最初に扱った商材は美顔ローラーでした。付き合いのある取引業者から『こんな商品があるが売ってもらえないか』と声を掛けられ、ご恩を返す気持ちで引き受けました。当時まだ美顔ローラーは市場に出回っておらず、『何それ』という反応が返ってくるような商品たったので、引き受けたもののどうやって売ろうかと思案しました。
お客様は一人ひとりさまざまなニーズを持っています。ですから当社の取扱商品も必然的に増えていきました。現段階で1万5,000点以上の商材があるでしょう。お客様が何を求めているのか知るために、私自身がたびたび店舗に赴いて話しを聞くこともします。ちょっとしたお話しの中に、事業に活かせるヒントやアイデアがあるからです。まずは何よりもお客様の声を大切にし、そこに収益性、市場性、デザイン性、それに私の直感や感性も加えていきます。
私たちは商社のポジションを中心に事業を展開していますが、地域ディーラーとして取引を行うこともあれば、メーカーとして自社開発商品を販売することもあります。膨大な数の商品を扱っていますが、それでも顧客ニーズに合致する商品が見つからない場合があるからです。
通常は商習慣に倣って業態間を横断することはしません。しかし私たちには横断型業態の立場を取る必要がある。
「お客様が真に望むものを届ける」ということを使命にしているからです。ですからお客様の声に近づくためにディーラーにもなりますし、それを形にするためにメーカーにもなります。
「THE.N.B.P HOMME」は、ファンデーション・アイシャドウ・ヘアシャドウ・プライマー・リップバーム・パウダー・アイブロウなど10アイテムを集約した男性用の携帯ミニ化粧台です。フタ部分にミラーが付いていて、どこでもメイク直しができます。見た目にもこだわり、持ち歩きたくなるようなスタイリッシュなデザインに仕上げてあります。ただ今の段階では”販売“よりも”認知“を優先しています。”男性がメイクをする”という新しい価値を発信して世間の注目を集めること、それがこの商品を販売した一番の目的です。
人は自分にとって価値があるのかわからないものにお金を払うことはしません。今はまだコンシーラー(※)が何かわからない男性が大半。ですからメイク商品を販売するだけでなくメイク方法を指南することも重要なんです。そのために「THE.N.B.P HOMME」の販売と並行して「メンズビューティーカフェ」の開設も進めています。美容室の一角にメイクブースを設置し、カフェを楽しむような気軽さでメイクを体験できるようにしています。メイクの魅力や価値を教え伝えなければ「メイクがしたい」というニーズは生まれません。(※)コンシーラー:一般的に、シミやニキビ跡、クマや赤みなど、ファンデーションだけでは隠しきれない肌の色ムラをカバーしてくれるコスメのこと。
これから売り出す段階の商品を「100%売れる」という確信を持って仕入れることはありません。在庫を抱えるリスクを考えると、やはり判断に迷う場合もあります。
そうした時、私はその先に人の笑顔が見えたら「やる」と判断します。この商品を世に送り出せば、こんな人たちが喜ぶだろう、あんな人たちが笑顔になるだろう。そういうイメージが見えたら、たとえ利益にならないとわかっていても私は「やる方」を選びます。