株式会社リ・レストフル 代表取締役 高田宗慶
カーリースを中心に保険代理店や修理工場、新車販売など、車にかかわるさまざまな事業を手掛けるのが株式会社リ・レストフル(まらねろモータースグループ /箕面市)。
カーシェアリングが拡大するなどマイカー離れが進む時代の流れを受けて始めた、車を自宅まで届け引き取りにもいく宅配レンタカーも会員数を増やしている。
高校生のときにアルバイトに明け暮れ、「とにかく儲けたかった」と語るのが
代表取締役 高田宗慶(ひろのり)氏。
リーマンショックによる債務超過などを経験し、今では
社員第一主義を掲げ、「地域社会の交通問題の解決に貢献したい」と話す。
その変化の裏側には何があったのか――。
アルバイトで貯めた500万円を元手にバイト先を買収。18歳で社長に
箕面市に生まれた高田氏。中学2年生の時に父親が体を壊してリストラにあったことで貧困生活に陥る。兄弟4人で2つのカップ麺を分け合って食べたことも。高校に入ると授業はそっちのけで、新聞配達をはじめ中華料理店の出前、中古車店での洗車、焼き鳥屋など掛け持ちでさまざまなアルバイトをこなし、平均月収は17、8万円にもなったという。高校卒業の翌年、貯めたバイト代500万円 を資本金に有限会社を設立し、また5000万円の資金調達に成功した後にアルバイト先の一つだった大手自動車買取販売会社のフランチャイズ店を買収。 18歳で社長になった。
高校時代は早く社会に出たいという思いだけでがむしゃらに働いていました。お金を稼ぐのが楽しかったですね。一匹狼的な性格ですので大衆の群れに入るのはいやで、起業したいという漠然とした思いはあったものの、明確なものは何もありませんでした。フランチャイズ店を買収したのも、バイトをして仕事がある程度分かっていたからというだけのことです。それでも、ビジネスモデルが確立していましたので、初年度から6億円の売上を挙げました。僕は車には興味がなかったのですが、営業には力を入れました。人と接することは楽しかったですね。
フランチャイズ制度の理不尽さに疑問を感じ、6年で脱退。売上は3分の1に
店の運営は極めて順調で、500店舗近くあるチェーン店の中で常に上位を占め、1位や2位をとることもしばしば。同じフランチャイズの4店舗を次々に買収していった。一方で、フランチャイズ制度の理不尽さも見えてくるようになった。
例えば、営業優秀店として加盟店からそこの社員が研修にきても、本部は仲介料をとるのに店には1円も入らないことに違和感を覚えたことを含め、様々な理不尽さへの疑問が次第に募り、6年後、フランチャイズ契約の解除を決断する。
その時には売上が30億円に達していたのですが、大手の看板があってこそだったことを痛感しました。
半減を覚悟していた売上が、実際には3分の1に激減。従業員も全員辞めてしまい、僕一人で何とか回していくという事態に陥りました。
経営が順調で周りからちやほやされて、天狗になっていたことを思い知らされたこともあって、心機一転を図って社名を「リ・レストフル」に改めました。「リ」はリターンの意味。レストフルには「安心感」という意味を込めています。
車の買取・販売からリース業を中心とした業態に転換
併せて、事業形態の見直しにも着手。そこで大きなヒントを与えてくれたのが、子どもの頃からの唯一と言ってもいい友人。
友人は大手自動車メーカーの販売会社に勤務しており、彼の話から
カーリースの面白さと有望性に気づかされた。買取・販売だったらだれでもできるが、リース業は決算や損金などの知識に加え、査定能力が必要とされることにやりがいを感じたのだ。取引先の板金工場を買収して、自動車リース業を中心とした事業内容に切り替えていった。
当社はレンタカーでもそうですが、リースする車はすべて新車です。中古車ですと、中古車市場で買えないときもありますが、新車ならディーラーとのお付き合いがあれば供給が安定しています。定期的に新車を購入するわけですから、最初に取引を始めた友人の会社だけでなく、今では他社のディーラーさんにも広がり、皆さんに喜んでいただいています。もちろん、お客様にとっても新車で快適なカーライフを楽しんでもらえるというメリットも大きいです。何年か経つと車は下取りに出すのですが、その査定が重要です。下取り価格を差し引いてリース料を決めるからです。ここにも面白さがありますね。
地獄を見たリーマンショック。純資産数億円が債務超過数億円に
こうして順調な再スタートを切ったが、2008年のリーマンショックは、高田さんを天国から地獄に落とす出来事だった。経済全体の冷え込みはもちろんだが、当時は輸出業の比率が大きかったため、為替が大幅な円高に振れて大打撃をこうむったのだ。
純資産が数億円あったのに、いきなり数億円の債務超過に陥ってしまったのです。売っても売っても赤字ですから、精神的にもかなり追い込まれましたね。今でこそ増収を重ねて売上200億円という数字を記録していますが、当時は自殺すら頭をよぎりました。
その経験から、外的要因に負けない会社づくりというのが、経営のテーマになりました。
目を見開かされた「盛和塾」の<利他>の教え
立ち直りのきっかけは、当時加入していた青年会議所(JC)の先輩のツテで銀行から2000万円借りられたこと。
そしてJCは、新たな人のつながりを生み、経営姿勢を見直す機会を与えてくれた。その場が、京セラの創業者で日本航空の再建などに辣腕を振るった
稲盛和夫さんの経営者としての教えを学ぶ「盛和塾」だ。
僕は偉そうなことを言う人が嫌いで、実績のない人の言うことなど聞きません。しかし、知り合った方の一人に、優良企業の経営者で実績は抜群という人がいて、その方から経営に関する思想を聞いたんです。目からうろこでしたね。
仕事は従業員のためだというのです。金儲けや納税のためではないんですね。
実績があるだけに、言うことに説得力があるんです。そして稲盛さんの本を読まされたら、そこに「利他」の思想が書かれていました。これを読んで、盛和塾に入るしかないと。それをターニングポイントに人間関係がいっぺんに変わりました。
人と人とのつながりが、お客様に満足してもらえる良いサービスを生む
「利他」とは「人に良かれ」と思う気持ち。
稲盛さんは
「利己の心で判断すると、自分のことしか考えていないので誰の協力も得られない。利他の心で判断すると周りの協力が得られ、視野も広くなって正しい判断ができる」と説いた。
付き合いする人間が変わって、僕自身のマインドを根本から変えてくれました。生き様もそうです。仕事とプライベートの境目はないと思っていますが、食事にしても勉強会にしても塾生はそんな人ばかり。また、会社の決算書は社長の人格を表すことも教えられました。リース業は相手を見極める力がないとダメなんですが、決算書を読み解く力は人を見極める力でもあるのです。
今は、盛和塾のマインドを柱に、稲盛さんになんて言われるかが僕の判断基準になっています。
事業は成功しないといけません。そして従業員に還元するのです。
だから、社員第一主義を掲げています。人と人とのつながりほど強固なものはなく、社員たちとのその結びつきが良いサービスを生み出す原点だと考えているのです。
スズキ自動車 会長兼CEO 鈴木修氏と共に
お客様にも従業員にも快適、好評な宅配レンタカー
宅配レンタカーもそんな思いから始まった。レンタカービジネスは2013年に開始。
「返すのが面倒」という客の声に応えて、
自宅まで車を届け使用後は引き取りに行く宅配レンタカーを始めると、公共交通機関での移動が大変な子育て主婦層を中心に好評を得て拡大していったという。
この事業は、高級車フェラーリの本拠地があるイタリアのマラネロから名前をとった
「まらねろレンタカー」として営業を行っている。
全部新車な上、カーシェアリングとは違い、毎回清掃してきれいな状態で貸し出しをしますので、利用されるのは良質なお客様ばかりです。会社としてもそういう方たちを狙いにしています。ヘビーユーザー(お得様顧客)になると性格も分かり、細かいことを聞かなく済みますし信頼関係もできます。予約から決済まですべてWEBで完結するシステムを整えていますので、お客様が快適なのはもちろん、従業員もストレスなく仕事ができるメリットもあります。全国の協力店との連携により、ほとんど全国でご利用いただけます。
宅配レンタカー通じて交通弱者を支え、地域経済の活性化に貢献を
2020年、新会社「イノベーションフィールド」を設立した。世界で導入が進められ、日本でも社会実証に向けた動きが加速している
MaaS(マース)(※)に対応していく狙いがある。マースとは、複数の交通手段を利用するときに最適な組み合わせを提供するとともに料金の支払いを一括で行えるようにするサービスのことで、ICTの進化で最近ではより幅広いモビリティサービスが検討されている。
(※)MaaS(マース):Mobility as a Servieの略。MaaSはスマホアプリ又はWebサービスにより,地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して,複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり,新たな移動手段(AIオンデマンド交通,シェアサイクル等)や関連サービス(医療・福祉等)も組み合わせることが可能なサービスである。:内閣府HPより
今世界では、地域の住民や旅行者のニーズに応じて、複数の移動手段を最適に組み合わせ、予約から決済まで一貫して行えるサービスの提供が増えています。
宅配レンタカーも移動手段の一つとして有力な手段だと思いますので、交通弱者の方々が移動手段がないことを理由に外出をあきらめることがない仕組みを提供することで地域経済の活性化に貢献できると考えています。
株式会社リ・レストフル(まらねろモータースグループ )
代表取締役 高田宗慶
本社:箕面市西小路4‐4‐1
オフィシャルサイト:https://515094.com/