2023年12月08日 09:30
とはいえ当時は、起業も就職も考えていませんでした。そもそも仕事とは何かが、まったくわかっていなかったんです。
そこで、僕にやれることはなにかと考えました。そのためには、自分のやりたいことをやっている人や、僕とは違う行動をしている人の話を聞いた方がいいんじゃないか。そう思って、いろんな人に会いに行きました。
いろんな人の話を聞いても、自分のやりたいことは見つからないなと思ったのが結論でした。そうなって自分が本当にやりたいことは何だろうと、あらためて考えたんです。そこで思ったのは、僕は挑戦したい思いが強い。だけど挑戦したい人にとっては、環境がないと難しい。だったら、挑戦する人のための環境を作りたいなと思い始めたのが、きっかけでした。
地域の課題を解決するなど、なんらかのテーマを決めています。それをもとに事業計画を書いて、擬似マネーとかで資金調達をするなどして、最終的に販売するまでの全8章があります。各章をクリアするごとにバッジがもらえて、それを8個集めていく。ポケモンなんかに近い感じですかね。
リーダーシップや主体性など、非認知能力といわれるものは数字で表れにくい。ですが、そういうものがアントレプレナーシップのベースです。「アントレクエスト」はそれらが紐づくように設計しています。
マーケティングや広告、広報など、基本的には5人にそれぞれ役割を与えて、自分の役割の部分を注力的に頑張る。
ですが結論としては全員が、全部のことを体験する。そのなかで自分の役割の部分は必ず発表するとか、そこは責任持ってやろうという感じになっています。
他の会社さんがやっている起業家教育は、個人でビジネスアイデアを考えてとか、個人のアイデアをベースにしたものが多いんです。だけど我々は、社長になることが本質ではないと思っています。「アントレクエスト」でリーダーを経験してみて、『自分はリーダーになるよりも、誰かをサポートする方が得意かも』など、そういう気付きがあるかもしれない。
そういったことはチームで体験しなければ、なかなか気付けないと思うんです。
人ってすごい要素もあれば、すごくないところもある。できないところばかりに目が向きがちですが、できることも沢山あるんです。自分の得意、不得意に気付けることは強みになります。
それを理解して『こんなことをやってみたい』とか、『意外と自分はビジョンを発信するのが得意だな』などと思えば、それはもっと進めるべきです。
「アントレクエスト」は、早くにそういうことに気付いたり、触れられる機会をみんなに持ってもらえるようにしています。
参加者の方は最初は『起業って聞いたことはあるけど、具体的に何をしていいのかわからない?』みたいな声が50%くらいなんですよ。
「アントレクエスト」は、何を作るか考えて事業計画を書いて、どういった層をターゲットにしてどう販売するのかなど、起業の流れを一気通貫で全部体感できる。本当に会社を作るうえで必要な、全体像がつかめるようになっています。
会社って新規のアイデアが大事だみたいなイメージを持っている参加者もいますが、でもそのアイデアはお客さんに届かないと意味がない。そのためにPRのことを考えたり、マーケティングをしたりする。
イベント後のアンケートでは、そういうことを全部含めて起業なんだということが明確になったという声もあり、ありがたいことに、90%以上が楽しかったといった高反響をいただいています。
多分Zoom(Web会議サービス)とかでもブレイクアウトルームを作ってやれば、できるといえばできる。そういう手法も、あるかもしれないですね。だけどスポーツをやってたきたこともあって、肌感覚ってすごく大事ですね。
サッカーをしてた時もトッププレーヤーと対戦する時って肌で感じるんですよ、『こいつ強いな』とか。
例えば講演なんかでも話している内容はともかく、目の前で話しているその人の本気度や熱量が高いと感じられると納得させられたり、伝わりやすいんじゃないかなと思うんです。
「アントレクエスト」もみんなが直接顔を合わせて、前のめりに向上心を持って取り組んでくれています。
我々はこういうワークショップを売っているというよりは、その空気感であったり、空間を売っている。そんなふうに、すごく思いますね。
僕らは起業家育成をしていますが、成功するためにはマインドがもっとも重要だと思っています。機会はある程度は平等にありますが、そのなかでチャンスをつかめる人と、つかめない人がいます。それは自分のマインドやチャレンジ精神だったり、そういうところに依存すると思っているんです。「アントレクエスト」を通して、まずは挑戦する人が増えてほしい。(※3)チェンジメーカー:社会課題にビジネスなどを通して介入し、課題解消に挑戦する人を指す。
弊社は企業家を増やすよりも、チェンジメーカー(※3)と言ったりしますが、社会の課題だったり、しくみを変えていく若者を増やすことをテーマにしています。
僕らがそういうチェンジメーカーを増やすことで、より社会が良くなる。そんな存在になれればいいなと思ってます。社会課題などに当事者意識を持ち、もっと自分ごととして物事や社会を捉えていくような若者を増やす。
それがこの直近、5年くらいの弊社のテーマですね。