小学生からの起業家教育サービスで、若者の挑戦をデザインする会社

オオサカジン運営事務局

2023年12月08日 09:30

株式会社Armory(アーマリー) 代表取締役 福永祐作氏

夢はプロのサッカー選手になることだった。
しかし彼はケガの影響もあり、20歳のときに5歳から始めたサッカーを辞め、スパイクを脱ぐ決断をした。

彼とは、若者向けに起業家教育プログラムを企画・運営する株式会社Armory(アーマリー)を立ち上げた福永祐作氏である。
本気で目指したプロサッカー選手の道をあきらめるのは、容易ではなかった。
決断したあと、胸に喪失感が充満した。しかしそれを長く引きずることはなく、福永氏は程なくして前を向いて進み始める。



とはいえ当時は、起業も就職も考えていませんでした。そもそも仕事とは何かが、まったくわかっていなかったんです。
そこで、僕にやれることはなにかと考えました。そのためには、自分のやりたいことをやっている人や、僕とは違う行動をしている人の話を聞いた方がいいんじゃないか。そう思って、いろんな人に会いに行きました。


学生、社会人を問わず関心を持った人物と会い、彼らの話を聞きながら、自らの方向性を絞っていった。
だが……。

いろんな人の話を聞いても、自分のやりたいことは見つからないなと思ったのが結論でした。そうなって自分が本当にやりたいことは何だろうと、あらためて考えたんです。そこで思ったのは、僕は挑戦したい思いが強い。だけど挑戦したい人にとっては、環境がないと難しい。だったら、挑戦する人のための環境を作りたいなと思い始めたのが、きっかけでした。




社会経験がないまま、アントレプレナーシップ教育事業を起業


そうして社会経験がないまま、現在の事業の前身にたどり着く。
事業内容は当時からほぼ変わりなく、福永氏曰く「箱を会社にしたか、個人かの違いくらいしかない」。
そんなArmory(アーマリー)の主要サービスのひとつは、ゲーミフィケーション型アントレプレナー教育事業(※1、2)であり、プログラムの名称は「アントレクエスト」
これは5人1組でチームとなり、ロールプレイングゲームのようにミッションをクリアし 全8章からなるクエストを進めていくうちに起業するのに必要なことや、経営に関することが学べるというもの。
(※1)ゲーミフィケーション:ゲーム要素を活用して、能動的に人を行動させる仕組み。
(※2)アントレプレナー:一般的には「ゼロから会社や事業を創り出す人」(起業家)のこと。


地域の課題を解決するなど、なんらかのテーマを決めています。それをもとに事業計画を書いて、擬似マネーとかで資金調達をするなどして、最終的に販売するまでの全8章があります。各章をクリアするごとにバッジがもらえて、それを8個集めていく。ポケモンなんかに近い感じですかね。
リーダーシップや主体性など、非認知能力といわれるものは数字で表れにくい。ですが、そういうものがアントレプレナーシップのベースです。「アントレクエスト」はそれらが紐づくように設計しています。

チームの5人は、それぞれに役割を分担する。
マーケティングや広告、広報など、基本的には5人にそれぞれ役割を与えて、自分の役割の部分を注力的に頑張る。
ですが結論としては全員が、全部のことを体験する。そのなかで自分の役割の部分は必ず発表するとか、そこは責任持ってやろうという感じになっています。





“気付き”を大事に!驚異的なユーザー満足度90%を獲得


同業他社が展開するアントレプレナー教育事業とは異なる、Armory(アーマリー)ならではの独自性については、こう語る。

他の会社さんがやっている起業家教育は、個人でビジネスアイデアを考えてとか、個人のアイデアをベースにしたものが多いんです。だけど我々は、社長になることが本質ではないと思っています。「アントレクエスト」でリーダーを経験してみて、『自分はリーダーになるよりも、誰かをサポートする方が得意かも』など、そういう気付きがあるかもしれない。
そういったことはチームで体験しなければ、なかなか気付けないと思うんです。
人ってすごい要素もあれば、すごくないところもある。できないところばかりに目が向きがちですが、できることも沢山あるんです。自分の得意、不得意に気付けることは強みになります。
それを理解して『こんなことをやってみたい』とか、『意外と自分はビジョンを発信するのが得意だな』などと思えば、それはもっと進めるべきです。
「アントレクエスト」は、早くにそういうことに気付いたり、触れられる機会をみんなに持ってもらえるようにしています。


このプログラムが対象としているのは、小学5年生から大学生。イベント後に行ったアンケートによると、参加者の満足度は90%以上と驚くほどに高い。

参加者の方は最初は『起業って聞いたことはあるけど、具体的に何をしていいのかわからない?』みたいな声が50%くらいなんですよ。
「アントレクエスト」は、何を作るか考えて事業計画を書いて、どういった層をターゲットにしてどう販売するのかなど、起業の流れを一気通貫で全部体感できる。本当に会社を作るうえで必要な、全体像がつかめるようになっています。
会社って新規のアイデアが大事だみたいなイメージを持っている参加者もいますが、でもそのアイデアはお客さんに届かないと意味がない。そのためにPRのことを考えたり、マーケティングをしたりする。

イベント後のアンケートでは、そういうことを全部含めて起業なんだということが明確になったという声もあり、ありがたいことに、90%以上が楽しかったといった高反響をいただいています。


コロナ禍以前には無かったリモート会議が当たり前になるなど、人と人が直接会わずとも通信を介して事が済ませられるようになってきた。そんな中で「アントレクエスト」は、リアルな世界で展開されることも、ひとつのポイントではないだろうか。

多分Zoom(Web会議サービス)とかでもブレイクアウトルームを作ってやれば、できるといえばできる。そういう手法も、あるかもしれないですね。だけどスポーツをやってたきたこともあって、肌感覚ってすごく大事ですね。
サッカーをしてた時もトッププレーヤーと対戦する時って肌で感じるんですよ、『こいつ強いな』とか。
例えば講演なんかでも話している内容はともかく、目の前で話しているその人の本気度や熱量が高いと感じられると納得させられたり、伝わりやすいんじゃないかなと思うんです。
「アントレクエスト」もみんなが直接顔を合わせて、前のめりに向上心を持って取り組んでくれています。
我々はこういうワークショップを売っているというよりは、その空気感であったり、空間を売っている。そんなふうに、すごく思いますね。




成功するために大事なチャレンジ精神を、若者に育む



「アントレクエスト」を開始してからの歴史は、まだ浅い。
今は存在を広く浸透させる段階だが、すでに北海道大学などの教育機関、大阪府堺市、大阪市住之江区をはじめとする自治体などにサービスを提供してきた。

《若者が挑戦する文化を創る》 をミッションに掲げる社の若き代表取締役は、「アントレクエスト」、そしてArmory(アーマリー)が社会にもたらすべきことをこう考えている。
僕らは起業家育成をしていますが、成功するためにはマインドがもっとも重要だと思っています。機会はある程度は平等にありますが、そのなかでチャンスをつかめる人と、つかめない人がいます。それは自分のマインドやチャレンジ精神だったり、そういうところに依存すると思っているんです。「アントレクエスト」を通して、まずは挑戦する人が増えてほしい。
弊社は企業家を増やすよりも、チェンジメーカー(※3)と言ったりしますが、社会の課題だったり、しくみを変えていく若者を増やすことをテーマにしています。
僕らがそういうチェンジメーカーを増やすことで、より社会が良くなる。そんな存在になれればいいなと思ってます。社会課題などに当事者意識を持ち、もっと自分ごととして物事や社会を捉えていくような若者を増やす。
それがこの直近、5年くらいの弊社のテーマですね。
(※3)チェンジメーカー:社会課題にビジネスなどを通して介入し、課題解消に挑戦する人を指す。


挑戦なくして、成功はない。たとえ挑戦が実らなかったとしても、挑んだからこそ得られるものは必ずあり、それは次につながる。
かつてプロのサッカー選手を目指して本気で挑戦し、今ここに至った福永氏の在り方がそれを体現している。




株式会社Armory(アーマリー)
本社:大阪市北区梅田1-3-1 大阪駅前第1ビル8階5号
オフィシャルサイト:https://armory.jp/

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