たったの200円!行列ができる老舗ジューススタンド3代目の苦悩と新たな挑戦!
株式会社サカイ / 代表取締役社長 井戸辺 弘樹 氏
関西名物「元祖大阪梅田ミックスジュース」をご存知だろうか?
関西ではおなじみのミックスジュースをたったの200円で提供する人気ジューススタンドだ。
普段、阪神電車の大阪梅田駅改札を利用する方なら、一度は飲んだことがあるかもしれない。
子どもの頃から何度もリピートしているファンも多い。
この「元祖大阪梅田ミックスジュース」を提供するのは株式会社サカイ。
今年で73年目となる老舗企業だ。
1951年に創業し、ラムネなどの清涼飲料水の製造メーカーとして坂井飲料有限会社を設立した。
8年後の1959年4月に西日本初となる噴水型ジュース自動販売機でジュースを販売し、一躍規模を拡大し今の飲食事業につながる足がかりを作った。
現在の代表取締役は3代目となる井戸辺弘樹(いとべひろき)氏。
2代に渡る想いを受け継ぎつつも、時代に即した改革を進めている。

ヒット、ヒット、そしてあのミックスジュースの誕生
当時1杯10円で冷たいジュースを販売していました。自動販売機など無かった時代で、珍しかったのか飛ぶように売れました。
ただ、他社の追随により長くは続かなかったです。次に、自販機の営業で得た販路を活用して、鉄道の売店に牛乳を置いたところこれも大ヒット。当時のそれまでの売店は、平台にただ単に新聞等を並べただけの簡素な設備でした。
最初は「売れるわけがない」とメーカーから直接商品をもらえず、販売店から購入したものを並べて売れることを証明しました。
その後も「阪神そば」や「カレーショップミンガス」、たい焼き店「二万翁(にまんおう)」などを展開していきました。
どのお店も周りのお店より一段安い価格設定で売れに売れました。
しかし、最大で20店舗あったお店は競合環境や駅周辺の変化により、少しずつ縮小。
2代目となる井戸辺氏の父は、創業者との血縁関係はない。その苦悩も想像にたやすい。



父は大学時代に新聞販売店の新規開拓の営業でトップセールスだったことで、当時その新聞社の社員にサカイの創業者だった坂井氏の息子さんがいらっしゃった。その息子さんの紹介で父はスカウトされたんです。
よそ者が2代目社長になるわけですから、大変なところもあったようですが、元来のなにくそ根性で会社を引っ張ってきました。
「元祖大阪梅田ミックスジュース」の成り立ちは父がこの会社ですでに手掛けていた牛乳の配送で阪神電鉄さんとお付き合いがあったことで、大阪梅田駅改札口前の場所で「元祖大阪梅田ミックスジュース」を開店することができました。
今ではサカイの主軸商品となっています。
「元祖大阪梅田ミックスジュース(旧梅田ジュースコーナー)」は阪神百貨店、阪急百貨店からすぐ近くの阪神電鉄大阪梅田駅(駅改札口)にある。
ミルクと複数のフルーツで作った酸味のあるさっぱりとした味がクセになる味だ。
レモン、ブルーベリー、イチジクなど複数のドリンクメニューがあるが、ほとんどの客が定番のミックスジュースを購入する。
「梅田ジュースコーナー」を梅田に出店したのが11月、寒くなる季節だったので最初は苦戦しましたが、翌年の夏ごろから客数が増え、次第に梅田を代表する行列店へと成長しました。
お客様をお待たせしないよう、スピード提供を心掛けており、夏場は1杯を7秒程度で売ります。
長年使用しているカップのサイズは店舗の周りでさっと飲めるサイズ感が好評で、そのサイズにそろえた穴のあるごみ箱、こちらもぜひご利用ください。
子どもの頃に親に連れて行ってもらい、大きくなってまた訪れるという連鎖がある。それだけ熱心なファンが多いということだろう。
ファンの求める味を55年間守るために、仕入れ先を変更、追加するたびに、味見をしながら微妙にレシピを変更します。原料の味が変わるとジュースの味もまったく違うものになります。また同じメーカーの缶詰でも急に味が変わることがあるので定期的に味見をして調整しています。
梅田再開発の余波とハクション大魔王
そんな「元祖大阪梅田ミックスジュース」は常に販売好調だったが、3代目社長就任5年後の2015年2月に、阪神電鉄大阪梅田駅のリニューアルが発表され、店の去就を心配する記事が新聞やネットをさわがした。
店舗は存続することとなったが移転を余儀なくされた。
幅広い世代に認知させるため、2024年6月 タツノコプロの「ハクション大魔王」とコラボレーションし、オリジナルステッカーの配布、オリジナルカップでのドリンク提供をおこなっている。
最初の場所からほんの少し移動(乗降客の流れの反対側)しただけなのですが、客数は一気に減りました。ファンの多くが店の場所がわからず、閉店したと誤解する方が続出しました。お声がけなどして必死にお客様を引き戻しましたが、日常使いするには利便性が落ち、このままでは客数の減少が免れないと思うに至りました。
それまで広告をしたことがなかったのですが、今年販売促進としてハクション大魔王とコラボレーションしています。
企業とのコラボレーションでうちのミックスジュースを知らない方にも知ってもらい、世代を超えて楽しんでもらいたいという狙いがあります。
旅行者だけでなく近場の人も梅田に行く予定があれば、必ず最後にはミックスジュースを飲んで帰る観光地のルート的な場所にしたいと考えています。

ミックスジュースはいろんなフルーツが入っていて、牛乳のまろやかさと合っていて美味しいです。
しかし、喫茶店などで提供されるミックスジュースは氷が別に入っていてそこまで冷たくないんです。私たちの作るミックスジュースには氷を一緒に砕いて混ぜ込んでいるため、夏場にもスッキリと飲めます。ストローを使わず、キュっと直飲みしてほしいところです。
世界一のファンが仕掛ける観光としてのドリンクスタンド
井戸辺氏は自社ブランドの「一番の大ファン」だと言う。自慢のミックスジュースを語る笑顔が印象的だ。
自分の好きな店がなんとか生き残れるよう、一生懸命バタバタしています。先代はトップダウン型の経営でしたが、私には同じやり方はできません。自分は各店舗の大ファンゆえに視野が狭くなり突っ走ってしまうこともあります。そんな時は、社員や職人さんの意見を取り入れながら経営判断を行っています。
出店しようとして条件の悪さを指摘されて思いとどまったこともあります。スタッフには本当に感謝しています。自分は不器用なので、カッコイイことが言える社長さんが羨ましいですね。
井戸辺氏の口から「元祖大阪梅田ミックスジュース」に「思い入れがありすぎる」「筋金入りのファン」と屈託のない笑顔で語る。
日本で最も外国人観光客(インバウンド)が多いここオオサカで「元祖大阪梅田ミックスジュース」の飲むことを大阪観光の一つとしたいと真面目に語る。
この言葉からも、井戸辺社長が「元祖大阪梅田ミックスジュース」の日本一、いや世界一のファンなんだとわかる。
時代が変わっても、その味はいつまでも変わらない。
