自転車の反射板やライトなどの分野で世界をリードするサイクリスト社長
株式会社 キャットアイ / 代表取締役社長 津山晃一氏
自転車を構成するパーツと言えばフレーム・ハンドル・車輪・サドル・ペダルなどがすぐに浮かぶが、欠かせないのが
反射板(リフレクター)やライト。いずれも法令で設置が義務付けられている。その
リフレクターで国内の70%、世界の40%のシェアを誇るのが
キャットアイ(大阪市東住吉区)だ。
安全性と快適さを追求した製品づくりに力を入れているという代表取締役社長 津山晃一氏は「コロナ禍で自転車人気は高まっていますが、安全で健康に役立ち環境負荷も小さい自転車は、これからさらに見直されていくはずです」と話す。
精巧な技術が求められるリフレクターで、世界トップのシェアを誇る
自転車の後部に取り付けられ、後方から照らす車のヘッドライトを反射するリフレクター。単純に光っているだけのように見えるが、
厳しい規格を満たす精巧な技術が求められる。
リフレクターは、100メートル後方の自動車のヘッドライトを反射して、ドライバーの目の高さに返ってこなければなりません。そのためには、反射した光が指向性を持ち、減衰しないように設計する必要があります。それを実現するのがプリズムです。プリズムは光を屈折させて入ってきた方向に返す性質を持っており、リフレクターはプリズムの集合体になっています。一つ一つの素子はマッチ棒のようなピンを組み合わせて作るのですが、精度の高いピンを作ったり反射角を整えたりするには、高い技術が求められます。
先代から受け継がれた生産技術に先端技術を付加してオンリーワン商品を生み出す
技術の高さは、1946年に建築金物の製造販売会社を興した先代の時代から受け継がれてきたものだ。2年後には自転車業界に進出。50年代になると、アクリル樹脂が国産化されて、それまでガラス製だったリフレクターがプラスチック製に置き換わるようになり、同社もこの分野に進出。優れた金型加工技術を活用して先代が
国内で初めて作り出したプラスチック製リフレクターは、
警視庁の性能テストで1位を獲得して、その商標であった「キャットアイ」の名前は一気に広まった。
ちょうど日本の自転車市場が大きくなっていった時期で、60年代には対米輸出も始まりました。アメリカではバイコロジー運動が広がりを見せていた時期です。そのアメリカでも当社だけが厳しい規格にパスし、67年にリフレクターを米国に輸出するようになりました。アジアやヨーロッパにも輸出先は拡大していきましたが、各国の規格がバラバラな中で、当社のリフレクターは唯一、複数の規格をカバーできたことが強みでした。その後も最先端の光学成型技術や電子技術を駆使して商品化を進めています。
胃カメラ用の光源をライトに応用!?新しい情報に貪欲なうえ、それを生かす柔軟性が強み
業界初、世界初の製品はその後も
次々に生み出され、製品ジャンルも広がっていった。速度や走行距離などを計測する
サイクロコンピューターはサイクリストの必携品になっているが、太陽電池を装備したのは
キャットアイが最初、超小型ハロゲン電球を使ったバッテリーヘッドライトや白色LEDを使ったライトなどもそうだ。それらの多くが
グッドデザイン賞など数々の賞を得ていることが、評価の高さを裏付けている。
世界一規格が厳しいのはドイツです。明るすぎるとまぶしいと言われるので、返ってくる光を制限するなどの工夫をしたLEDライトでドイツの規格にも合格しました。新製品を次々に生み出せるのは、常に新しい情報に目を向け、それを取り込んできたからだと思います。マウンテンバイク用のライトを作ったときには、小さくて明るいライトは何かと考えて胃カメラ用の光源に目を付け、アメリカに行って交渉したら、相手にあきれられるということもありました。
安全で健康に役立ち、環境負荷の小さい自転車の強みを強調してさらなる成長を
ほかにも、リフレクター技術を応用した自動車用非常停止表示板やトレーニング用健康器具なども製品化したが、一部は撤退するなどして、現在はリフレクターとライト、サイクルコンピューターで販売額の8割以上を占める。そして1989年、「キャットアイ」ブランドが世界市場で信頼のマークとして定着したと判断して、社名を「キャットアイ」に変更。併せて、「
『安全』『健康』『環境』に新しい価値を創造し、
社会に貢献する」という新たな企業理念を制定した。
安全・健康・環境の視点は現代の産業においては欠かせず、その比重は今後ますます高まるでしょう。そうした時代のニーズに、自転車はまさに適合するものです。友達夫婦の話ですが、奥さんはオートバイで日本一周をしたほどのバイク乗り。ところが、夫に「バイクは早すぎて周りのものが見えない」と言われて一緒に自転車を楽しむようになったそうです。自転車のスピードだと、いろんな再発見があり自然も感じられます。何より安全です。最近は安全を追求する製品開発に力を入れています。暗くなると自動的に点滅するリフレクターや、加速度センサーを活用して減速するとストップライトが点灯する製品もその一つです。
自転車歴20年以上。自転車乗りだからこそ分かる課題を商品開発に生かす
津山氏自身、サイクリングを楽しむようになって20年以上。台湾一周や琵琶湖一周などを通じて得た
知見を商品開発に生かすことも多い。
新機能も自分で乗らないと分かりません。それに、危険性を分かった人がモノづくりすることが大事だと思っています。そこを広げていけば、ジョギングや犬の散歩でも役に立つ安全器具につながっていくでしょう。もちろん、自転車専用道などインフラも整備していく必要があります。さらに、安全教育・マナー教育も欠かせません。
自転車通勤を会社も後押し
当社では、自転車通勤者に対して
交通費に上乗せ支給するほか、
自転車購入資金の補助制度などがある。その後押しもあって、試作品のテストの人材には事欠かない。
日本の自転車人口は約7500万人とされ、最近はスポーツサイクリストが増えています。自転車活用推進法が2017年に施行され、国も自転車の普及活用に力を入れるようになりました。これからは自転車の時代です。当社も徐々に社員を増やしています。モノづくりが好きで自分で考えて動きたいという方、一緒に仕事をしませんか。
株式会社 キャットアイ
本社:〒546-0041 大阪市東住吉区桑津2丁目8番25号
オフィシャルサイト:https://www.cateye.com
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