《みんなわくわく、明日もわくわく。》 世代を超えて愛される場所に! 長居公園を未来につなぐリーダーの思い

オオサカジン運営事務局

2025年02月17日 10:00



わくわくパーククリエイト株式会社 / 代表取締役社長 神原清孝 氏



誰もが気軽に訪れることができ、運動や散策と、思い思いに憩える場である公園。大規模なものになると、地域の自然環境を保護する側面や有事の避難場所の機能も持っている。

大阪市東住吉区にある長居公園の指定管理事業を担うわくわくパーククリエイト株式会社では、広大な公園を未来につなぐためのさまざまな活動を行う。
今回は、ヤンマーホールディングス株式会社を経て社長に就任した神原(かんばら)清孝 氏に、パークマネジメント事業に関わることになった経緯や長居公園の魅力、目指している未来について話を聞いた。




培ったテクノロジーと多彩な事業展開で広大な公園を支える


長居公園は、大阪を代表する総合公園として市の都市景観資源に登録されている。
およそ66ヘクタール(=甲子園球場の約17個分)の広大な敷地に「ヤンマースタジアム長居」「ヤンマーフィールド長居」「ヨドコウ桜スタジアム」の3つのスタジアムと長居植物園を備えており、年間900万人もが訪れる。


大阪市から委託を受け長居公園の指定管理事業を行っているのが、わくわくパーククリエイト株式会社だ。
ヤンマーホールディングス株式会社が100%出資した子会社として2020年8月に設立された。
委託期間は2021年4月から2041年3月までの20年間と長期に及ぶ。
親会社であるヤンマーはディーゼルエンジンを核とした産業機械を開発・生産してきました。排ガスが環境に悪いというイメージがあるかもしれませんが、ヤンマーは2050年までに温室効果ガスをゼロにするという活動をしています。
長居公園においても、電力は再生可能エネルギーでまかない、食品廃棄物を堆肥化するなど、サステナビリティ(持続可能性)に取り組んでいます。


ヤンマーのテクノロジーで公園を支え、公園管理には公園やスポーツ施設の維持管理事業のほか、飲食店などの新たな施設を作って運営する魅力向上事業、園内にある植物園の自然を活かした夜の野外ミュージアム「チームラボ ボタニカルガーデン 大阪」の常設展示運営、スタジアムでのコンサート企画運営と、その事業は多岐にわたる。

  チームラボ《生命は連続する光 - ラクウショウ》©チームラボ


子供の頃からの公園との縁。コロナ禍で見えた豊かさへのヒント


代表の神原氏は1991年にヤンマーディーゼル株式会社に入社し、主に中核事業となるエンジン事業部での企画業務にあたっていた。会社が100周年を迎えた2012年になると、ヤンマーホールディングス本社へ異動。経営戦略部を経て、社長室長として社長秘書、そして世界中を飛び回る人事部長など様々な重要ポジションへとキャリアを進める。

ヤンマーが長居公園の20年間にも及ぶ指定管理事業を担うことになると、プロジェクトリーダーとして神原氏に白羽の矢が立った。
人事部長をしながら、セレッソ大阪スポーツクラブ理事としてスタジアムの管理に携わっていた 2018年のことだった。
山岡(※1)に「神原、あんた自宅は長居公園の近くやったね、長居のプロジェクトリーダーをやってよ!」と、言われまして。
大阪市内にある実家は公園の中にあったのです。幼い頃からの遊び場として、公園には非常に愛着を持っていました。


(※1)山岡
:ヤンマーホールディングス株式会社の現社長である山岡健人氏


公園に深い縁のある神原氏だが、ヤンマーの人事部長の立場から公園の事業リーダーへとキャリアの転換を決断したのは、それだけが理由ではない。
当時はさまざまなプロジェクトの掛け持ちと人事部長の仕事で海外出張が多く、お酒も好きでよく飲んでいました。そんな生活が災いし、2か月入院するほど体調を崩してしまったのです。健康のありがたさが身に染みました。この身体では今までのような働き方は難しいと考え、仕事に復帰した際 公園事業に集中することに決めました。


長居公園のリニューアルに向けて動き出した矢先、時代はコロナ禍に突入。ヤンマーホールディングスも時勢の波に飲まれ、多くのプロジェクトが打ち切られたが、公園事業は継続することとなる。
ヤンマーのミッションには、“自然と共生”や“未来につながる社会とより豊かなくらし”というワードが入っています。目指すのは、新しい豊かさのある暮らし。まさしく長居公園のプロジェクトは、ヤンマーの理念ともつながっているのです。
リモートワークが推奨され、街から人が消えても、ソーシャルディスタンスを保てる広大な長居公園には多くの人が訪れていたという。その光景を見た神原氏は、「日本人の生活スタイルはいずれ変わっていくのではないか」と確信した。
海外出張が多かった頃、海外の公園も見に行きました。一日中本を読んだり寝転がったりして、のんびり過ごしている人が結構いたのです。ああいう景色が日本でも見られるようになるんちゃうか、と可能性を感じながら、長居公園リニューアルの構想を練りました。

2021年4月に指定管理を担う期間が始まると、構想をもとに工事は急ピッチで進められました。しかし時代はコロナ禍。当然、機器納入業者の工場も稼働が止まり、物流も滞った。当時の苦労は想像に難くないが、なんとか2022年7月29日、長居公園の大規模リニューアルオープンにこぎつけた。

たくさんの人に愛され、成長し続ける長居公園


神原氏が指揮をとり、新しくなった長居公園。以前は近隣の住民の姿が多かったというが、今は幅広い年代の人々が遠方からも訪れるようになった。

集客の成功の一翼を担ったのは、デジタルテクノロジーによるアートが人気のチームラボ(※2)とともに、新たなアート空間を生み出したことだ。園内の植物園が閉園した夜の時間帯の空間を活かし、デジタルテクノロジーによるアートと自然が融合した作品を楽しむことができる「チームラボ ボタニカルガーデン 大阪」はインバウンド需要も拡大する中で注目を集めている。

(※2)チームラボ:2001年から活動を開始するアートコレクティブ(集団)。集団的創造によって、アート、サイエンス、テクノロジーそして自然界の交差点を模索している国際的な学際的集団。アーティスト、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、数学者、建築家など様々な分野のスペシャリストから構成されている。

チームラボ 《風の中の散逸する鳥の彫刻群》 ©チームラボ

また、カフェやパティスリー(洋菓子店)などの飲食店、新鮮な野菜や地域の食材が揃う産直などの建物が園内に新設され、長い時間滞在できるスポットが増えたのだ。

長居公園は、街のさまざまな課題を解決する役割も担っている。その代表的な例として、「タイガーラック スケートボードパーク長居」の新設が挙げられる。
スケートボードは2020年の東京大会でオリンピック競技となり、競技人口も増えた反面、長居公園内でも危険走行や騒音が多発。公園利用者や近隣住民からの苦情が絶えなかった。そこで会員制のスケートボードパークを作り、園内でのルールを定めたことによって、苦情は無くなった。スケーターたちからも、安心して練習ができると好評だ。


また、緑が少ないと言われる大阪の都市部ならではの「みどりの再興プロジェクト」の実施も見逃せない。
園内6,080本の全ての高木の位置と成育状況をデータ化し、それをベースにエリアごとにテーマを設けた植栽改修を進めており、第一弾として、大阪市の花でもあるサクラの木を植えて公園のエントランスを彩る活動を「わくわくサクラチャレンジ」としてクラウドファンディングで行った。

園地が整備されてから80年が経ち、実は傷んでいる樹木も多いのです。未来の子ども達に緑いっぱいの長居公園を守っていくために、樹木医や長居公園のサポーターたちと協力して木々の育成に取り組んでいきます。



大阪の人々の健康を守り、今日感じた“わくわく”を明日につないでいけるように


長居公園の運営には、4つキーワードがある。
私たちのコンセプトの4つの軸は<食・スポーツ・アート・学び>です。特に、大阪府民は健康寿命が全国最下位レベルと言われていますから、たくさんの人にスポーツに親しんでもらいたいですね。長居公園ではプロの試合を観戦できますし、いろいろなスポーツ施設が揃っています。スタジアムを活用した子どもたち向けのスポーツ体験会や、芝生の上で裸足で盆踊りをするイベントも行っています。



他にも、今後は音楽イベントなどに活用できるステージの建設や、災害に備えた園地環境の補強、アーティストや地域の子供たちと協力したミューラルアート(壁画制作)の実施など、神原氏の頭の中にはすべきこと、したいことは尽きない。

社名の「わくわく」には、公園での楽しい原体験を持つ神原氏の強い想いが込められ、自ら社名を作った。
これからも、世代を超えて愛される場所にしていきたいと思っています。特にファミリー層にここで楽しい思い出を作ってもらい、子供たちが大人になったときに自分の子供を連れてまたここに来てもらいたいのです。長居公園の楽しい雰囲気が街の中へにじみ出ていって、街全体に広がる。
ーーそんな“わくわく”が膨らむ公園作りを続けていきます。






わくわくパーククリエイト株式会社
本社:大阪市北区茶屋町1-32 YANMAR FLYING-Y BUILDING
事務所:大阪市東住吉区長居公園1-1(ヤンマースタジアム長居内)
ウェブサイト:https://www.yanmar.com/jp/about/company/wpc/
長居公園ウェブサイト:https://nagaipark.com/



関連記事