人生を変える住まいを創る 一流インテリアデザイナーの仕事術
NOBUKO FURUICHI INTERIORS株式会社 / 代表取締役 古市伸子 氏
「いえいえ、私の家にインテリアデザインだなんて」という方がいらっしゃいますが、それって「私は自分のことを大事にしていません」って公言しているのと同じことなんですよね。「インテリアはあなた自身の表現」ということを、多くの方に知ってほしいんです。そこに気づくだけで、人生を劇的に変えられることがあるから、、、
そう言って笑顔を見せるのは、インテリアデザイナーでありNOBUKO FURUICHI INTERIORS株式会社(大阪市西区)の代表取締役である古市伸子氏だ。
古市氏は起業して以来、個人宅・商業施設・領事館など1,000件以上の案件を手掛けてきた。潜在欲求まで引き出す高度な分析力で創る独自のデザインに定評があり、英国インテリアデザイン協会の正会員として国際的にも認められている。現在はクライアントへの提案だけでなく、インテリア文化の普及活動や次世代育成に力を注いでいるという。具体的にはどのようなことを行っているのだろうか。事業変遷や今後の展望とともに伺いました。
クライアントの「こうなりたい」をカタチにする
インテリアデザイナーは、建築物の内装を総合的にプロデュースすることを仕事とします。企画・立案の段階から関わり、建築学・色彩学・心理学・人間工学などの理論に裏打ちされた実践的技術と美的感性で、クライアントの想いに沿った室内空間を創り出す。デザイナーごとに個性や能力が違うため、仕事の進め方にセオリーはあるが規定はない。古市氏の場合、どんな手順で仕事を進めているのだろうか。
まずはクライアントと初回相談を行います。最初に話し合うのは、「あなたはこれからどんな空間で暮らしていきたいか」ということです。クライアントの価値観・人生観・思考・習慣・理想・趣味・家族構成・行動動線など、暮らしに関わるさまざまな情報を集め、「パーソナルプランニングシート」という独自のシートで客観的に分析をしていきます。その結果が出たら「あなたはこんな暮らしや住まいを望んでいるのではないですか?」と提案します。この手法は深層心理も見える化することができるので、ご自身が「本当はこうしたかった、こんな家に住みたかったんだ」と気づかれることが多々あるんですよ。
次にコンセプトやテイストの方向づけをし、具体的なレイアウトやディテールを決定し、施工業者の選定や見積の算出をした後に実際の工事に入り、施工状況を監修しながら室内を完成させます。インテリアデザイナーは、クライアントが思い描く理想の暮らしをカタチにするプロフェッショナルであり、そのカタチを評価いただくことで私たちは仕事を成り立たせています。
自由を求めてインテリアデザイナーへ
古市氏がインテリアデザイナーを志すようになったのは、20代で結婚した後のことだった。
インテリアデザイナーを選んだきっかけは何だったのだろうか。
実は「インテリアデザイナーになりたかった」というより、「自由人になりたかった」ということが起業のきっかけなんです(笑)。
幼い頃、私は親に干渉されることの多い家庭で育ちました。愛情からだと理解していましたが、それはとても窮屈でした。大人になったら自由に生きたい、自分の意志で行動できる人になりたい。そんな想いから自然と起業を考えるようになっていったんです。
実際に起業に向けて動き出したのは結婚後、何を事業にするべきかと日々考え続ける中で、直感的に「これかもしれない」と思えたのがインテリアでした。結婚を機に家に対する意識が高まったことや、親がインテリア総合商社の経営者だったことなどが影響しているでしょう。意志というより、感覚でインテリア業界に進むことを決めたのです。
まずはインテリアの基礎的な知識を学ぶため学校へ通いました。その後外資系のインテリア企業に勤め、業界最前線のノウハウを学びました。1年後に独立しようと考えていたので、時間を忘れて仕事に打ち込む毎日でした。そして目標通り、1990年に自身の会社としてインテリア設計施工会社を設立させたのです。
開業した後、10代の頃から部屋の壁紙を自分で貼り替えたり、窓のスケッチを施工業者に渡して「こういう形にしてほしい」と依頼していたことなどをふと思い出したという古市氏。この業界に従事することは、もしかすると必然だったのかもしれないと振り返る。
新しい気づきのたびにチャレンジを繰り返す日々
インテリア業界に足を踏み入れた古市氏は、知れば知るほど奥深い世界があることに気づいていった。
インテリアとは単に室内装飾のことを指すだけでなく、住み手の生き方・考え・生活スタイル・志向性などを総合的に表現した唯一無二の形のことを指します。だからこそ、誰一人として同じインテリアの形はあり得ないのです。私は仕事を重ねるごとに、そんなインテリアの世界に魅せられていきました。それと同時に、人の暮らしを豊かにできる本当のインテリアという文化を、日本にもっと広めたいと強く思うようになりました。
インテリアの文化は西洋を中心に発展してきたため、当時の日本であまり認知されていなかった。しかし時代は高度経済成長を背景に急速に西洋化しており、インテリアパーツとなる家具・カーテン・照明・カーペットといったモノが先行して室内に置かれるようになります。正しいインテリアへの理解がないまま表面的なカタチだけが取り入れられたため、意図なく置かれたモノで溢れ返る家が散見されるようになりました。古市氏はこの状況を変えなければと動き出します。
美しい空間はモノが整理できていることが大前提です。そこで私はインテリアの文化を普及させる前に、整理収納技術を広めるための活動を始めることにしたんです。個人宅に訪問して実際に整理収納を行ってみせたり、テレビに出演して整理整頓をレクチャーしてみたり、結果的に事業としての成功は得たのですが、本来自分が目指していたインテリア文化の普及にはつながりませんでした。皆さん家がキレイになることで満足し、その次のステップに進もうとはしなかったのです。私は「これは自分が進むべき方向ではではない」と判断し、この事業を信頼できる他社へ譲渡することにしました。周りからは「あなたはいろんなことをするのね」と言われることもあるのですが、私の信念はやっぱり「本当のインテリアの素晴らしさを広めること」なんですよね。
歴史と伝統を読み解き、インテリアの本質を知った転機
2009年、古市氏は日本人初の英国インテリアデザイン協会(BIID)の正会員となった。これを機に、今まで兼任していた施工部門から一切、手を引き新しく自身の名前を掲げたインテリアデザイン事務所を設立することとなります。BIIDへの入会は、古市氏にどんな心境の変化をもたらしたのだろうか。
BIIDへの入会を申し込んだ後で「正直これは無理!」と思うほど厳しい審査があることを知りました (笑)。審査までに膨大な資料を翻訳し、それをもとに自身でまとめた書類を提出しなければなりませんでした。ただそれはとても大変でしたが、私にとって非常に大きな意義がありました。それはこの体験こそが2000年の伝統を持つインテリアの歴史を読み解き、その本質と向き合う機会となったからです。技術者・デザイナー・建築士の職能職域を区別し、三位一体となってインテリアデザインを提案することの大切さに気づいたのもその時です。それまで私は施工部門とデザイン部門を兼任していたのですが、これを機に施工部門から一切、手を引きます。そして「NOBUKO FURUICHI INTERIORS」としてインテリアデザイン専門の事務所を改めて設立したのです。
※英国インテリアデザイン協会(BIID):イギリスにおいて最も権威のあるインテリア関連団体。建築とデザインの双方の知見を求められる厳しい入会審査を通過したデザイナーによって構成される。実績によってグレードが上がるピラミッド型昇格システムを採用しており、最上位約350名の会員が正会員として認められている。
事業をシンプルにしたことで、インテリアデザイナーとして何を追求していくべきかが古市氏の中でより明確になっていきます。暮らしの心地よさとは何か。真の安らぎとは何か。人間の魂の喜びとは何か。インテリアの神髄に近づこうとするほどに、古市氏の問いはより深遠で普遍的なものになっていった。
もっと気軽に楽しめるインテリアデザインを日本に
2011年、古市氏はインテリアの普及活動のひとつとして、大阪市内にインテリアカフェ「Livmore(リブモア)」を開業させた。
「Livmore(リブモア)」は、カフェ感覚で気軽に立ち寄り、インテリアについて楽しみながら話せる場所を提供したいという想いから作りました。コーヒー片手に、一息つくためだけの場所としても利用できるようにしています。この試みは、グランフロント内にあるパナソニック大阪センターとのコラボ施設「Livmore(リブモア)サテライトオフィス」として発展させることもできました。昨年からは、オンラインコミュニティ「リブモア村」もスタートさせています。リブモア村にはバーチャルハウスがあって、「私ならこの家に住みたい!」「私はこっち」なんて言いながらみんなでインテリア空間を楽しんでいます。またこれからはインテリアだけでなく、暮らしを豊かにするさまざまなコンテンツも取り上げていく予定をしています。Livmore:Livmore = Live×more
Livmore(リブモア)は「暮らす」をもっと 「生きる」をもっとインテリアデザインを通して、インテリアを敷居の高いものではなくもっと楽しくもっと面白いものにしたいという思いから名付けた造語です。
想いをつなぐための担い手を育てる
そんな古市氏にとって、自身の想いを引き継ぐ次世代のインテリアデザイナー育成はとても重要なミッションになっている。
「Livmore(リブモア)」の設立とともに、インテリア分野を生涯の職業にしていこうという人のための養成講座を開講させました。これからは職能職域を明確に持ったインテリアデザイナーを育てたいので、独立志向の人を中心に受け入れています。覚えることが膨大なんで、デザインや建築の学校を卒業した人か、インテリア業界での実務経験が3年以上ある人というのを受講要件にしています。この講座では、私の経験・知識・想いといったもの全てを伝えています。だから本気でない人は受け付けません(笑)。クライアントの案件も大切ですが、これからはこうして私が培ってきたものをしっかりと広めていくことに力を入れていきたいですね。
インテリアの素晴らしさを日本に広めるためなら、どんなことでもしていきたいと古市氏は熱を込めて話す。自然農法を取り入れたサステナブルな室内デザインや、空きビル問題を解決するための空間活用法などアイデアは尽きないという。
サステナブル:「人間・社会・地球環境の持続可能な発展」を意味します。
「NOBUKO FURUICHI」というブランドに欠かせないもの
古市氏は「NOBUKO FURUICHI INTERIORS」というブランドに欠かせないものについてこう語ります。
大切なのは相手のことを1番に想う気持ち。これがなくなったら私のブランドではないですね。住み手の幸せを実現するための住まい創りが、インテリアデザイナーとしての私の仕事だからです。
「あなたはこれからどんな空間で暮らしていきたいですか」という問いから始まる古市氏のインテリアデザイン。そこには、住み手の幸せを大切に想う深い愛が込められています。
NOBUKO FURUICHI INTERIORS株式会社
本社:〒550-0003大阪市西区京町堀1-8-31 安田ビル1F
オフィシャルサイト:https://www.nobukofuruichi.com/
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