顧客の思いを、映像制作の新たなしくみ構築へ

株式会社思創堂 代表取締役 出口大祐 氏

大阪市天王寺区にある株式会社思創堂は、自社の理念をそのまま社名に掲げる。
社の代表は出口(でぐち)大祐氏
映像系の専門学校を中退してフリーランスの映像制作者として独立し、2008年に個人事業で思創堂を設立。
8年後の2016年に法人化した。

顧客の思いを、映像制作の新たなしくみ構築へ

独立した当初は映像制作だけではなく、テレビ番組のADをはじめ、いろんなことを経験しました。
だけどこれ迄に、どこかの会社に所属したことはありません。
フリーでいろいろとやっているうちに業務が拡大して、法人化したというような流れですね。


現在の社のNo.2である津川 亮氏との両輪で思創堂は走っている。
出口氏が動画制作を、津川氏がウェブ制作を担う。
そんな自社の強みを、出口氏はこう語る。

僕は動画制作と並行して過去、飲食業に写真館、スポーツジムなど、いろんなビジネスをやってきました。
なにかやりたいなと思ったら、すぐにやっちゃうんです(笑)。
ゼロからことを興す、スタートアップ(※1)が好きなんですよね。
他に個人的に工事現場や運送業界で働いたこともあります。
いろんなことを経験してきたので、その経験を元にクライアントへ、現場に則した具体的な提案ができるのは強みのひとつです。
あと弊社はウェブマーケティングもやっていて、それに関するアドバイスを無料で提供しています。
そのへんも普通の制作会社と比べると、ちょっと違う点かな。
(※1)スタートアップ:「スタートアップ」とは、革新的なビジネスモデルによって社会に変革(イノベーション)をもたらす企業のこと。

「子どもが学べる・家族が一緒に楽しめる・体験型の商品が集まるネットショッピング」をコンセプトにしたECサイト「オヤサポストア」も出口氏の発想によるものだ。
お客さまに満足のいく商品を提供や良質な商品の情報を正確に届けている。
このためオヤサポストアのメインコンテンツはライブコマースを使っている。
ここにも思創堂の映像技術が活かされている。

顧客の思いを、映像制作の新たなしくみ構築へ


封建的制作現場。その因習からの自分改革


ひと昔前まで映像制作の現場は、年長者が年少者に手厳しく当たるなど、上下関係を重んじる封建的な面があったことは否めない。
そんな現場に身を置いてきた出口氏も、思創堂を設立した当初はそういった体質を引きずっていたのだという。

最初は僕ひとりでやっていましたが、アルバイトなどを雇うようになると手を上げたことはありませんが、高圧的な態度はありましたね。当時はそれが当たり前だと思っていましたが、今振り返るとすごくパワハラな人間でした。
そうこうするうちに法人化する前後くらいに、関わっていた人が全員抜けた(辞めた)んです。
それは僕のハラスメントにも原因があったと思います。
そこで自分自身に対して、『ちょっと考えなアカン……』と思ったんです。
それからは、自分を変えていきましたね。


この取材で対面している出口氏は笑顔を絶やさず、こちらの質問に答える際の物腰も柔らかい。
過去に高圧的な一面があったとは思えない。現在の姿にたどり着くのに出口氏自身の心がけと努力があったのは想像に難くない。
そうして自身の内面を見つめ直したことで、映像作りの仕事にも徐々に変化が表れてきた。

感情的にならず、冷静になって物事を考えるようになったので、お客さんに寄り添って制作物を作れるようになりましたね。
そういう仕事のやり方を続けているうちに、制作依頼も増えてきたんです。
以前はお客さんに対しても気付かないうちに、自分の意見や考え方を押し付けてしまっていたところもあったと思います。
とはいえ、今でも先方からあまりにも理不尽なことを言われると、言い返してしまうことはあります(苦笑)。
でも感情的になってではなく、現場で映像を作っているクリエイターを守る意識からなんです。

顧客の思いを、映像制作の新たなしくみ構築へ


現在も業績は順調であるという。
ならば普通は業務の拡大などを図り増収、増益を目指すものだが、その考えはない。

単純に映像制作業ってもう頭打ちのような気がしていて、これからは儲からないだろうなと思っているんです。
時代とともに、機材はどんどん進化しています。昔はカメラを肩に担いで撮っていましたが、今は一眼レフでも撮れるし、GoPro(※2)のようなアクションカメラも出てきました。そういう新しい道具を使って、新しい世代が映像を作る。
かつて僕らが上の世代から仕事を奪ったように、次は僕らが下の世代に仕事を奪われる時代になっているんじゃないかなと。

(※2)GoPro:アクションカメラのこと。 水や雪、動きの激しいシーンなど、スマートフォンのカメラでは撮影できない映像を撮影するのに適している。

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次の時代に向けた、制作スタイルの転換



後ろ向きな発言に思えるかもしれないが、決してそうではない。
出口氏の頭のなかには、次の時代に向けた構想がある。

今後はフリーのクリエイターを集めて、彼らとクライアントを結びつけるプロデュース業に転換していこうかなと思っています。
テレビ局の人が結婚式を撮るのは難しいと思いますし、結婚式専門のカメラマンが映画を撮るのは無理です。
でも一般の人って、そういったカメラマンの専門性はわからないと思うんです。
そこを上手くマッチングしてあげようと。
若いクリエイターは機材にかけるお金がなかったりするので、ウチの会社で機材を揃えてレンタルしたり、サブスクリプション(※3)する。
またカメラマンがデザインを勉強したり、逆にデザイナーがカメラを学んだりと、そういったことをオンラインで授業してあげて、フリーのクリエイターたちが教育を受けられる機会も設けて、相談も24時間受け付けるというようなことを考えています。

(※3)サブスクリプション:サブスクリプションとは「定期購読、継続購入」を意味し、商品やサービスを所有・購入するのではなく、一定期間利用できる権利に対して料金を支払うビジネスモデルをいう。

現場で映像を撮り続けてきた者だからこそ、時代の変化を肌で感じ取っている。

ある現場では、若いカメラマンがカメラを逆さまにして撮ってたんです。
敢えてそうやって撮って、編集の段階で正す。そうすると、すごくいいローアングル(※4)の映像になったんです。僕は肩にカメラを担いでいた時代の人間なので、自分のなかにそんな発想はなかった。
今後、僕自身は制作業から少しずつ離れていって、クリエイティブは若い子が担ってもらう。
ウェブ上で全国の若いクリエーターとつながり、様々な企業の制作ニーズとを結びつけていく。
それが、いいかなと思うんです。
(※4)ローアングル:低い視点から仰角気味に撮影するカメラの撮影技法。

現在、若いクリエーターと企業のマッチングビジネスは構想段階で、ローンチ(提供開始)は年内から来年初頭くらいを想定している。
これは思創堂の第2形態ではなく、思創堂の業態と看板は残したまま、別法人化を考えている。

出口氏が仕掛ける、次世代の動画制作のしくみと構造改革

そこから、どんな映像が生まれるのだろうか―。


顧客の思いを、映像制作の新たなしくみ構築へ

株式会社思創堂
本社:大阪市天王寺区清水谷町1丁目9号1F
オフィシャルサイト:https://www.shisodo.com/
オヤサポストア https://store.oyasapo.jp/
プレコミ https://www.precomi.com/ 
A-studio Cliff https://a-studio-cliff.com/
ToruToru https://www.shisodo-event.com/ 



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