短期間で急成長を遂げる焼き肉チェーンの仕掛け人
株式会社MRホールディングス / 代表取締役 善元 正樹(よしもと まさき) 氏
焼き肉といえば、かつてはハレの日(※1)の食事だった。しかし近年は低価格で提供する店が増え、今やケの日(※1)、つまりは日常食になった。そんな中「焼き肉ホルモンまるよし精肉店」(以下、「まるよし」)は、2020年に第1号店をオープン。それから約3年半で、大阪市内を中心に10店舗(焼き肉店以外の業態も含めると12店舗)を構えるまでになった。創業者は善元正樹氏。以前から寿司・和食・居酒屋等の飲食店経営に役員として携わり、焼き肉業態に着目して独立開業した。
※1 古来より、日本人は、お祭りや儀式、年中行事などを行う日を「ハレ」の日、普段どおりの日常を「ケ」の日とよび、日常と非日常を使い分けて生活バランスをとる術を持っていました。 ちなみに「ハレ」は漢字で「晴れ」、「ケ」は「褻」と表します。
独立は以前から考えていまして、そのころから焼き肉業態に注目していました。2020年にコロナ禍が起こって物件が空いてきたものですから、そこでなにかできるのではと思って創業しました。私は今も別で役員を務めている会社があるのですが、そこは大箱の宴会場を持っている業態等もあり、コロナの影響を受けて売り上げが下がっていました。なにか新業態を作らないといけないことも相まって、私が役員を務めている会社でも1店舗作りつつ、私自身、個人事業での創業としてお店を作ったのが始まりです
焼肉に注目したのは、この業態ならではの利点。
お寿司であったり和食であったり、私が今までやってきた仕事は調理職人さんがいないと成立しない業態で、魚をさばいたりなど、仕込みから大変なんです。そしてお店が開店すると、オーダーを受けてから商品を作ります。そういったオペレーション面で、重いところがありました。焼き肉に興味があったのは、最終の調理をお客様にやっていただけるところ。これは非常に、強みではないかと思っていました
とはいえ焼き肉業態は同業他社・他店が乱立する、いわばレッドオーシャン。他社・他店との差別化や、運営の効率化を図らねばらねば、競争が激しいこの業態で生き残ることは難しい。参入にあたって善元氏は、まず商品の低価格化と運営の省力化を軸とした。
焼肉店の客単価は、最低でも4,000円以上はするかなと思うんです。焼肉を食べて飲んでとなると、食べ放題の店に行くと高いコースを頼めば5,000円を越えてくる。そんな中「まるよし」は、客単価3,000円で食べて飲める業態を作ろうというのが元々のスタートでした。このマーケットニーズは、かなりあるんじゃないかなと思っていたんです。最終調理をお客様にやっていただけるうえに、当時はコロナ禍だったこともあるのですが、モバイルオーダーを導入して少ない人数でお店を回せるようにオペレーションを軽くしました
安くて美味い。お客様の満足度にこだわる
一方で安かろう悪かろうでは、食に厳しい大阪人は店に足を運ばない。いくら低価格で提供するとはいえ、「まるよし」は料理の品質にこだわる。
出来るだけお安く提供させていただく。それはもちろん、価値だと思います。ですがどうしてもお肉の原価がありますから、安価なものばかり追求していくと美味しくないよねとなります。私たちのスタンスは、美味しいものを他社さんよりもお値打ちでご提供させていただくこと。そのために、お肉の選定をしっかりします。ただ当初はたとえば399円といった、まず安価にこだわったものを優先に仕入れ、売っていました。ですが『安いけど、肉はもうひとつやった』などといったお客様の声もございました
そういったお客様からの意見を聞き入れ、安価にこだわった商品設定を廃し、今では独自ルートで仕入れた、高品質の国産牛を提供している。
私どもは『美味しい、楽しい、幸せな時間を提供します』という経営理念を掲げております。ですのである程度のお値段いただくところもありますが、その代わりに、ちゃんと美味しいものを提供し、お客様に満足してもらう、というスタンスでいます
「まるよし」 の各店舗では、卓上に飲み放題のレモンサワーのサーバーを設置。特徴を打ち出すと同時に、これも省力化に寄与している。また店舗が比較的、近隣のエリアに集中していることも特徴。これも、効率化を意識してのことだ。
人材面もそうですし、物流面もそう。最初からドミナントエリア(※2)で展開していこうと考えていました。現在うちの店舗網はライセンス店舗の古川橋店は少し離れていますが、それ以外は直径5km圏内にすべてが入ります。各店舗間の距離が近いことで社員さんやアルバイトの方が他店舗への応援に行きやすいですし、物流も効率化が図れる。今後はもちろん、5kmの円を広げていく考えもあります。その一方で、この5km圏内にもまだまだ商圏はあると思っています
※2 ドミナントエリアとは、特定の地域において自社が最も高いシェア率でチェーン展開し、店舗経営を行なっている地域を指します。 なお、ドミナント(dominant)は、「支配的」という意味を持つ言葉です。 ドミナントエリア戦略は、限りのある資源で効率的にシェアを獲得し、競争相手より圧倒的に有利な立場を独占するという考え方。
コロナ禍に創業。苦労と社会の混乱期ゆえのメリット
今でこそ多店舗経営が実現しているが、創業当時は個人事業として展開。コロナ禍の真っただ中ということも相まって、苦労は少なくなかったという。
私は今もいろんな会社で役員をやっていますが、正直個人となると融資はなかなか難しい。なんとか公庫さんや信用金庫さんの融資を受けることができましたが、資金面は正直いろいろと苦労をしました。会社で申し込むとリースは組めて当たり前だと思っていましたが、コロナ禍ということもあったかもしれませんが、それも一切使えず、すべてをキャッシュで賄わないといけなかった。そういったところで、最初は非常に苦しいことがありましたね
しかし、コロナ禍だったがゆえのメリットもあったという。
そうですね。特徴的なのは都島店。大阪メトロの都島駅を出てすぐの便利な場所にあるビルを、1棟丸ごと貸りています。そこは以前、有名な居酒屋チェーンが20年近くにわたって店舗を構えていましたが、コロナ禍で閉店されました。当時千林大宮店に行く際に前をよく通っていて、かねてから『いい物件だな。でも賃料は高くて手が出ないな』と思っていたんです
そのうちに千林大宮店が思いのほか売り上げが伸び、同時に資金調達の手段も整ってきていた。そこでビルの賃貸を申し出ると、受け入れられたという。
平時だったら有名チェーンが駅前でやっていた物件を、まだ1店舗しかやっていない私個人が借りることはできないと思います。ですがコロナ禍ということで、その物件は1年近く空いてたんですよ。そういった時機もあって貸していただくことができ、大きなチャンスをつかめました
利益を地域に還元。店舗の運営は、超地域密着
その後も新店舗を続々とオープンさせるのと並行し、2022年に株式会社MRホールディングスとして設立。創業当初から掲げていた2年で法人化・3年で10店舗の目標を達成した。そんな「まるよし」の各店は、いわゆる単なるロードサイド型の店舗ではない。地域と密接な距離感にあるがゆえ、地元と友好な関係を築くことを特に大切にしている。そのことは善元氏も充分に認識し、行動にもあらわれている。
各店舗の運営は、超地域密着でやらせていただいております。今の僕たちはまだまだ中小零細で、そんなに大きな力はありません。それでも地域でお祭りがあった際には、協賛させていただいたりしています。あとこれは私どものことをご認知いただく狙いありますが、都島区民センターがネーミングライツ(※3)を募集されてましたので、手を上げて『まるよし精肉店 都島区民センター』とさせていただきました
※3 ネーミングライツとは命名権のことで、人間や事物・施設・キャラクターなどに対して命名することができる権利である。1990年代後半以降、スポーツ・文化施設等の名称に企業名を付けることがビジネスとして確立した。
事業であるからには当然、収益をあげることが大前提。そしてそこから地域への還元をと考えている。
しっかりと収益を上げて、もちろん、税金を納めさせていただいたいたり、地域に寄付させていただいたりといったことをやっていきたいですし、まだ全然できていませんが、地域に還元して、地元に喜んでもらえるお店を作っていきたいと考えています
当面の目標は、年商10億円。その先は……
当面の目標は、年商10億円を達成すること。そのためには、さらに店舗数を増やさなければいけないと自覚しています。10億円の売り上げを作るには、一店舗あたりの売り上げが2~3億円なら3店舗ほどで実現するかもしれません。ですが僕たちのように20坪ちょっとでやっているお店だと、1店舗あたりの年商は5,000~6,000万円くらいが平均になってきます。それを10億円までということは、ある程度の店舗数が必要なんですね。イメージでは、16~18店舗くらい。そうなるとしっかりとした組織化が必要ですし、そうならないとできません。そこに挑戦して、実現していく過程で、私自身も成長できると思っていますし、仲間の成長にも繋がると思っています。また頑張って頂いている仲間の待遇をよりよくしていくことができると思っています
組織化していけば当然、ポストも増える。いっしょに働いていた仲間のポストが上がれば、「自分も」と従業員のモチベーションUPにつながるだろうし、それが連鎖すれば組織としての厚みも増す。
それが従業員の成長を促すことにもなっていくでしょうし、待遇をあげていく事もできます。より組織としての強みがより出てくると思うんですよね。今は年商10億円を目指し、まずはそこ到達することを目標に置いて展開します
その先の目標もぼんやりと頭のなかにあると言うが、口にはしない。
あまり先のことを言うのは好きじゃないというか、性に合っていない気がするんです。3年くらいの短中期で頑張ったら手が届くくらいのことを達成して、初めて次だと思っているので。今は大体8割近くくらいまで来ましたから、もう少しすれば次の3年の目標というのをまた作っていきます。ひとつひとつ手の届くところをしっかり固めて、目標を達成する。そして次のステップに進むことが大事なんじゃないかなと思っています
善元氏に率いられて短期間で急成長をとげた「まるよし」が、今後どのように発展の道を辿っていくのか注目してゆきたい。
株式会社MRホールディングス
本社:大阪市都島区都島北通1丁目1番20号
オフィシャルサイト:https://maruyoshi-saiyo.com/
「半額倉庫」だけでない、満額夢中の若きアイデアマン!
人を育て高い技術力で成長するダイバーシティー企業
人にも環境にも優しい製品をつくるプラセンタのパイオニア
ラムネの認知度を上げた名物社長。 次なる目標は“世界のハタ鉱泉”!?
人を育て高い技術力で成長するダイバーシティー企業
人にも環境にも優しい製品をつくるプラセンタのパイオニア
ラムネの認知度を上げた名物社長。 次なる目標は“世界のハタ鉱泉”!?