ラムネの認知度を上げた名物社長。 次なる目標は“世界のハタ鉱泉”!?
ハタ鉱泉株式会社 / 代表取締役社長 秦 啓員氏
子どもの頃に誰もがきっと飲んだことがあるはずのラムネ。瓶の中で動き回るガラス玉を見ては、「どうやって中に入れたんだろう」と不思議に思っていたものでした。そのラムネの生産量で日本一を誇るのが、大阪・都島に本社をおく『ハタ鉱泉』です。お話を伺ったのは、大阪企業の名物社長としてテレビでもしばしばお見かけする秦 啓員氏。同社の歩みと商品開発への想いやコロナ禍における販売戦略など、時折ユーモアも交えながら語っていただきました。

たこ焼き・キムチ・コーンポタージュ。
面白ラムネで認知度アップ
「ハタ鉱泉」と言えば、面白ラムネ。たこ焼風味・キムチ風味・コーンポタージュ風味・焼きそば風味・フライドポテト風味…、これらはすべて同社のラムネ商品です。話のネタに、パーティーやイベントの罰ゲーム用(失礼)に手にしたことがある方もいるかもしれません。ラムネ生産量日本一の同社がなぜこのようなユニーク商品を開発するのか、それはひとえに「ラムネの認知度を上げるため」。


「ラムネ味のアイスクリームやお菓子は皆さん知っていますが、ラムネそのものを飲んだことがない人もいるんですよ。面白い商品を作ったらもっとたくさんの人にラムネを知ってもらえるのではないかと思いまして」。
アイデアは、「みんなで寄って集って」出し合うが、秦氏の「こんなのどうや?」が採用される確率が高いそう。「コーンポタージュ風味は、ガリガリ君のアイデアをもらいました」と屈託なく笑う。もっとも、試作品は作ったもののあまりに味がユニーク過ぎてお蔵入りになるものがほとんどだそう。
ともあれ、面白ラムネのおかげでテレビ出演の機会が増えた秦氏。ラムネ認知度アップ作戦は成功したといえるでしょう。真面目に商売をしながらも笑いと遊び心を忘れない、実に大阪らしい会社です。
リターナブルからワンウェイへ。
瓶革命で販路拡大へ
「ハタ鉱泉」の創業は1946年、秦氏の父親が開きました。大阪・天六に秦氏の父親と同郷の“小池さん”が始めたラムネ屋があり、そこに勤めたことが始まりです。戦後、“小池さん”の店の事務所を現在の「ハタ鉱泉」がある場所に開くことになり、父親が常駐。そのまま独立して1955年に「ハタ鉱泉」を設立しました。
当初はラムネの他にコーヒーやミルクセーキ・クリームソーダなど様々な清涼飲料水を製造、販売していました。秦氏は、「有無を言わさず朝から晩まで働かされていた(笑)」そう。時代の変遷とともに商品の種類はスリム化。秦氏の提案で1989年には回収、詰め替えすることによって何度も使用できるリターナブル瓶を廃止し、ワンウェイ瓶やペットボトルを採用することにしました。
リターナブル瓶 ワンウェイ瓶

「販売先が銭湯や酒屋などの個人商店からスーパー・コンビニなどへ変化したことが大きな要因です。それまで販売先は車で行って空瓶を積んで帰って来られる範囲だったのですが、瓶を回収する手間がなくなったので海外まで拡大しました」。
同業他社は最も多い時で全国に約2000社、大阪府内では約160社あったそうですが、現在は全国で約80社、府内では5社ほどに減少。秦氏が決行した“瓶革命”は、「ハタ鉱泉」の運命の分かれ道だったといえるかもしれません。
明治期から続く国産ラムネの歴史。
ハタ鉱泉が令和に引き継ぐ
ここで国産ラムネの歴史について触れておきましょう。そもそもラムネの定義をご存知でしょうか。ラムネとは、「玉ラムネ瓶に詰められた炭酸ガス入り飲料」のことを言います。玉ラムネ瓶に入っていなければ、サイダーになるのです。特徴あるこのガラス玉入りのラムネ瓶が考案されたのは1872(明治5)年で、イギリス人のハイラム・コッドが特許を取得しています。
日本に炭酸飲料が伝わったのは1853(嘉永6)年、ペリー来航時といわれています。当時は玉ラムネ瓶ではなく、今の発泡ワインを詰める際に使われるような瓶(キュウリ瓶)で、コルクで栓をし、針金で留めるものでした。中に入っていた飲み物は炭酸レモネードだと思われます。
日本でラムネの前身である炭酸レモネードが製造されるようになったのは、1872(明治5)年頃から。1887(明治20)年にガラス玉のラムネ瓶が輸入され始め、1892(明治25)年には大阪の徳永玉吉が「玉入り壜」の国産化に成功しました。
明治から約150年の時を経て令和の現代でも愛され続けているラムネ。「玉入り壜」が国産化された大阪に、ラムネ生産量日本一のハタ鉱泉があることは偶然ではないような気がします。


「今は、会社はほとんど息子二人に任せているんですよ。好きなようにしなさいと。海外進出を進めているのも息子です。アメリカ・中国・ヨーロッパなど45の国と地域に輸出しています。親から子に、子から孫と頑張ってほしい。私は黄綬褒章もいただいたし、叙勲も賜りたく、これから更に地域・業界に身を投じ、孫の成長を楽しみに、あともらうのは苦情くらいですかね(笑)」。
コロナ禍もなんのその。
夏に向けて工場フル稼働中
ラムネの他に、「よい子の泡びぃー」・「ひやしあめ」・「シャンメリー」などヒット商品を抱えるハタ鉱泉。コロナ禍で様々なイベントが中止になり、国内での売り上げにも多少なりとも影響が出ました。しかし、海外需要の伸びは順調で、本社を訪ねた1月にはすでに夏の大量消費を見越した準備が始まっていました。
これまで取引のあった愛知県安城市の製造会社をM&Aで取得。さらに2社の製造会社と合わせてフル回転で国内外の注文に対応します。

「梅雨が明けたらラムネを1,000万本くらい一度に出荷するんです。これから在庫を作っておかないと間に合わないんですよ」。
大阪市の本社工場は収得済みですが、現在、安城市の工場には世界中で採用されている食品衛生管理の手法、HACCP(ハサップ)の認定を取得するために設備投資中。日本では今年6月からHACCPが完全義務化になるとあって、こちらも着々と準備が進んでいます。
※HACCP:食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保しようとする衛生管理の手法です。
「アメリカのように、工場にHACCP認定がないと輸出できない国もありますから。もうそろそろ完成するんじゃないかな」。
会社は息子さんに任せていると言いながらも、要所はしっかりと押さえている様子。名物社長の大らかな笑顔を見ていると、世界中でラムネをはじめとするハタ鉱泉の商品が愛飲される日もそう遠いことではないだろうと思えてきます。
ハタ鉱泉株式会社
本社:大阪府大阪市都島区都島北通1-10-20
オフィシャルサイト:https://www.hata-kosen.co.jp/
ライター / 宮崎周文子
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