会社の主役「ドライバー」が安心して長く働ける会社であり続ける



新東宝タクシー株式会社 / 代表取締役 岸下義幸 氏

                                                            

配車アプリやキャッシュレス決済の普及によりタクシーが若者にも身近な存在になり、労働環境の改善もあって若手のタクシードライバーが増えている。効率的に配車が進むため、他業界で働く同世代よりはるかに多く稼ぐ人も出てきて、新卒が選択するキャリアとしても有力視されるようになってきた。

東大阪に本社を構える新東宝タクシー株式会社には、かつても若い社員が多く入社した時代があった。
その頃に入社し、勤続50年を超えた社員が何人もいる。同社で働けば家族を守って豊かな人生を築いていくことができるという証だ。

代表取締役 岸下義幸氏はそれでも、「まだ道半ば」と謙虚な姿勢を崩さない。
現在の社員もしっかり自己実現できる理想の会社をつくれるよう、ますます力を入れている。

会社の主役「ドライバー」が安心して長く働ける会社であり続ける


配車アプリの登場が業界を激変させている


岸下家で唯一の男の子だった岸下義幸氏は、小さい頃からいずれ会社を継ぐものだと意識していた。
もともと機械いじりが好きで、人と話すより機械と向き合う方が性に合ってる。どこかの研究室で働きたいという気持ちもあって、一時期会社を継ぐことに反抗したこともありましたが。


60年以上の歴史を刻んできた新東宝タクシーの始まりは、運送会社をしていた岸下氏の父が、売りに出されていたタクシー会社を知人と一緒に買い取ったことだった。

従業員が会社に権利を主張する労働争議が盛んだった時代で、売りに出されたのは、その対応が大変だったからではないでしょうか。当時は荒くれ者が多かった(笑)。20代半ばで入社した私なんか、舐められっぱなしでした。


そんな状況の事業を買い取ったのは、主な決済手段が手形だった運送会社と違い、タクシー会社は現金商売であり、資金を回転させやすかったからではないかと岸下氏は振り返る。
かつて、タクシーの主な利用客は、終電がなくなるまで酒を飲んだサラリーマンという華やかな時代があった。

バブルがはじけ、そういう需要は減ったが、タクシーが社会にとってなくてはならない存在であることに変わりはない。
高齢者が病院に行くのに利用するなど他の需要が増えているという。

さらに、配車アプリの登場が業界を一変させている。
スマホを使って待ち時間なしに気軽に呼ぶことができるようになりタクシーが身近になった。タクシードライバーの収入も増えているようだ。

実際、入社して間もない社員の給料が手取り30万円を超えていたりします。もちろん、残業時間はおさえていて、無理な業務をしているわけではありません。新入社員に「20万持って帰れるようにがんばれよ」と声をかけていた昔とまったく変わってきました。


常に新しいものを模索している岸下氏は、配車アプリの話にもすばやく反応していた。
完成して盤石になったものに後から乗っかってもうまみはありません。青写真はなくても展開概要が描ければ前のめりで検討し、やってみる価値があると判断できたら進めます。
失敗もありますが、様々なものを試してその中から使えるものを残し、ドライバーさんの選択肢を増やしておくことが大事です。

もちろん配車アプリ導入のデメリットもある。
今までのように現金主義ではなくなり、入金が締め支払いに変わりました。負担する手数料の額も小さくないです。なんとか対応していけるという手応えはつかめてきましたが、これだけ依存度が高いままでいいのか、一抹の不安はあります。


会社の主役「ドライバー」が安心して長く働ける会社であり続ける

主役はドライバー! 若手の時代、ふたたび


岸下氏が経営の中で常に意識しているのは「タクシー会社の主役はドライバー」ということ。

ドライバーが会社の営業マンであり看板。看板がよかったらお客さんはまた乗ってくれる。彼らがいきいきと仕事ができるように会社がバックアップしていくことが大事だと、この世界に入って最初に上司から教わりました。それ以来ずっとそういう思いでやっています。


そのドライバーの年齢層は時代とともに移り変わってきた。

50,60年前は、一般企業に就職できなかった若年層がタクシー業界に流れてきていて、当社にも若い人が多く、平均年齢は低かったと聞いています。


当時入社したその若い社員の中には、勤続50年を超えた人が何人もいる

本当に長く勤めてくれてとてもありがたいことです。未婚で入社した社員が、結婚して子供ができて家を買う。そして、子どもが大学を卒業して住宅ローンの支払いも終えて、『ちょっと気楽になりましたよ』と報告に来てくれる。これが一番うれしいことですね。

と目を輝かせる岸下氏。

その後バブルがはじけ、情勢が変わって、平均年齢が大分上がりました。定年後もまだ働けるし、稼ぐ必要もあるので、タクシードライバーを選ぶという人が増えたためです。他社を定年になってから当社に入社するケースも多く、70代後半まで勤める人もいます


時がめぐり、また社員が若返ってきた。
ここ数か月、30,40代の人が多く入社しているという。

会社の主役「ドライバー」が安心して長く働ける会社であり続ける

ステップアップで日々を楽しく、豊かな人生を


入社した社員はまず大阪タクシーセンターと社内で基礎知識の習得をする。それからベテランドライバーの横に乗って一日の仕事の流れを覚える。
教官が一人でハンドルを握っても大丈夫と判断すると「売上は気にしなくていいので、とにかく無事に帰っておいで」と送り出す。
そして一人で走り終えた後に、どんな点が不安だったかをフィードバックしてもらい、それに対してレクチャーをしていく。

こういった流れで1か月以内には一人立ちするそうだ。

彼らも同じように稼げるようになれば、入社したばかりの人でも成果を上げられると堂々と言えますね。ぜひそうなってほしいです。そしてその後も長く勤めて、『タクシードライバーになってよかった』と思ってもらいたいものです。

そのためにも、ドライバーに求めるのは、日々ステップアップしていくこと。

現状維持で精一杯だとネガティブになりがちです。改善点を見つけたり、できることを増やしていって日々、成長できれば、仕事も楽しくなりますよね。


朝礼前には新人ドライバーに積極的に声をかけている岸下氏。

今朝も、先月入社したドライバーさんに『致命傷にならなければ大丈夫。とりあえず失敗してきなさい。それが経験やから』と送り出したところです。


最近、ハキハキと挨拶をして明るい表情で仕事に取り組む社員が増えているという。

ここでがんばれば家庭を守って豊かに暮らしていける、そう思える会社であり続けたいと思います。まだ道半ば。
日々、理想に近づけていきます。昔はタクシードライバーと言えば世間から疎まれる存在だったかもしれませんが、今は違います。
法律で長時間労働は是正されましたし、会社も全力でバックアップするので、自分の生活を豊かにするためにも一緒にがんばってもらえればうれしいです。


と求職者にもエールを送った。

新東宝タクシーを活躍の舞台に選び、豊かな人生を形づくっていく人が今後もたくさん生み出されていくことだろう。

会社の主役「ドライバー」が安心して長く働ける会社であり続ける



新東宝タクシー株式会社
本社:〒 577-0801 大阪府東大阪市小阪2-6-14
オフィシャルサイト:現在制作中






















同じカテゴリー(動画 ピックアップ)の記事画像
働き手不足の訪問看護業界で SNSから70人の従業員を採用し得た社長。その奥にある思いとは!?
半生菓子を実直に作り続けて65年  家業から万博に参加する企業に
画一的な商品しかない食肉ギフト業界に、 独自の創造性で切り込む
ありそうでなかった、左右サイズ違いのシューズ販売  そのビジネスの可能性と創業者の思い
間もなく創業100周年を迎える、シール・ラベル業界のトップランナー
創立100年に向け、新規事業や社内変革に取り組む老舗ゴム会社の3代目
同じカテゴリー(動画 ピックアップ)の記事
 働き手不足の訪問看護業界で SNSから70人の従業員を採用し得た社長。その奥にある思いとは!? (2024-11-05 09:30)
 半生菓子を実直に作り続けて65年  家業から万博に参加する企業に (2024-11-01 09:30)
 画一的な商品しかない食肉ギフト業界に、 独自の創造性で切り込む (2024-10-29 09:30)
 ありそうでなかった、左右サイズ違いのシューズ販売  そのビジネスの可能性と創業者の思い (2024-10-16 09:30)
 間もなく創業100周年を迎える、シール・ラベル業界のトップランナー (2024-10-04 09:30)
 創立100年に向け、新規事業や社内変革に取り組む老舗ゴム会社の3代目 (2024-09-11 13:00)