オージーケー技研株式会社 / 代表取締役社長 木村泰治 氏
今回の取材で東大阪市の高井田駅から
オージーケー技研株式会社の本社に向かう途中に目にした自転車カゴにはほとんど
「OGK」のマークが付いていた。
ものづくりの町、東大阪の地で1941年の創業以来、さまざまな自転車パーツを世に送り出してきた
オージーケー技研株式会社は、自転車チャイルドシート国内シェアN0.1である。
現在
、オランダと中国に海外拠点を置き、事業規模を拡大し続けている。
子どものケガ0をめざす安全性を考慮する理念はオランダ展開のブランド
「Urban Iki(アーバンイキ)」にも引継ぎ、ヨーロッパでの販売数は2024年は10万台を突破する勢い。2018年からの累計は約30万台になる。
オランダでも信頼の技術力が実証された。
2018年に30歳代で
代表取締役社長に就任した木村泰治氏に、話を伺った。
創業当時から受け継がれたものづくり精神
オージーケー技研株式会社(英文社名は OGK CO.,LTD)のOは大阪、Gはグリップ、Kは化工の意味である。
自転車のグリップの製造販売からスタートし、プラスチックパーツの製造を中心に事業を展開してきた
老舗自転車パーツメーカーだ。
特に2000年代に入ってからは
自転車用のチャイルドシートが主力製品となり、国内シェアの約6割強を占めている。
創業以来、常に商品開発を活発に行い、自社ブランド製品は元よりOEM、ODMにも注力してきた。
30歳代で代表に就任した
木村泰治氏は、オーストラリアに留学経験もあり、2009年にOGK(オージーケー技研株式会社・以下OGK)に入社してからはオランダ、中国を拠点に海外向け事業で経験を積んできた。そして若くして代表になる。
18歳のときに、父に会社を継ぐ気があるのかと聞かれていました。父は60歳になったら社長を辞めると言っていた。その言葉通りに60歳になったとき引退し、私が代表に就任しました。
このとき、同時に幹部社員も引退したという。
創業者の祖父の時代は、プラスチック全盛期。当時は自転車のグリップ、カゴ、ペダルを作っていました。祖父はオールプラスチックの自転車が夢だったんです。まだ、実現していませんけどね。
創業者である木村氏の祖父は1960年にいち早くプラスチックの
射出成形(※1)によるグリップを開発した先駆者でもある。このものづくり精神は木村泰治氏にも受け継がれている。
(※1)射出成形:金型を使用した成形方法のひとつで、プラスチックなどの材料を加熱溶融し、金型内に高圧で射出して製品を作る製造方法
木村氏の父親の時代には、少子化を見据え、これからもっと子どもを大事にしていく時代が来ると予測し、
自社ブランドの自転車用チャイルドシートを発売し、その売上を伸ばしてきた。
その後も母親たちの声を反映させながら改良を重ねていき、デザイン性、機能性、そして品質検査を重ねて追及した安全性は他社の追従を許さないものとなっていった。
こうしたものづくり精神は、木村氏にも受け継がれている。
オランダのデザインと、日本の技術が融合した自社ブランドを立ち上げる
入社当時から海外勤務の経験を積んだ木村氏は、日本の少子化を見据えて海外に販路を見出し、世界に愛されるブランドの立ち上げを目指した。拠点に選んだ国は
オランダである。
世界でも自転車保有率が高い自転車大国のオランダで勝負をしようと決めました。最初から自社ブランドをつくろうと考えていました。
そして、2017年春には、
オランダを拠点にした自社ブランド「Urban Iki(アーバンイキ)」がスタートする。
オランダのデザインと、OGKが長年培ってきた技術力が融合し、欧州の最高品質基準
EN14344(※2)に合格し、ドイツの製品安全機関
TUV(テュフ)によるGSマーク(※3)も発行されている。
(※2)EN14344:2004年に策定された規格。体重制限や自転車への固定位置と固定方法、シートベルトやフットレストの形状、など一定の基準がある。日本国内のメーカーも上級モデルはEN14344を満たす設計がされている。
(※3)TUV(テュフ)によるGSマーク:機械・電子機器や医療製品などあらゆる製品に対して、安全性や機能の有効性が認められた製品に付けられるマーク
「ふたごじてんしゃ」を世に送り出す!
木村氏は、時代の流れを見据えて、
家族の移動をつくるメーカーという考えの元に、移動に関わるさまざまな商品開発を進めている。
製造しているものは実に多岐にのぼり、何万アイテムもある。中には熱烈なファンが付いているものがあるそうだ。
例えばチャイルドシート用レインカバーは顧客の声を商品化し大ヒットしました。弊社には何万というアイテムもあるので、中にはさほど売れなくてもコアなファンが付いている製品もありますね。
このレインカバーは、発売後も実際に使っている消費者の声を受け、より便利に使いやすいようにとアップデートされ続けている。
例えば、長いファスナーの開け閉めに時間がかかるという意見を取り入れ、ファスナーレスのレインカバーを業界で初めて開発、販売した。
こうした、消費者の声を見逃さない製品づくりは、驚くような商品の誕生にもつながった。
「ふたごじてんしゃ」の製造である。
2018年に発売した
幼児2人同乗用の三輪自転車「ふたごじてんしゃ」は、日本初で唯一のBAAマーク(自転車安全基準に適合した自転車に貼付される)の認定を受けた幼児2人同乗用三輪自転車だ。
OGKは、長年自転車のさまざまなパーツは世に送り出してきたが、自転車の製造はしていなかった。
しかし、木村氏が専務をしていたときに、世の中を驚かす自転車の製造に着手した。ひとりのママの並々ならぬ思いを受けて「ふたごじてんしゃ」が生まれた。
中原美智子(※4)さんとの出会いから「ふたごじてんしゃ」を必要としている人たちがいることを知りました。自転車メーカーはたくさんありますが、いろんな事情でどこも着手してなかったんです。市場規模は小さくとも作る意義があると、商品開発に踏み切りました。
(※4)中原美智子:大阪市在住、男児3人の母。2010年、第2・3子で双子を出産。単胎育児と多胎育児の大きな壁にとまどう。「株式会社ふたごじてんしゃ」を設立し、多胎児ママの「お出かけしたい」「外と繋がりたい」という気持ちをサポートする事業を行っている。「ふたごじてんしゃ」は中原美智子さんが発案し、オージーケー技研株式会社が開発・製造した。
ママ、パパの要望を取り入れながら、高い安全性と操作性を追求し、着手から2年の歳月をかけて完成。
常にものづくりを考え、こんな機能があったらどうか、必要なものを必要な人に届けたいという思いがあるからこそ今までに誰もが着手しなかった自転車が誕生したといえそうだ。更に「ふたごじてんしゃ」の発売時から数多く要望のあった
電動アシスト付きが、5年半をかけて2023年に完成した。
家族の移動手段に新たな価値を創出 家族の移動創造企業へ
さらに木村氏は、時代の流れを見据えて、家族の移動をつくるメーカーという考えの元、移動に関わるさまざまな商品開発をしている。
例えば、日本ではあまり知られていない
サイクルトレーラー(※5)である。今まで培ったノウハウを活かし、家族のための
サイクルトレーラー「Camilyキャミリー」だ。
チャイルドシート搭載自転車にも取り付け可能で、駐輪時にはコンパクトに折りたため、ワンタッチで簡単に着脱できるためキャリーカートとしても活躍する。
子どもを自転車に乗せながら、大荷物になってしまう大変で危なっかしいシーンをなんとかしたいという思いで約2年の歳月をかけて開発された。
(※5)サイクルトレーラー:自転車の後ろに連結するけん引車のこと。独立した車輪を持つキャリアカーで、自転車の後方に連結して荷物や子供を運搬する被牽引車(牽引される側のトレーラー部分)。日本ではサイクルトレーラーを取付けた自転車は普通自転車ではなく「軽車両」に分類される。
また、ペットとの自転車移動を快適にする商品の開発にも力を入れている。
ペットとの自転車移動を安全で快適にする「サイクルポーターリュック」、車でも自転車でも徒歩でも、安全で快適にペットとの行動範囲を広げることができる
ペットキャリー等、これらすべては自転車のチャイルドシートで培った安全面でのノウハウを盛り込んだものだ。
今後はどのような商品開発に取り組まれているのだろうか。
家族の時間の使い方や生活様式が変化してきました。ペット向けの商品もそうですが、移動弱者向けの商品として、人や家族が快適に移動できるための商品を開発しています。
家族の移動を快適にするためには、どんな商品が必要なのか、常にアンテナを張って、ニーズを拾い上げている。
どんな快適な商品が登場するのか、これからがますます楽しみである。