空き家の活用から女性の事業支援まで! 女性社長だからこそできる“新しい建築業のカタチ”とは?

株式会社三住建設 / 代表取締役社長 有田 三千子 氏

あなたにとって特別な“建物”は、何でしょうか?慣れ親しんだ実家、初めての一人暮らしで借りた6畳のワンルーム、先代から受け継いだ会社の事務所、通い詰めた喫茶店…すべての建物は誰かにとって特別なもので、誰かの“思い”がこもっています。そんな思いに寄り添い、具現化するのが建築業ですが、男性社会のイメージが強く、女性にとって近づきにくいイメージが色濃くあるのも事実。そんな建築業に女性の目線で新たな風を吹き込むのが、大阪府大東市「株式会社三住建設」社長 有田三千子氏です。

空き家の活用から女性の事業支援まで! 女性社長だからこそできる“新しい建築業のカタチ”とは?


最初は苦難の連続だった、建築会社の女性社長


有田氏が三住建設の社長に就任したきっかけは、当時社長を務めていた兄の大東市長当選でした。三住建設で経理として働いていた経験から「自分ならやれる」と意気込んでいた有田さんでしたが、最初は困難の連続だったと語ります。

自信満々で始めた社長業でしたが、「経理と経営は全然違うものなんだ」と、社長になって気がつきました。会社の利益を考えつつ、現場も見ていかなければならないし、経営方針も決めなければならない。女性ということもあって、現場の職人さんになかなか認めてもらえず、空回りしていました。「社長になった途端、周囲の態度が変わってしまった」と感じましたが、今思えば、変わってしまったのは私の方でしたね。自分自身、負けず嫌いな性格なので、誰かに悩みを相談できず、自分だけでなんとかしたい気持ちがありました。

社員みんなに認めてもらいたい気持ちが先走り、ひとりよがりな行動が多かったと、有田氏は就任後の自分を振り返ります。社員に相談なしにサプライズの大規模案件を獲得した結果、逆に社員に迷惑をかけ信頼を失ってしまうこともあったそうです。
そんな何もかもがうまくいかない中「私が社長を辞めたほうが、三住建設のためになる」と、思いつめた有田氏を助けてくれたのは、同じ経営者同士の集まりでした。

他の社長さんも、私と同じような悩みを抱えていることを知り「自分だけじゃないんだ」と、本当に救われました。社長さんにいろいろお話を聞いてもらったり、逆にアドバイスをいただいたり、それがターニングポイントでした。自分の気持ちに正直に、“背伸びをしない”ように意識しつつ、社員に「こんな会社を作りたい」という理想を事前に伝えるようにしたら、うまくいくようになったんです。

今では社員とのコミュニケーションを欠かさないという有田氏。社員みんなが考える「こんな会社を作りたい」を書いた付箋で埋められたものがインタビューの際に目にとまりましたが、これは有田氏と社員さんとの意思疎通の証でしょう。

空き家の活用から女性の事業支援まで! 女性社長だからこそできる“新しい建築業のカタチ”とは?


大型施設から住宅まで、幅広く事業を展開


有田氏の社長就任と時期を同じくして、三住建設は新規事業への参入を画策していました。従来同社の主力事業は、病院や学校の建築・耐震改修といった大型施設のゼネコン事業でしたが、身近な住宅事業にも注力していくことになったのです。自ら家事や育児を経験した有田氏だからこそできる“女性目線”に立った住宅づくりは、ここから始まりました。

自分で家事や育児を経験する中で、住宅に対する改善点や、新しい気づきがどんどん出てきたんですよね。それで住宅づくりに興味がわいて、スクールに通ってインテリアのコーディネート・デザインを勉強したんです。建築業と不動産業は切っても切り離せないという考えから、宅地建物取引士の資格も取得しました。最初はなかなか住宅事業の案件はありませんでしたが、どんな相談でもお受けし、責任を持って取り組むことで信頼を積み上げていくと、徐々に住宅の案件が増えてきたのです。

有田氏の地道な努力が実を結び、住宅事業は三住建設の第二の柱にまで成長したとのこと。そんな住宅事業の一環である「みすみ工房」は、間取りやキッチン・収納に至るまで家づくりをイチから学べるウェブサイトです。さらに深く学びたい人のためのセミナー・相談会も開催しており、ゆったりとした座談会のような雰囲気で行われています。

空き家の活用から女性の事業支援まで! 女性社長だからこそできる“新しい建築業のカタチ”とは?


空き家の活用や女性の起業支援、“思い”を大切に


住宅は「建てたら終わり」ではありません。例えば全国的に問題となっているのが「空き家」。取り壊したり、すぐにリノベーションしてしまうのが一般的ですが、そこで生まれ育った家族にとっては、たくさんの思い出が残る大切な場所。そんな“思い”に寄り添うために有田氏が新たに始めたのが、空き家活用プロジェクト「みすみコネクト」です。

空き家の活用から女性の事業支援まで! 女性社長だからこそできる“新しい建築業のカタチ”とは?

「みすみコネクト」は、利用していない建物の活用方法に悩んでいるオーナーと、カフェや工房といった事業に挑戦したい人たちをつなぐプロジェクト。オーナーと挑戦したい人の“思い”を起点に、できる限り空き家をそのままの状態で活用する方法を模索します。
空き家で一番多いのは、やはり「実家」です。遺族の方々は、両親が亡くなった直後に気持ちの整理もつかないまま、実家の処分を検討しなければならない。普通なら解体・土地売却で終わりなのですが、私は遺族の方々の気持ちの整理がつくまでの数年の間だけでも、空き家をそのまま活用できないかなと思ったんです。みすみコネクトは、住宅に残るさまざまな思いを“供養”するプロジェクトなんです。

また、出産や育児・両親の介護といったライフイベントに追われて、夢への挑戦そのものを諦めざるを得ない女性に向けて、有田氏は「みちこ相談塾」というスタートアップ塾も運営。カフェや雑貨店など、好きなことに挑戦したい女性に事業の始め方や資金調達などの「いろは」を学ぶ場を作り、女性の「私らしく生きる」を応援しています。

空き家の活用から女性の事業支援まで! 女性社長だからこそできる“新しい建築業のカタチ”とは?

当初は女性社長としての在り方に悩みつつも、今では女性社長ならではの目線でさまざまな建築業の形を打ち出している有田氏。今後は引き続き住宅と大型施設の事業を伸ばしつつ、建物を中心とした地域のコミュニティを育む活動を行っていきたいとのこと。実は有田氏、三住建設に入社する前は銀行の実業団でバスケットボール選手として活躍しており、現在は大東市の小学生にバスケットボールのコーチをしているそう。密かにプレイヤーとして復帰することも企んでいるとか。「180センチ近い身長が、男性社会の建築業で役に立つこともありました」と冗談まじりに話す有田氏の目の輝きは、優しくも熱意に満ちあふれていました。


株式会社三住建設
本社:〒574-0076 大阪府大東市曙町2番6号
オフィシャルサイト:http://www.misumi.net/

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