強化ダンボールの可能性にワクワクドキドキ。あっと驚く新製品を次々に

京阪紙工株式会社 / 代表取締役 住谷正司 氏

多くの人が動き回るステージから、プラスチックごみ収集用のトングまで、ダンボールが大きさも用途も異なるさまざまなものに活用されていることをご存じだろうか。ビールケースなどに使われている普通のダンボールよりも数倍強度がある強化ダンボールが、ダンボールの可能性を飛躍的に高めているのだ。強化ダンボールを使ってさまざまな製品を生み出しているのが京阪紙工株式会社(大東市)。アイデア次第で強化ダンボールの用途は限りないと信じる代表取締役 住谷正司氏は、「あっという間にあっと驚く製品を届けたい」と、ジャンルを問わず新たな商品開発に心を弾ませている。

強化ダンボールの可能性にワクワクドキドキ。あっと驚く新製品を次々に

木箱からダンボール、そして強化ダンボールへ



強化ダンボールとは、普通のダンボールなら紙の間に1枚入っている波板が二重、三重に入っており、強度は二重に入っているダブルウォールで通常の4.5倍、三重のトリプルウォールなら7倍とされる。紙だから木の3分の1と軽量なうえ、リサイクルも可能。そのうえ、折りたたみできることで保管場所をとらないのも大きなメリット。京阪紙工は、強化ダンボール大手の※①山田ダンボール株式会社に勤めていた住谷氏の父が独立して1981年に創業した。

※①山田ダンボール株式会社:重量物包装用の強化ダンボール、ダンボール製のパレットや襖、不燃ダンボールなどを取り扱っている東京都中央区明石町のダンボール製造会社。
ホームページ https://www.yamada-cc.co.jp/


当時はまだ木箱がメインの時代でした。しかし、木箱は虫がつきやすいため燻蒸や熱処理が欠かせないという難点があり、次第に強化ダンボールに切り替わっていきました。当社は、山田ダンボールから優先して強化ダンボールの供給を受けられたので、当初から売り上げの2割程度が強化ダンボールで、現在はダンボールパレットやダンボール梱包などを含めて7割にまで伸びています。


会社を大きくするより、たくさんの人の喜ぶ顔が見たい



住谷氏は大学時代、父の会社でアルバイトをして現場作業や配達などを経験したが、当時ダンボールに魅力は感じなかったといい、卒業後は証券会社に入社した。しかし、証券会社にも長居するつもりはなかった。自分で事業をやりたいという気持ちが強かったためだ。ただ、独立するにも証券は難しく、新しい仕事では時間がかかる。そこで選んだのが身近なダンボールだった。

経営者になるには、うちに入るのが最短でしたからね。26歳で入社し、38歳で父を継いで社長になりました。入ったころから経営者目線で経理をやり、職人気質だった父に代わって営業も任されていましたから、大抵の業務は把握できていました。強化ダンボールの需要が拡大する時期であり、営業にも力を入れましたから、強化段ボールの売上比率が年々拡大。ただ、社長になっても会社を大きくするつもりはありませんでした。というのも資本がいりますし、場所も必要ですから。ただ社長になってから売り上げは1.5倍に伸びましたね。でもそれ以上にたくさんの人が喜ぶ顔を見るのが私たちの喜びになっていきました。


観葉植物に始まりトイレにテーブル。強化ダンボールの自在性に手ごたえ



強化ダンボールの用途拡大の一つの転機になったのが、2008年のリーマンショック。「暇にまかせて」強化ダンボールの端材で何かできないかと考え、初めて作ったのが鉢植えの観葉植物。幹は丸く切った強化ダンボールを積み重ね、葉はパルプ100%の強化ダンボールの表面を剥いで着色したら、それらしく出来上がった。それから強化ダンボールの自在性に自信を得て、初めて商品化したのがトイレだった。

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東日本大震災で、トイレが長蛇の列になったり汚かったりして困った女子高生が手作りでトイレを作ったというのがニュースになり、これなら自分たちでもできるのではないかと考え挑戦したんです。折り畳み式で、箱に入れるとちょうどパソコンくらいの大きさになったので「@トイレ」と名付けました。1トンの荷重に耐えられますし、繰り返し使えます。その次はテーブル「#table」。登山好きの銀行の支店長から、山に持っていくのにアルミよりも軽いものが欲しいと言われてつくりました。これは、初めてクラウドファンディングで資金を得て取り組んだものです。

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軽い・強い・扱いやすいにとどまらず、プリント仕上げで材質感もアップ



これらの製品をホームページや展示会で紹介すると、次々にいろいろなアイデアが舞い込んできた。ブック型ストレッチ器具「Ashi Girl-脚軽~ル」は、つま先の方を高くした足場の上に乗って前屈ができる器具。通販会社からの依頼を受けて提案したが、通販会社の社内会議で不採用になったため、それならと自社ブランドで発売したら大人気に。その次は隠岐の島からの依頼で海岸のプラスチック回収用の「トング」を作ったら、釣り具会社が自社のロゴを入れて販売するようになった。ほかにも、5秒で組み立てられる「キッズテーブル」や、室内に置く猫用の「キャットタワー」飲食店などのテーブルを区切るパーテーションなど、製品の幅は次々に拡大している。

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ダンボールの良さとして、軽い・強い・組み立て解体が楽なことなどが挙げられますが、最近はリサイクル志向の高まりで需要が拡大しています。それだけでなく、当社はインクジェットUVプリントとフィルムコーティングを使用することで、段ボール製品の表面に大理石や木といったテクスチャのような質感を与えることができますので、見た目にこだわる人の希望にもマッチします。たとえばテーブルに木のプリントを施すと、木製のテーブルかと見間違えるほどです。ダンボールといえば輸送容器などBtoBの世界でしたが、工夫次第でBtoC、つまり消費者と直接つながれることを実感しています。

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期待するのは社外からの提案。困っている人の要望に応えたい



さまざまな依頼やアイデアを製品化するにあたっては、社員にモニターになってもらって、社員の意見を取り入れて改良することも。ただ、新しい製品に結び付く発想は社外に期待するところが大きい、と住谷氏は語る。

ダンボール屋が考え付くことは、木箱からダンボールはこのように木からの変化にとどまりがちですが、実際に困っている人、必要に迫られている人の提案は思いもよらないものにつながります。私たちとしても、これを作って売ろうというのではなく、必要とする人のために作って売れるのが一番うれしいですからね。だから、相談されるとチャレンジしたくなりますし、それに応えることが社会貢献に繋がると考えています。生きているうちに、自分の知識と経験をすべて出し切りたいと思っていますので、そのためにも新しい製作依頼はどんどん寄せてほしいですね。


目指すは海外進出。大阪関西万博も飛躍の足掛かりに



さらに住谷氏の目は海外にも向けられている。それを象徴するのが、「御禅 OZEN」だ。鬼滅の刃でよく知られるようになった市松模様や北斎の絵画、屏風絵のような日本の伝統的デザインパターンを強化ダンボール製のテーブルに印刷して、海外の人へのアピールを狙っている。

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ボストンで毎年開かれているジャパンフェスティバル(※②ボストン日本祭り)の責任者の方が来日したときに、強化ダンボール製のステージがあることを知って尋ねて来られ、それ以来、現地のステージに毎回使っていただいています。また2025年には大阪関西万博が開かれます。閉幕後は建造物をすべて取り壊さなければならないのですが、建設会社の方から、廃棄に費用がかからないダンボールで何かできないかと相談を受けています。海外にもアピールするチャンスですから、裏方としてでも、何らかの形でぜひかかわりたいと思って、知恵を絞っています。

※②ボストン日本祭り:2012年、ボストンの姉妹都市である京都からワシントンD.C.への桜の植樹100周年を記念して、第1回ボストン日本祭りが開催。この祭りは、ボストン地方に住む方々に日本の文化を紹介するとてもいい機会として徐々に規模が大きくなり、ここ数年で約7万人を集客できるほどまでに成長。またこの祭りはボランティアのみで運営されていて(2019年度は400人以上のボランティアが参加)、多くのスポンサーと支援者からの寄付により成り立っている。

そう語る住谷氏には、さらなる強化ダンボールの可能性が満ちあふれている

京阪紙工株式会社
本社:〒574-0064 大阪府大東市御領3丁目15-11
オフィシャルサイト:https://www.keihan-shikou.com/


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