お客様と会社の「縁結び」を支援する
シナジーマーケティング株式会社 / 代表取締役社長 田代正雄 氏
会社とその顧客の関係は、近年のデジタルマーケティング市場の拡大によって大きく変わりました。商品を顧客に一方通行で提供する「縦」関係から、会社と顧客の間でさまざまな交流が生まれる「横」の関係へと徐々にシフトしています。特にネットの普及は、親しみやすい公式のSNSアカウントやオンライン上での商品人気投票など、双方の関わりを急接近させました。そんな会社と顧客の「縁」とも言える新たな関係づくりの最先端に立つシナジーマーケティング株式会社 代表取締役社長 田代正雄氏にお話を伺いました。
大企業を退職し、ITベンチャーへ
関西学院大学在学中から、人材領域のビジネスを手がけていた田代氏。1995年に大学を卒業した後、コスモ石油株式会社に入社、営業やマーケティングを担当。誰もが知る大企業に入社した田代氏ですが、そのコスモ石油をわずか5年で退職します。
実は、コスモ石油は最初から「3年で辞める」つもりで入社していたんですよ。学生時代に立ち上げたビジネスは、やはり学生レベルのもの。社会で通用するビジネスを学ぶには、大企業がぴったりだと考えていました。またコスモ石油は非常に良い会社でしたので、当初の予定よりも長く在籍することになったんですけどね。最後の1年は「えっ!あいつが辞めた?」と思われるくらいの、圧倒的な量の仕事をこなしていました。
2001年にはシナジーマーケティングの前身にあたるインデックスデジタル株式会社に入社。前社長の谷井等氏(現シナジーマーケティング会長)、元副社長の田畑正吾氏(現サイボウズ監査役)と共に、シナジーマーケティングの成長を支えていきます。田代氏がシナジーマーケティングに入社する際のユニークなエピソードかございます。
当時のIT業界の社長といえば、ちょっと派手な方が多かったのですが、その中でシナジーマーケティングの創業者谷井はいい意味で唯一「普通」でした。そんなところに惹かれ、谷井と話をするために何度も会社に電話したのですが、営業と思われ居留守、全く相手にしてもらえませんでした。何か手はないかと「求人に応募したい」と伝えてみると、ようやく取り次いでもらえまして(笑)「とりあえず話は聞けるだろう」くらいの気持ちで会いましたところ意気投合、そのまま入社に至った次第です。
「取締役会長 谷井 等氏(左)とは20年以上の付き合いで強力な信頼関係が築かれている」
ただ入社してしばらくは、自社商品がなかなか売れずに大変苦労します。「規模が小さく実績がない会社の商品は、そう簡単に導入してもらえるものではありません、まして会社の顧客情報を扱ったサービスを名も知らないところに頼むなんて」と語る田代氏は、まずは「成功実績」をつくることに力を注ぎます。
とにかく初めて自社商品を導入いただいた取引先のご担当者を丁寧にサポートし、その顧客の課題を解決しながら、成功実績をひとつひとつ積み上げていきました。導入の成果が見えてくると利用規模も大きくなってきますし、その功績によりご担当者も出世していかれます。その繰り返しが、次の新規導入に繋がっていくんです。
その後、営業部長・COO(最高執行責任者)を経て谷井氏から社長の座を引き継ぐ。「営業部長から社長になったのは、ポストが空いて、誰もなり手がいなかったから」と謙遜する田代氏ですが、自身のたゆまない努力と功績があったのは紛れもない事実です。
お客様と会社の「縁結び」を丸ごとサポート
田代氏が率いるシナジーマーケティングの現在の主力事業は「CRM事業」。「CRM」とは、顧客との良好な関係を構築・維持することで収益の最大化をはかる手法をさします。例えば、顧客の好みに合わせて適切なダイレクトメッセージを送ったり、昔からの顧客の情報を分析してリピーターを増やす施策を検討したり、といった活動がCRMです。
そのために顧客情報の収集や分析が必要となりますが、情報の源や種類はさまざま。情報収集だけでも困難な上に、どこから分析していいかわからないのが実際のところ。そんな企業の困りごとを、顧客情報の一元化、分析の自動化などで支えるのが「CRMサービス」です。シナジーマーケティングは自社商品のCRMサービス「Synergy!」をクラウドで提供していますが、その思想は単なるソフトウェアにとどまりません。
クラウド(クラウドコンピューティングcloud computing):インターネットなどのコンピュータネットワークを経由して、コンピュータ資源をサービスの形で提供する利用形態。略してクラウドと呼ばれることも多く、cloud とは英語で「雲」を意味する。クラウドの世界的な普及でオンラインであれば必要な時に必要なサービスを受けられるようになり、あらゆる作業が効率化され、社会の創造性を高めることに成功した。
システムや製品を導入することがCRMであると、私は考えていません。結局CRMをただの「ソフトウェア」と思われてしまうと、機能の豊富さが比較基準になってしまいます。そうなるとどうしても外資のベンダーには勝てなくなる。製品を導入していただいたご担当者の「お客様のためにこんなことを実現したい」という思いを受け止め、それを実現する手助けをすることがCRMの本質だと思います。ソフトウェアはその手段のひとつに過ぎませんので。
Synergy!とは
国産クラウド型のCRMサービス。2005年提供開始以来、約3,000社への導入実績があります。顧客データの一元管理から、さまざまな条件設定が可能なメール配信機能、Webフォーム作成、LINEへのメッセージ配信の連携機能などを備える。
主力商品「Synergy!」のほかにも、集客から顧客育成・維持における課題を解決するソリューション事業も手がけるシナジーマーケティング。「人と企業が、惹かれ合う世の中へ。」というビジョンを掲げ、顧客にとことん寄り添う姿勢は、創業時から変わらないといいます。
シナジーマーケティングの源流は、1998年にまで遡ります。前社長の谷井氏が始めたメーリングリストサービスは、膨大なニーズとITブームの流れに乗ってあっという間に成長し、楽天が買収。その配信技術とサービス運営ノウハウを基盤として、楽天とも協業しながら現在のCRMサービスを立ち上げます。また谷井氏が立ち上げたシナジーマーケティングの根底にある「101点のサービス」という思想は、田代氏や社員に引き継がれています。
少ない人手で多くのお客様と向き合うには、いきなり120点~200点のサービスを目指すのは難しい。だからこそ「100点から1点でもプラスする」という気持ちでお客様に向き合ってほしい。その1点は例えば「スピード」かもしれないし「身だしなみ」かもしれない。とにかく小さいことを積み重ねて、お客様の期待を少しだけ超えることを意識するという意味なんです。
そして今まで会社全体としての大きな変化であった株式上場やYahoo!グループへの加入・脱退などもその目的はあくまで「お客様」の存在が根底にあります。株式上場をするためにはさまざまな監査プロセスを経る必要があるのですが、当社は上場が最終目的ではなく、まず会社の体制や本質がしっかりと出来ているかを確認チェックし、それが出来た結果、上場を通じて「お客様の信頼を得る」ことを目的としていました。Yahoo!グループの加入と脱退も「お客様との縁」を目的にした行動の結果。それは創業当時から変わりません。
田代氏が考える「次世代のCRM」
会社と顧客の「縁」を繋いでいくために、田代氏は次の一手として何を考えているのでしょうか。お話を伺うと、大きな計画が見えてきました。
これからは情報量がどんどん増えていって、個人が情報を取捨選別するのがとても難しくなってきます。そうなると、ただ発信するだけでは個人に情報が届かなくなってくる。以前は個人の好みや必要な情報が集まった「プラットフォーム」を重視していましたが、個人にとってプラットフォームはそこまで重要なものではないとわかってきました。「Synergy!」は情報を発信する手段なので、それを使って受信者にとっては心地よく、発信者にとっては確実に情報を届けるための道筋・新規事業を現在模索しています。
田代氏は生活者に心地よく確実に情報を届ける攻めの一手として、スポーツチームやアーティスト、地域などが持つ「ファン」との強い関係性を活用することが大切であると考えています。確かに自分が好きなものから届く情報は、なんとしてでも得たいですし、双方向のやりとりをしたいと思うものです。
そんな「ファン」と企業をつなぐ取組みの一環が、2021年3月から4月にかけて行われたサッカークラブ「名古屋グランパス」と連携した実証実験で、大型複合施設「コモ・スクエア」で買い物をした代金の一部がクラブの支援に当てられるというものでした。この実証実験を経て7月にリリースされた新規事業が「en-chant」で、ファン・スポーツチーム・スポンサーが「三方よし」となることを目指しています。
en-chantとは
ファンの日常生活を好きなチーム・選手の応援に変える新しい応援プラットフォーム。ファンは日常生活でのちょっとしたアクションにより、スポーツチームとスポンサー企業が設定するアンケートやプロジェクトなどに参加しチームの応援消費ができる。
他には「日本の工芸を元気にする!」というビジョンを掲げる創業300年の生活雑貨メーカー「中川政七商店」と協力し「Synergy!BCS」というシステムを開発しました。こちらも会社のビジョンやブランドが持つ価値観に共感してくれる「ファン」とも呼べるお客様を発見するために、「プロダクト(商品)が好き」「ライフスタイルに合っている」「ビジョンに共感している」という軸から、オンライン・オフラインの情報を統合して分析できる基盤を提供しています。
Synergy!BCSとは
顧客のブランド理解・支持を解析・可視化して促進するクラウド型ブランドコミュニケーションシステム。オンライン・オフラインの垣根なく顧客を統合し、好意度、ライフスタイル合致度、ビジョンへの共感度といった軸で顧客のブランド理解度を解析・可視化。あらゆるタッチポイントで顧客に寄り添い整合性の取れたコミュニケーション施策を可能にする。
これからは企業とお客様が対等に双方向でコミュニケーションが出来る時代です。一部のお客様が「ファン」になっていきますし、ファンと呼べる関係性を企業が築いていかなければなりません。そこで大切なのはしっかりした軸を持って、嘘をつかないこと。ぶれない軸を持っていれば、お客様がファンとして自然と集まってくる、そういう時代に向かっていると思います。また信頼できる「縁」というものは、一生のうちでそう多くは築けません。ひとつひとつの出会いを重んじ、その後の繋がりを大事にしていきたいですね。
サービスを解約したお客様を、よく食事に誘うという田代氏。「『解約したのに?』とびっくりされることが多いですが、そうやって縁を大切にしていると、数年後に戻ってきてくれることもあるんですよ」と語る田代氏のまわりには、これからもさまざまな「縁」が広がり、同じく縁を大切にする「ファン」が増えていくに違いありません。
シナジーマーケティング株式会社
本社:〒530-0003 大阪府大阪市北区堂島1-6-20 堂島アバンザ21F
オフィシャルサイト:https://www.synergy-marketing.co.jp/
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