懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』

株式会社ジパングフードリレーションズ / 代表取締役 安藤育敏 / アンディ社長

そのお店は都会と下町が入り混じった街、中崎町(大阪市北区)のJR京都線の高架下沿いにある。
まさかこんなところに!どこか南国リゾートのビーチにあるようなお店が、、。
そのお店こそ、「Zipangu Curry Cafe(ジパングカリーカフェ)」だ。

お客さんの大半は女性。どこか懐かしい出汁をベースにしたカレーは、チーズ、温玉、トロスジ、ネギ等、様々なトッピングが楽しめる。
運営する株式会社ジパングフードリレーションズは、飲食店運営の他に、自社商品や他社PB商品のレトルト商品製造の企画開発事業、自社ECサイト運営による小売り事業、ブランドシェアリングサービス(※1)による卸売り事業という3つの大きな柱がある。
(※1)ブランドシェアリングサービス:営業許可証を取得している飲食店等がパートナー契約をすることで、店頭や内装を変更せずに様々なフードブランド商品の販売が出来るサービス。

今では様々な異業種との業務提携を進め、SNSマーケティングやコンサルティング事業までそのビジネス領域は広い。
そして注目すべきは流通規格外米を価値あるものに変換する<箔米(はくまい)プロジェクト>だ。

「仕事するならワクワクしよう!」がモットーという代表取締役 安藤育敏 / アンディ社長 に目指す事業への思いを伺った。

懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』


原点は祖母が作ってくれた、和風出汁カレー


出汁をベースにしたカレーを作ったきっかけはなんだったのだろうか。
子どもの頃、大正生まれの祖母が作ってくれた牛スジがゴロゴロ入ったおでんの後の『〆の出汁カレー』が原点です。
30代の時にオーストラリアのゴールドコースト(※2)に現金を5万円だけ持って行きました。
この地は温暖な気候が腰が悪い私の身体に合っていました。「導かれるよう」にここに来た感じですね。
そこで1年間働きながら暮らしていた時に、魚のアラで出汁を取ったカレーを作ったんです。
その時、「懐かしいなあ、美味しいなあ」って。その時劇的に祖母のカレーが蘇りました。
(※2)ゴールドコースト:オーストラリア東海岸のブリスベン都市圏の南に位置し、 1年のうち300日は晴天と言われており、気候は温暖で一年中過ごしやすい世界的な観光地。

「うま味」ー今や世界的に知られた日本の「うま味」。
インスタント食品慣れした今の日本の現代人や若者も、うま味を感じる味覚は死んでいないだろうとの想いが出た。
2015年に帰国した安藤氏は、居酒屋を間借りして「和風カレーHiGE BozZ」をすぐにオープンする。
子どもの頃の夢だった料理人になりたいという思いを叶えたのだ。
そして2年後の2017年に現在の店舗である「Zipangu Curry Cafe(ジパングカリーカフェ)」が生れる。

しかし、安藤氏のここに至るまでの道のりは、決して平坦なものではなかった。

懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』

大病を患い3度の大手術!子供の頃の「料理人の夢」が打ち砕かれる


子供の頃は、あまり裕福とは言えない(=本人弁)家庭に育った安藤氏は、祖母が作ってくれた牛すじがたっぷり入ったおでんの後のカレーが大好きだった。
それは、おでんの残り出汁にカレー粉を入れて作った「出汁カレー」だった。
貧しくても牛肉好きの孫に肉を食べさせたいという、祖母の愛情たっぷりカレーだった。

この頃から安藤氏は将来、人を元気にする料理人になりたいという夢を持った。
ところが、17歳の時に大病を患い寝たきりになってしまった。
一度は回復に向かったものの再び悪化し、4年間の闘病生活を送ることになる。その間、3度の大手術も経験する。

17歳から22歳迄の期間、ずっと病気との闘いでした。長い時間は座れなくなった身体は映画館にも行けませんでした。
『エイビーロード(※3)』(旅行雑誌)を眺めながら、海外にいつか行こうと思ってました。
23歳になってやっと動けるようになったものの電車に乗るのは2、3駅が限界でした。
この時、立っている時間の長い料理人になる夢はあきらめて、サラリーマンになりました。
(※3)『エイビーロード』:1984年に月刊の海外旅行情報誌として創刊。当時、旅行会社でのカウンターとパンフレットが中心であった海外旅行を複数の旅行会社のツアーを簡単に比較検討。海外旅行を身近な存在にした。2006年10月インターネット化、2021年に終了した。

料理人になることと海外に行くことが夢だった安藤氏は、病気回復したすぐにオーストラリアのゴールドコーストに行った。
そこで衝撃の光景を目にする。

料理人が座って料理しているんです。コンビニでも。そうか、自分でお店を経営すれば、痛みと闘いながらでも頑張ってやれるんじゃないかと思いました。

一度は諦めた料理人の可能性を見出した安藤氏は決意を固め、すぐに帰国する。

懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』


女性が1人で気軽に食べられるカレー店を作ろう!


「Zipangu Curry Cafe(ジパングカリーカフェ)」は、梅田の喧騒から少し離れているが、このあたりは専門学校も多く立ち並び、表通りには若者が多く、その脇道の行き止まりの場所にある。

女性が1人で気軽に食べに来られるカレー店が少ないと感じた安藤氏はあえて人通りの少ないこの場所を選んだ。
コンセプトは<プチリラックス>だ。
カレーはもちろんだが、ドリンクメニューやパフェにも力を入れている。
儲けは度外視で実施している毎日1組限定の巨大「パフェチャレンジ」は、重量6キログラム以上のパフェを30分以内にグループで完食すれば無料になるとあって、大人気だそうだ。

巨大パフェは、コロナ禍で外出や外食ができなかった学生の「想い出作り」になればと思って始めたものです。自分がずっと動けなかった病いの時期と重なったのかもしれませんね。


「Zipangu Curry Cafe(ジパングカリーカフェ)」の出汁カレーは、2018年5月に西日本から厳選された40店舗で開催される西日本最大のカレーイベント『カレーEXPO 準グランプリ』を受賞する。(因みに第1回開催から最近の第7回までのカレーEXPO全開催にも選出されている。)
また、日本全国の本当にオススメなカレー屋を決める「全日本ジャパニーズカレーアワード2019」にもノミネートされた。

懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』

流通規格外米を価値あるものに変える<箔米(はくまい)プロジェクト>


安藤氏は、更に新しい取り組みを開始する。
炊飯廃棄米をアップサイクル(=元より品質向上させる)し、クラフトビールに変えた「箔米ビール 白金」である。
コロナ禍時、厳しい営業制限がかかった飲食業界。炊いたお米が大量に余った。その炊飯廃棄米をどうにか活かしたい。
悩んでいた時に、シンガポール発の食品ロスをアップサイクルするフードテック企業と出会い、この取り組みがスタートする。
「箔米ビール 白金」は多くのメディアに取り上げられ、その数は220本にもなったという。(現在は生産終了)

多くのメディアにとりあげられた事からある農家と知り合い、その農家から昨今の夏の猛暑の影響で、割米や未熟米などの流通されない規格外のお米、流通規格外米の存在を知る。
そして、安藤氏の持ち合わせたアイデアと行動力で流通規格外米から<箔米プロジェクト>がスタートすることになる。

「箔米(はくまい)」という名前には、白米になれなかった流通価値のないお米に箔(はく)を付け、米粉に変え、価値あるものに変換(アップサイクル)していくという意味が込められている。
このプロジェクトから生まれた商品を展開する新ブランドを<箔米堂>とした。
<箔米プロジェクト>は農林水産省「みどりの食料プロジェクト・サステナアワード」で2022年、2023年と2年連続入賞を果たす。

規格外米を米粉にした「箔米粉(はくまいこ)」は小麦粉の価格高騰で苦しむ飲食店にはその代用品として使用され、また現代の小麦アレルギー問題も解決できることから、多くの消費者からも感謝されている。

2023年、鰹と昆布の出汁と規格外米を米粉にした「箔米粉」を使用した「箔米カレー」が完成。
「箔米カレー」は「2024 空-1グランプリ in Toyono」(※3)で優秀賞を受賞する。
(※3)「2024 空-1グランプリ in Toyono」:豊能地域活性化推進協議会が2025年の大阪・関西万博に向けて、豊能地域(豊中市・池田市・箕面市・能勢町・豊能町)の中小・零細企業を応援する目的で、大阪国際空港での販売を前提とした商品開発コンテスト。
現在「箔米粉」を使用した新たな食品を開発中だ。

驚いたことに様々な事業展開により現在の売上構成に占めるカレー事業は全体の50%で、残りの50%は<箔米プロジェクト>や出汁の事業となっている。
社名にあるリレーションズ、つまり「繋げる」事業がここに来て、いよいよ伸びてきている。

懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』

食べられるのに規格外になったり、廃棄されてしまうものを、価値ある食べられるものに変えて商品化することがコロナ禍をきっかけに大きく膨らんできました。
当社が言うSDGsは食品ロスなものをそのまま使うのではなく、アップサイクルにしたものと定義しています。


祖母の影響から、「一粒の米も無駄にしたくない。」という安藤氏。
古き良き日本の精神、懐かしい日本の味、昔の日本人からの風土(カルチャー)を、フード(食)を通じて未来へと繋げていくジパングフードリレーションズ
これからどんなものを繋げ、新たな価値を生み出して行くのか目が離せない。

懐かしい日本の味を未来へ!米一粒「もったいない」精神が生み出した『箔米堂』



株式会社ジパングフードリレーションズ
本社:大阪市北区中崎西3丁目3-4 34 ビル1F
オフィシャルサイト:https://zipangu-food.co.jp/








社長インタビューとは?

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