株式会社フラワーズロマンス　代表取締役　中道正彦氏

2015年に放映された「ぐるぐるナインティナイン」（日本テレビ系）の特番“おもしろ荘”に出演していた漫才コンビ「フラワーズ オブ ロマンス」を覚えているだろうか。
念願の全国ネットに出演したものの当時の月収は5万円。その日暮らしの生活ではとても家族を養うことはできない。
2016年5月に惜しまれながら解散し、33歳で芸人を引退した中道正彦氏は、引退後2年目にして会社を設立する。
現在は動画マーケティング事業を展開し、さまざまな企業から人気を集めている。

元芸人の経験、芸人時代に培われた企画力やトーク力、そしてネットワークを活かし、現在講演、映像制作事業、中小企業のマーケティング支援など幅広く活躍している。

株式会社フラワーズロマンスの代表取締役 中道正彦氏に話を伺った。

子どもを授かり結婚、引退。そして店長に

芸人を目指されたきっかけはなんだったんですか？

私は鹿児島出身なんですが、最初は大阪の印刷工場で2年間働いていました。
その当時、腰を悪くしてしまった40歳くらいの先輩が会社で邪険に扱われているのを見て、「社会ってこんなんや。それなら好きなことをしよう」と大阪のNSC（吉本総合芸能学院）に入りました。
別に子どもの頃から芸人を目指したていたわけではないんです（笑）。
実は印刷工場で働いていた時は性格は暗かったんです。休みの日はビデオを借りて一日中部屋の中、そんな週末を過ごしていました。
でもあの千原ジュニアさんが芸人になる前は私と同じように家にこもっていたことを知って、暗くても芸人になれるんや！と思ったんです。

中道氏が21歳のときである。当時、2000組いる芸人の中で吉本の劇場に出られるのはわずか50組という厳しい現実が待ち受けていた。
よしもとクリエイティブ・エージェンシーに所属し、12年間漫才を続けてきた中道氏だったが、芸人の仕事だけでは食べて行けず、アルバイトをしながらの生活だった。


「ぐるぐるナインティナイン」の特番“おもしろ荘”に出演時代


芸人を引退した動機は何だったんでしょうか？

子どもを授かって結婚したことです。相方との漫才は楽しかったんですがコンビ仲も冷えていました。それでも結婚してからも1年くらいは芸人を続けていたんですが、芸人の月収は5万円くらいしかないし、その日暮らしです。このままでは子どもを養っていけないという思いがありました。

その後、インターネットで見つけた民泊を運営する会社で働き始めた中道氏は、全くの未経験だったのにもかかわらず飲食店の店長に抜擢された。
SNSや芸人時代の人脈を駆使し1年で黒字化したそうだ。
芸人を辞めてからはあえて芸人とあまり会わないようにしていた中道氏だったが、黒字が出たのは芸人仲間のおかげだったという。

この頃から芸人にいつか恩返しがしたいと思うようになったという。
そして芸人を活用した結婚式二次会プロデュース業を開始する。
法人化するも、起業2年目でコロナ禍で売上ゼロに。

芸人時代もアルバイトをしても叱られたらすぐに辞めちゃってたんで、それなら自分で会社を創ろうと思って結婚式の二次会をプロデュースする会社を設立したんです。芸人を挫折したというコンプレックスもあり、社長になりたかったんですね。
かまいたちの濱家さんとは芸人を辞めてから今も仲がいいんですが、いつか肩を並べられるようになりたいなと思ったんです。

2018年に株式会社フラワーズロマンスを設立し、芸人時代に交流のあった放送作家に二次会のアイデアや進行台本を頼み、芸人にも声をかけて出演してもらった。
笑いの多い二次会のプロデュースは人気を呼び、仕事は波に乗る。
ところが、コロナ禍ですべての仕事の売り上げがゼロになってしまう。
しかし同時にコロナ禍の影響で企業の間で採用動画が急速に普及し始めていた。

企業の採用動画を見ると、表面上のいいことばっかり言っているような印象を受けました。芸人時代のスキルを活かせばもっと面白くできるはずだと思ったんです。

企業の採用課題を解決するサービス「芸人インターン」

披露宴の二次会は注文が皆無となり、映像制作に業態を転換した。
前から構想があった芸人のスキルを活かした採用動画制作事業「芸人インターン」である。




「芸人インターン」とはどのようなものなんでしょうか？

一言でいうと商店街ロケの企業版です。芸人が活躍できるような事業を考えていたので、主演してもらう芸人は、動画に出演しつつお金も稼げるし、知名度も上がるので一石二鳥です。企業に芸人が行くことで笑いも入れながら、本音の採用に役立つ動画を作っています。

芸人が実際に企業にインターン（職業体験）することで、企業の本音や会社の魅力をまじめにおもしろく紹介できる。
現役のTV番組に携わる放送作家が企画構成に加わることでエンタメ性が加わり、親しみやすい芸人とのやりとりで自然と企業の雰囲気が伝わってくる。
最初は企業動画にエンタメ性を入れるのをためらう企業もいたそうだが、2年前くらいからエンタメを取り入れたいという企業が増えてきたそうだ。




2023年5月からは、中小・ベンチャー企業の動画マーケティングを支援するサービス「ムービス」を提供開始した。
YouTubeやTikTokの運用代行をする事業である。

また、コミュニケーションのセミナーでの講師の依頼も受けている。
現在、9名いる社員は全員が元芸人である。動画の撮影や編集も元芸人がやっている。
バラエティーの現場での経験がそのまま活かされている。今までのつながりから直接、芸人をブッキングできるため、中間マージンが入らないため企業側へのコストも抑えられている。

資金もない中、引退後2年で経営者になれたのも芸人時代に出会った芸人達から学んだことが大いに役立っているそうだ。
12年間の芸人人生は決して無駄ではなく、まだまだ未知数の可能性を秘めている。

株式会社フラワーズロマンス
本社：大阪市北区中之島6丁目1−45
芸人インターン：https://www.geininn.com/
ムービス：https://movis.jp/

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