産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!

Yaala株式会社 代表取締役 井上裕子氏

関西電力株式会社に入社し、火力事業に従事してきた一人のOL。
2人の子供を出産、産休育休を経て復職したが、その時に感じた出産後のモヤモヤ感を解決するべく、産後ケアとは違う家族でライフスタイルを見直す滞在型サービスという新機軸を打ちたてた。
そして「かんでん起業チャレンジ制度」に挑戦。10例目の新規事業として認められて、2021年にYaala(ヤーラ)株式会社を設立する。
この新しい事業について、代表取締役社長 井上裕子(ひろこ)氏に話を伺った。

産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!


産後のモヤモヤ感が新規事業立ち上げのきっかけに


出産は家族にとって大きな喜びでもあり、大きくライフスタイルが変わるきっかけにもなる。
特に出産後の母親は体力的にも精神的にもバランスを崩しやすく、「産後うつ」に悩まされる夫婦も多い。

昨今では男性の育休も認められ始めているものの、男性が家事・育児に参加すれば「良き夫」と称賛される。
しかし母親が家事・育児をしても「良き妻」とほめられることは少なく、やって当たり前と思われることも少なくない。
2児の母でもある井上氏は正にそのギャップにモヤモヤした。
妊娠・出産するまでは大手企業でバリバリ働いてキャリアを築いてきたからこそ、育児では同じことをしても男女で親としての評価が違うことにジレンマを感じ、そこにこそ産前産後の女性が抱える大きな社会課題があると感じたという。

私の夫は同じ会社に勤めており、食事づくりや子どものお風呂など、できる限り二人で家事育児をしていたのですが、私の中には1人目の出産の時から“心のモヤモヤ”を抱えていました。私もそしてほめられている夫も、仕事とのバランスのとり方で難しく、余裕がない。二人ともがんばっているのに、二人とも余裕がなくなっている。同じように家事・育児をしているのに、夫だけがほめられる。
こうしたモヤモヤを抱えているご家族は、私たちだけではなく、すごく多いのかもしれないと思ったんです。

そこで考えたのが、産後の家族のライフスタイル作りをサポートするサービスだった。
産後から復職前までの夫婦ともに育児休暇を取得している家族が対象で、神戸市垂水区塩屋町にある一軒家で1ヶ月間滞在していただく。
一軒家のオーナーや助産師などのサポートのもと、産後のパパ・ママが赤ちゃんと一緒にゆったり過ごすことで復職後の生活を整える場を提供している。

産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!


京都や滋賀、大阪市内も検討したものの最終的に神戸の塩屋という場所を選んだのは、旅行気分が味わえる場所であることや利便性もあるなど、さまざまな理由があったが、何よりも街全体がゆるやかで、気兼ねなく子どもと一緒に歩けるという理由が大きかった。
家から1マイル(約1.6km)程度のお出かけにぴったりな“ワンマイルウェア”で、気楽にお出かけしやすく、海辺の景色が良く、さらに小さな子供を受け入れてくれる街の雰囲気がピタリと合った。

サービスの内容はベッドや洗濯機などの家具・家電はもちろん、ベビーベッドやバウンサー(ねんね期の赤ちゃんのゆりかごの一種)、オムツ、おしりふき、ミルク、哺乳瓶などベビー用品をすべて用意されている。
事前にご家族にヒアリングを実施し、家族に寄り添ったプランでライフスタイルの課題解決をサポートするというもの。
特に大切にしているのが、夫婦で育児を共有すること。
わかっているつもりでも育児の内容を書き出して可視化すると、パパもママもお互いどちらもがんばっていることや、相手への感謝、理解が深まるという。
社名の“Yaala(ヤーラ)”は“共有する”というフィンランド語からインスピレーションを受けて名付けられている。

産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!


広島の向島で、新サービスが稼働


サービスを始めて1年ほどが経ち、12組の家族が利用し、満足度は100%以上という期待を超える成果が上がっている。
選べるプランの中には助産師の相談やベビーマッサージ、パンづくりや料理教室などを用意し、戻ってからの家事や育児をいかに楽にできるかも大きな特徴だ。
産後の生活を前向きにポジティブにとらえて、ライフスタイルを充実させるための長期の旅行のようなサービスとなっている。

しかし、1ヶ月という長期滞在のため、夫婦そろっての育休取得が難しい家族やタイミングが合わない家族もいたという。

塩屋での活動を経て、さまざまな面でのサービスの形や改善点も見えてきました。
そこで、次はもう少し滞在期間を短くし、1週間からの利用が可能なプランを考えています。
場所も変えて、広島県尾道市の向島(※1)のゲストハウスを予定しています。
復職前のご家族に利用していただき、家事と育児、そして仕事も含めた生活設計をどうするのか、ご夫婦でしっかり話し合いができる場を提供したいと思っています。
(※1)向島:広島県尾道市に属する島。本州尾道市街から南に約300m幅の尾道水道を隔てた位置にある島。文字通り尾道の向かい側に位置する

産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!

ご夫婦での話し合いがスムーズに進むように、話しやすい場や話すきっかけ作りのツール、雰囲気づくりもプランに盛り込まれている。
例えば焚火をするなど、自宅では出せない非日常空間を演出して、夫婦でポジティブ状態で話ができるようにするのもひとつの方法だ。
広島の向島は尾道から船で渡ることができ、塩屋と似た雰囲気を持つ。
どちらも瀬戸内海沿いに面し、移住してくる人も多く、オープンな雰囲気が似ている。
また、広島は井上氏の故郷でもあり、子供の頃からの風光明媚な環境のこの地に設けたいという想いもあったという。

産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!


私が産後の生活で苦しかったこと、モヤモヤを体験したことで、世の中で叫ばれているジェンダー問題などの課題に改めて気づきました。
また、この事業を通して私自身が感じていたモヤモヤが何だったのか、全部ではありませんが気づけたことも多々ありました。
“Yaala”のサービスを利用するご家族は、産後の生活を充実して送りたいというポジティブな方たちですが、パートナーを思いやるがゆえに、がんばり過ぎている方が多いです。
私たちはそんながんばり過ぎている人たちに、ゆるめ方や、ゆるめる時間を提供し、ゆとりをもって子育てできるように、パパママのサポートをしていきたいと考えています。


現在は復職前の家族が対象になっているが、今後は復職後のご家族やそれぞれのご家族に寄り添ったサービスを提供し、利用の拡充を図っていきたいという井上氏。

産後の悩みを経験した親だからこそできた事業と言える。
このサービスが全国に広まることで、少しずつ産後うつの家族が減る。
そんな未来はもうそこまで来ている。

産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!


Yaala株式会社
代表取締役 井上裕子
本社:大阪市北区中之島3丁目6番16号 関電ビル3F
オフィシャルサイト:https://yaala.jp/

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