日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者

WALL SHARE 株式会社 / CEO 川添孝信氏


突然だが「ミューラル」なるものを、ご存知だろうか。
これは「MURAL=壁画」から来ているもので、所有者の許可を得たうえで建物などの壁をキャンバスに絵を描くアートである。
ヒップホップ・ミュージックなどと同じくストリートから発生したカルチャーであり、公共の場や商店のシャッターなどに無許可で描かれる落書きとは異なる。その点は、混同されないようにご注意いただきたい。

海外と比較して日本ではストリートカルチャーはもちろん、ミューラルとなるとその認識と理解は著しく低いのが実状である。
一般的な日本人の感覚ではこれがビジネスになるとは考えにくいであろうし、そうするには社会的認知度の低さなど高い壁が存在しているのも事実。

だが、その壁に挑んでいる大阪の社長がいる。それが WALL SHARE株式会社 CEO 川添孝信氏
まさに壁を「壁」でだ。

10代のころにヒップホップ(※)と出会い、ストリートカルチャーに魅了されたことがその出発点だった。
(※)ヒップホップ:1970年代にニューヨークのブロンクス地区で開かれたブロック・パーティーにルーツのある、音楽・ダンス・ファッションを中心とする黒人文化。80年代には、ヒップホップにはDJ、ブレイクダンス、グラフィティの三大構成要素がある。

日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者


初めは、音楽から入りました。ヒップホップのカルチャーには音楽ではラップもあれば、アートではミューラルは合法で描くものですが、そのルーツにはグラフィティと言われる非合法の落書きもあります。音楽もアートも、人と違うことを信念を持ってやる。そんなヒップホップのカルチャーに、すごく衝撃を受けたんです。


大学まで競技としてサッカーを続け、卒業後はフォルクスワーゲンのディーラーに従事。新車営業で3度全国販売賞を受賞するセールスマンになるが、胸のなかにあるヒップホップ・カルチャーへの思いはふくらみ続ける。
それがあるとき、破裂した。

愛してやまないヒップホップ・カルチャーで身を立てることへと、人生の舵を切る。
その決断に至った心の動きを問うと、さも大したことでなかったかのようにおおらかな笑顔で、そして端的な言葉で答えた。
ただただ、衝動でしたね。

ヒップホップに影響を受けていたとはいえ、川添社長はそのジャンルに傾倒する者にありがちなステレオタイプのアウトサイダーではない。
物腰は柔らかく、輸入車ディーラーで優秀なセールスマンであったことが、会話のやり取りのなかでも随所ににじみ出る。
そんな彼は安定した会社員の道を自ら降りたとはいえ、徒手空拳で次にチャレンジしたわけではない。

海外では多くの企業がミューラルを使っていたり、まちづくりに活用されていることは知っていました。国内にもミューラルを描くアーティストがたくさんいることも知っていましたし、日本でもチャンスはあるなと感じていましたね。


日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者

ミューラルが受け入れられないは正しい。全員がよろこぶものは、面白くない



現在の日本でアートは一部の愛好家が美術館などに足を運んでたしなむ、高尚な趣味と捉えられている節があることは否めない。
だがストリート発祥のミューラルは、それとは立脚点を異にする。

今の日本では、だれしもが美術館に行ってアートを見るということは起こりにくいと思うんです。ですがミューラルは、まちのなかに存在するもの。
良くも悪くも子供から大人まで生活環境のなかで、かつ無料でアートに触れらることができるものなんです。僕にとっても自分の好きなストリートカルチャーから生まれたアートが、大きなサイズでまちに現れることに良い意味での違和感や、それが持つエネルギーにすごく魅力を感じています。


川添社長を突き動かすのは美術を一部の人のものとするのではなく、ミューラルの精神性がそうであるように、アートがまちに当たり前にあるものとする思い。

日本国内の現状では、アートというものに対して難しいとか、よくわからない、高尚そうだというようなイメージがあると感じています。アートがわかる・わからない以前に、好きか嫌いかにもなっていない。
それを変えるには、きっかけが必要だと思うんです。
そのための手段として、ミューラルは最強だと思っています。だからこそ、日本のアートの課題を解決するための手段としてやっている気持ちもありますね。


日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者

ミューラルへの愛は深いが、自らは描くアーティストではない。
もっとも質問されるランキング1位ですが、僕は描けないんですよ(苦笑)。

WALL SHAREが行うのは、ミューラルのキャンバスとなる建物の所有者と交渉し、プロジェクトにマッチしたアーティストとを結びつけること。
とはいえ世間的な認知度が低いゆえ、建物の所有者との交渉は容易ではない。
今でこそ実績を重ねてきたが、創業当初は話を持ちかけても門前払いが当たり前だった。
自分が住むまちにミューラルが描かれた建物なりが存在することに、拒否反応を示す住人もいた。

今も、受け入れられないという声が上がることはありますよ。だけど僕は、それは正しいと思っています。
全員が喜ぶものは、面白くない。だから僕たちの考えや思いを、貫き突き通すのは良いことではないと思っています。
その一方で、自分たちの日常にミューラルがある環境に暮す子どもたちは、それになにかの刺激や影響を受けるかもしれない。
賛否が生まれるのは、いいこと
だと思うんです。



「次世代の子どもたちに、絵を届ける」 日本のアート界の課題解消に


設立からわずか4年ながら地域をはじめ、自治体や大企業からの依頼によるプロジェクトが形になるなど、WALL SHAREによるミューラルはまちに増えつつある。また近々、ポーランド政府からの依頼で海外にも展開しだす。
とはいえまだ馴染みがないミューラルを日本に広めていくには、これからの道のりは決して平坦ではない。

「衝動」で立ち上がった川添社長を、次に進ませるもの。それは次世代への思いでもある。

まちにミューラルが増えるたびに、自分の好きなカルチャーがどんどん生まれていく瞬間に携われていることが楽しいです。
ですが一方で日本のアート界の課題も、すごく感じているんです。
そのひとつは、子どもたちに絵を届けること。僕はそう考えていますが、今の日本ですぐには変わらないと思っています。


日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者

川添社長はそれを変えるために、WALL SHAREの取り組みをやり続ける覚悟でいる。

これはおそらく、身体が動かなくなるまでやり続けると思います。
今はミューラルを広めていくのと同時に、子どもたちを対象にミューラルを体験できるイベントを開いたりもしています。
以前、神戸で開催した際には、土・日で約170人が参加してくれてました。


子供たちは、やがて大人になる。
美術館に並べられて高尚なものと捉えられているかもしれない作品も、まちや日常でミューラルに触れて育った彼ら、彼女らの目にはまったく違う意味や価値に映るかもしれない。
そうなれば、日本におけるアートの捉えられ方も変わることだろう。

そんな将来が来れば、その礎になったひとりとして、川添孝信の名が語られるのかもしれない。


日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者


WALL SHARE 株式会社
本社:大阪市北区中崎1丁目11‐10 中崎第一ビル401
オフィシャルサイト:https://www.wallshare-inc.com/


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