株式会社ビグネコーポレーション　代表取締役　南野信一氏

腰痛、ひざ痛、外反母趾、タコ、魚の目、足底腱膜炎など足のトラブルを抱えている人は多い。そして足が小さい、足が大きい、足幅が広い、甲が高い、足の悩みは十人十色である。こうした足の悩みを抱えて困っている方に寄り添い、靴で足元から健康をサポートしているのが、株式会社ビグネコーポレーションである。関西を中心に「異邦人」という靴とオーダーメイド　インソール(中敷き)の店舗を10店舗運営している。足は顔と同じように千差万別だ。様々な悩みを持った人が「異邦人」に相談にやってくる。店舗にある足のカルテはすでに15万人を超えているそうだ。そんな足の悩みに寄り添い続けている株式会社ビグネコーポレーション 代表取締役 南野信一氏に話を伺った。

あらゆる足の状態に対応できるようになりたいと独立

大阪駅前第一ビル2階にある営業本部には、ありとあらゆるサイズの靴が揃っている。サイズは21㎝から30㎝まで。サイズだけでなく、足幅もD～6Eまであり、ウォーキングシューズだけでも100種類以上。「異邦人」は足や靴の悩みを解決するために「ウォーキングシューズ」と「オーダーメイドインソール」を専門に販売している靴屋である。南野氏がサラリーマン生活を経て、株式会社ビグネコーポレーションを立ち上げたのは2003年のことだ。

Q：起業されるまではどんなことをされていたのでしょうか？

いろいろやりました。高校を卒業後は、大工の見習いとして工務店に2年ほど勤めました。それからスキーが好きだったので、それからしばらくは冬場はスキー場でインストラクター、夏場はアルバイトと自由な生活を6～7年やってました。今の仕事に通じるスポーツ業界に入ったのは、1986年にフランスのスキーメーカーでテクニカルスタッフになったときからです。ただ、もともと趣味と仕事は切り離すべきと考えてましたので、3年ほど勤めた後、東洋ゴムの関連会社「ティースポーツ」に転職しました。そこで、はじめてシューズ企画や営業に携わりました。それから私は対面の小売りが好きだったんで、1992年に大阪のスポーツ会社「ステップ」に転職し店長を経て、バイヤー、商品企画開発に携わりました。ここで11年半お世話になりました

Q：独立するきっかけはなんだったのでしょうか？

ステップでは、スポーツ選手のシューズのバイヤーを担当していたんですが、東京に転勤することになったんです。ただ東京の下北沢、吉祥寺では、年配のお客さんが多く、正直売るものがなかったんです。それで、社長にこの客層に合った高齢者向けのウォーキングシューズの販売をやらせてください！と直訴したんですが、却下されてしまいました。ただそれは独立のチャンスと気持ちを切り替え、メーカーとのパイプを使って地元大阪に戻って自分でやろうと思ったんです

これからは、ますます少子高齢化に向かっていく。その高齢者をターゲットにしたウォーキングシューズを扱うべきだと考えた南野氏は、株式会社ビグネコーポレーションを立ち上げ、ウォーキングシューズの専門店「異邦人」1号店をオープンさせた。2003年のことである。



Q：屋号の「異邦人」は、どんなとこから付けられたのでしょうか？

当時、アシックスが「歩人館(ほじんかん）(※１)」というウォーキングシューズの店舗を全国展開してたんで、私も漢字三文字にして、「人」という字と「ん」を入れたかったんで、屋号を「異邦人」にしました。最初は今のような形態ではなく、ウォーキングシューズの専門店でした

最初は、知名度もなく苦労した。しかし、メーカーと取引していた頃の広告関係者から「しんどしいやろ。何か協力しようか？」という願ってもない電話がかかってきた。ありがたかったと南野氏。約半年間、破格で広告を出してもらい、徐々に知名度が上がってきた。

※１歩人館(ほじんかん）　アシックスの直営店。3次元足形計測器を使い、足の測定結果に合わせて、適切な靴を提案。現在は「ASICS WALKING（アシックスウォーキング）」に店名を変更。

あらゆる足の悩みに対応する靴屋へ

Q：今のような形態になったのはいつ頃からですか？

1号店をオープンした半年後くらいです。すると足の悩みを抱えた高齢者がたくさん訪ねてこられたんです。そういう悩みを持った人に対応できる靴屋にしようと、2004年の春に形態を変えました

幸い、南野氏は趣味のスキーでインソールの知識があり、足裏にかかる圧力を分散させるインソールの必要性を認識していた。さらに南野氏は改めて一から足とインソールの関わりについて学んだそうだ。
「異邦人」で扱っているインソールは全てフランスのシダス社(※2)製の熱成形タイプのオーダーメイドインソールだ。このシダス社製のオーダーメイドインソールは年間販売数世界一に何度も輝いている。

※2　シダス社は、インソール（中敷き）の世界的トップブランドで、足元から身体のバランスを整え、スポーツのパフォーマンスを向上させる製品を提供している1975年創設のフランス発祥の企業です。

お客さんの足の悩みに対応していくうちに、どんどん店のやり方が変化していきました

そういいながら、南野氏が見せてくれたのは、サイドにファスナーが付いたシューズとダイヤル付シューズだ。

実は店を始めた当時、サイドにファスナーが付いた靴はほとんどなかったんです。これだと、いちいち靴ひもをほどかなくても脱ぎ履きができるので高齢者にはとても便利です。このファスナー式を拡げたのはうちだといっても過言ではありません。ダイヤル式もファスナー式と同様、紐を結ぶ手間がなくて、ダイヤルを回すだけでフィッティングの調整ができる大変便利なものなんですが、各メーカーがダイヤル式のウォーキングシューズの販売を縮小化しているので、異邦人ではオリジナルのダイヤル式ウォーキングシューズを開発・販売に力を入れています

「異邦人」の顧客の7割はリピーターだ。せっかく足に合う靴に出会い、それが販売中止になって困るのはお客さん。常連さんが必要としているものをなくすわけにはいかない。南野氏はそうした気持ちを常に持っている。靴やインソールに加え、実は靴下も足に重要な役割がある。お客さんの足のためにいい靴下も提供したいと、大阪松原市にある靴下専門メーカーが作ったFOOTMAXと共同開発した「異邦人」だけでしか取り扱いをしていない特別な靴下がある。足にピッタリとフィットするのが最大の特徴で、1足の靴下に様々な技術が凝縮されている靴下だ。これはインターネットで販売もしている。

足の悩みは十人十色　！まるで、お医者さんのように1人1人に対応する

飲食店は店がメニューを提供しますが、うちは、お客さんがメニューを持ってきて、こんな悩みがありますが、それを解消できる靴はありますかと注文をいただいています。ですからサイズも21㎝から30㎝まで揃えていますし、足幅もD～6Eまで、どんな注文にも対応するようにしているんです

1人1人のお客さんの対応には約1時間をかける。足の悩みをチェックし、計測、そしてカルテを作る。足に適した靴選び、そしてさらに足にフィットするようにオーダーメイドインソールを微調整して仕上げる。最後に試着し、歩いて確認する。正しく靴を履くことが大切だ。こうした丁寧な靴販売の結果、リピーター率はなんと7割となっている。



また「異邦人」では、スポーツ選手のパフォーマンスを支えるインソールのオーダーも数多く受けており、男子プロバスケットボールB１リーグの大阪エヴェッサ(※3)の全選手とオーダーメイドインソールの使用契約を締結している。
南野氏は、1人でも多くの方に自分に合った靴で歩く暮らしをしてもらいたいと、今も奮闘をし続けている。

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※3大阪エヴェッサは、日本のプロバスケットボールチーム。B.LEAGUE B1 西地区所属。ホームタウンは大阪府大阪市。2005年創設。

株式会社ビグネコーポレーション
本社：大阪府河内長野市木戸2-22-17
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