「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる

株式会社インゲージ / 代表取締役 和田哲也 氏



最近、仕事上のやりとりをメールではなくLINEなどのチャットツールで行う企業が増えているといいます。リモートワークの増加は、メールに代わる次世代のコミュニケーションツールの普及をますます促しているのではないでしょうか。仕事のやりとりだけでなく、企業のPRをとってみても、従来のダイレクトメールからTwitterやFacebookといったSNSを活用するケースが、ここ数年で急増。このように人と人との情報伝達手法は、加速度的に増加しています。そんなコミュニケーションの多様化時代に、人と人との「つながり」を真摯に考えるのが、株式会社インゲージ代表取締役 和田哲也氏です。

「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる

ゲーム開発で身に付けた「3つの要素」


和田氏のファーストキャリアは1990年に新卒入社した大手ゲーム会社でのゲーム開発。当時はゲームセンターに設置される業務用アーケードゲーム機が全盛で、花形の存在でした。そんなアーケードゲーム機の開発でプロジェクトリーダーを務めた和田氏は、注目を集めるゲームを作る為、いかに「わかりやすいか」「面白いか」「繰り返しやりたくなるか」に、心血を注いでいたといいます。

昔からマイコンやゲームが好きで、ファーストキャリアはそれが影響していますね。週末になるとゲームセンターに足を運んで、どうすれば面白いゲームを作ることができるのかを考え続けていました。ゲームセンターのユーザーを観察していると、多くの人はゲームセンターに意気込んで入っていくというより、何かのゲームが目にとまって、ふらっと立ち寄っている。テーマがわかりにくいゲームは遊んでもらえないし、繰り返し遊びたくならないゲームは儲からない。だから「わかりやすい」「面白い」「もう一度やりたくなる」この3つの要素がゲームに必要だと、肌身で感じたんです。

常に「ゲームに必要な3つの要素」について考えていた和田氏。はじめはゲームにのみ向けられていたその目線は、徐々に回りの「業務システム」にも向けられるようになります。
当時はさまざまな業務システムを使って仕事をしていましたが、このシステムがゲームに必要な3つの要素をまったく持っていないのに気付いたんです。自分は3つの要素を持ったゲームを開発しようとしているのに、開発に必要なシステムにその要素がないことが気になってしょうがなくて、それからは業務システムをいかによくするか、ということを目指して、業務システムで世界的なシェアを持っていた大手写真処理機メーカーに転職をすることにしました。

アメリカ駐在で実感した「多様性を受け入れ、自主性を重視する」文化


1998年大手写真処理機メーカーに入社し、約10年間をアメリカで過ごすこととなった和田氏。駐在をはじめて1年半は毎週どこかの州へ足を運ぶなど、どっぷりとアメリカ市場に身を置くことになります。
アメリカで10年間仕事をしていましたが、実は学生時代は英語がとても苦手でした。ただ、社会に出るといろんな人の考えがあることに気づいて、世界中の人と会話をしてもっと視野を広げるには、やはり英語が必要だと実感しました。それからは英語の猛勉強を開始、ある程度自信がついてからは、阪急電車の中で外国人を見つけたら、ところかまわず話しかけていました。当時は車内では読書くらいしかすることがなかったので、外国人も気さくに相手をしてくれて、私にとってはさながら無料の英会話教室でしたね(笑)。

「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる

日本とは文化も商習慣もまったく違う異国の地で和田氏が最も衝撃を受けたのは、誰もが「多様性を受け入れている」ことでした。
国語の授業を例に挙げると、日本なら「作者の意図を答えなさい」と、周囲を慮る文化。これがアメリカだと「あなたはどう思いましたか」と、本人の考えを尊重し自主性を重視するんですよ。当然回答は人それぞれ異なるわけですが、それを認める文化があります。どちらの文化がいい、悪いではなく、違いがあるなと感じました。

また、和田氏がアメリカにいた頃は、ちょうどAmazonがサービスを急拡大させていた時期。ただ、あまりの急拡大のため当時のAmazonは荷物が届かない、問い合わせに対する返答がちぐはぐ、といった問題に遭遇することが多かったそう。そんなAmazonの対応が、和田氏に「コミュニケーションの重要性」を強く意識させることとなります。
当時はアメリカで働いていたので、アメリカ人が非常に勤勉に仕事をすることは知っていました。Amazonで働く従業員だっていい加減な対応を取りたくて取っているわけではないはず。急な需要拡大に、組織のキャパが追いついていなかったのです。その頃の問い合わせシステムはメールが主体でしたが、メールは元来大規模な問い合わせを処理するために開発されたものではありません。問い合わせを確実に処理するシステムの重要性をその時意識するようになりました。

その後和田氏はアメリカから帰国、ITベンチャー企業に転職。日本発アメリカ向けのクラウドサービスを立ち上げ成功させた後、アメリカでのAmazonの問い合わせをヒントに2014年に独立。現在の株式会社インゲージ設立へと至りました。

コミュニケーションは多様化しても、顧客はシンプルに一元管理


コンセプトはゲーム開発で探求した「面白く、繰り返し遊んでもらえる」こと。アメリカ時代に肌で感じた「多様性を受け入れる」こと。そしてAmazonの対応から意識しはじめた「問い合わせシステムの重要性」。これらが実を結んだのがインゲージが提供しているコミュニケーションサービス「Re:lation(リレーション)」です。導入実績はリリースから7年ですでに3,000社を超えているといいます。
従来のメールによる問い合わせ対応では「メール単位」による管理にならざるを得ないため、顧客一人ひとりのメール以外の問い合せはそれぞれ個別で対応する必要があり、伝達漏れのリスクが生まれました。しかしRe:lationはメールのみならずTwitter・LINEなどのコミュニケーションツールを「人」単位で管理・共有することができるサービス。例えば、メールでやりとりした顧客がTwitterやLINEで反応した場合でも、同一の顧客としてコミュニケーション手段の違いを意識することなく一元管理ができます。
Re:lationの特徴は「相手一人ひとりと抜け落ちることなく向き合える」点だと思っています。メールでもLINEでもTwitterでも、その向こう側にいるのはひとりのお客様。さまざまなコミュニケーションの手段をすべて「人」に紐づけることで、一人ひとりと向き合える問い合わせシステムを実現しています。

「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる
「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる
「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる

一人ひとりとしっかり向き合う」という姿勢は、Re:lationという製品だけでなく、それを提供するインゲージの組織構造にも表れています。インゲージには「営業」と名のつく部門はなく、顧客とのやりとりはセールスからアフターフォローまで、すべて「カスタマーサクセス」という部門が担当します。本来カスタマーサクセスは製品導入後のアフターフォローを行う部門として認知されていますが、インゲージのカスタマーサクセスはセールスとアフターフォローを同じ部署で担当します。そうすることで、顧客一人ひとりに、よりコミュニケーションが図れるようになり、とても向き合いやすくなるんですと和田氏は語ります。
カスタマーサクセスは日本語で「顧客の成功体験」。一般的にカスタマーサクセスというと「製品導入後の成功体験」がもっぱら話題にされますが「この製品を導入すると、どのように成功できるか」をイメージしてもらうこともカスタマーサクセスには必要、というのが私たちインゲージの考えです。営業・マーケティング・アフターフォローが三位一体となることで、顧客一人ひとりに向き合いながら、製品の導入からサポートまで、シームレスな対応を実現できると考えています。

コミュニケーションの向こう側に存在する「人」に重点を置くRe:lationは、まさにコミュニケーション多様化の時代に生きる風雲児。さまざまなコミュニケーション手段を受け入れながら「顧客一人ひとりと向き合う」ことをビジネスとして成立させることができるサービスです。
またRe:lationが2019年にグッドデザイン賞を受賞していることは、「わかりやすい」「面白い」「もう一度やりたくなる」という、ゲーム開発時代から続く和田氏の思いがデザインに反映されている証でしょう。

ITをもっと簡単に、楽しく


今から10年前は、メール以外の方法で仕事上のやりとりを行うなんて、考えることすらできませんでした。同じように、今から10年後のコミュニケーションも、今とはまったく異なる形で行われているかもしれません。しかし、コミュニケーションの手法そのものは変化しても、その本質に変わりはないと和田氏は考えます。
人間が生きていく上で、欠かせないものが2つあります。1つはビジネス人は人との関わりあい=ビジネスがなければ生きていけません。そして、もう1つがコミュニケーションです。私たちの仕事は、ビジネスとコミュニケーションの間に生まれる課題をITで解決すること。「問い合わせ」という切り口でのソリューションがRe:lationで、今後コミュニケーションの手段が変わっていっても、Re:lationのあり方は変わらないような設計思想になっています。また、今はインゲージが提供する製品はRe:lationだけですが、これからは他の切り口でビジネスとコミュニケーションの課題を解決することも、当然考えていますよ。

「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる
「一つひとつのコミュニケーション」を「一人ひとりのつながり」へ昇華させる

インゲージのモットーは「Make IT Easy」。ITをもっと簡単に、もっと楽しくすること。和田氏の挑戦はRe:lationだけにとどまらず、ビジネスとコミュニケーションの間に広がり、大阪をさらに盛り上げてゆきます。

株式会社インゲージ
本社:〒530-0012 大阪市北区芝田1丁目14-8 梅田北プレイス 14F
オフィシャルサイト:https://ingage.co.jp/


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