世界に拡がる奇跡のタイル LAMINAM(ラミナム)の開拓者が語る、タイルビジネスの道程
ラミナムジャパン株式会社 / 代表取締役 松下 豊 氏
「大きく・薄く・軽い」、そしてデザイン性にも優れた磁器質セラミックタイルブランドLAMINAM(ラミナム※以降ルビ省略)は、2004年にイタリアで誕生する。
今までのタイルの常識をはるかに超えるセラミックタイルとして多くのデザイナーに圧倒的な支持を得、建築・インテリア業界で世界展開している。
LAMINAMは、セラミック業界でこれまで誰も見たことのない製品を生み出したいと2001年にイタリアモデナ県で設立。約3年に渡る研究開発期間を経て、世界のタイルの既成概念を打ち破る「サイズ1x3メートル、厚さ3ミリ」の大判タイルの製品化を2004年に実現する。
LAMINAMは1200度で焼いており、熱いものも置ける耐久性があり、水も吸わないためキッチンにも貼ることができ、汚れもすぐに落ちる。
また薄いので、壁にクロス代わりのように貼ることも可能で、耐久性に優れるので玄関のドアにも貼れる。
これまでの既存タイルや他の表層用建材では難しかった「建築・インテリア・家具・キッチン・装飾」といった個別のデザイン領域を一貫した全横断型の建築設計構想を可能にした。
152色の表層デザイン、4つの厚み、3種のサイズという豊富なハード面を兼ね備え、そこに意匠・強度・衛生・環境対応等の様々な要求を含むソフト面にも優れ、デザイナーの様々な建築設計のアプローチに対し、豊富な選択肢で答えることができる。
また新しいタイルに交換する場合、タイルを剥がすことから始まるが、LAMINAMは既存の壁や床をはがさずにボンド張り施工が可能である。つまり、既存のタイルの上から貼ることができるのだ。
「2025年 大阪・関西万博」のサウジアラビア王国やUAE(アラブ首長国連邦)のパビリオンにも採用される予定だ。
日本で初めてLAMINAMに出会い、ラミナムジャパン株式会社を設立した代表取締役 松下 豊氏は、建築業界の生き字引のような人物である。松下氏に話を伺った。
ラミナムジャパン㈱ 代表取締役 松下 豊 氏
イタリアの展示会で出会った画期的なタイル
ラミナムジャパンは、タイルの常識を変える超大判セラミックスラブ「LAMINAM」の製造メーカーであるイタリアのLAMINAM社の日本総代理店として2019年12月に設立された。
松下氏は、1948年創業の新築工事、改修工事の壁・床などのあらゆるタイル工事に対応してきた株式会社カワオカタイルと中国製タイル販売の先駆け的存在として多くの実績を上げてきたローマタイル・ジャパン株式会社(現・ラミナムジャパン株式会社)の2つの代表であった。
Q.イタリアのLAMINAM との出会いをお聞かせください。
当時、世界の企業がコストダウンのため中国に工場を構える時代であったが、経済発展すると共にコストが上昇し中国で生産するメリットが無くなってきた。そんな中、業界の将来を考えると既存タイルでは存続が難しいと思い、イタリアの展示会に行ったんです。そこでLAMINAMを見て、「これは使える!日本の特約店になりたい」と思ったんです。
イタリア ミラノサローネ展示会(2023年4月)
それは従来のタイルの常識を遥かに超えるものであった。その大きさと薄さは今までとは全く違ったものだった。他社のタイル会社はこの魅力的なタイルをイタリアから輸入しようと試みたが、その薄さゆえに輸送途中でタイルが割れてしまう。そんなリスクの高い商品を輸入してまでLAMINAMを扱おうとはどこの会社も思わなかった。というよりできなかったと推察される。
長年、海外のタイルを輸入してきたので、タイルを割らない輸入ノウハウは分かっていましたし、自分の会社(カワオカタイル)でタイル工事もできます。タイル工事をする技術があったから、LAMINAMとの契約に踏み切れたんです。
台湾製、中国製タイル販売の先駆け的存在であり、長年あらゆるタイル工事に対応してきた会社を経営してきた松下氏だったからこそできた決断であった。
こうして、2011年にLAMINAMの特約店として契約(この時旧社名:ローマタイル・ジャパン)。8年間の特約店契約終了後、右肩上がりの仕入れの数字が認められ、LAMINAMから資本提携を提案される。そして日本の総代理店となる。
2019年には、社名をラミナムジャパン株式会社に変更する。
LAMINAMが資本提携しているのは、世界で11か国ありますが、自社(ラミナムジャパン)の資本が50%以上入っているのは、うちだけです。
大阪本社 ショールーム
ただ、今まで日本になかったタイルである。売れ始めるまでは3年かかったという。
建築業界は危ない橋は渡らないため、施工実績がないとなかなか売れない。営業に苦労していた中、LAMINAMを取り入れてくれたのがJR三宮駅構内のトイレだった。JRの名、これが大きな実績となり、他の日本国内のJR沿線のみならず、阪急、阪神電鉄へも広がり、事業は大きく動き始めた。以降、着実に販売を伸ばし今まで5600以上の現場に納品するまでに成長している。(2024年3月時点)
持続可能性に長けた、LAMINAM
積水ハウス、大和ハウスを始め大手住宅メーカーの注文住宅ではLAMINAMを採用しているところが多い。
また、大阪メトロ新大阪駅、2024年に新しくできた北大阪急行電鉄の箕面船場阪大前駅、箕面萱野駅、2023年にリニューアルした京都競馬場等、公共の施設でも続々と採用されている。
これにはLAMINAMがCO2削減に非常に有効的なタイルだということから来ている。
今の時代に、LAMINAMはSDGsなタイルなんです。軽いので輸送料金が安くつきますし、通常のタイルより原料の量が少ない為、焼成する際のエネルギー量も少ない。CO2が削減できます。更にマジックで落書きがされたとしてもシンナーで拭けばキレイに除去できます。メンテナンスがすごくし易いんです。特に電鉄の駅は皆がキャリーケースで移動するので、床は汚れやすい。LAMINAMはメンテナンスに長けているで駅には適しています。
北大阪急行 箕面船場阪大前駅
Q.画期的なタイルだと思いますが、他の会社が輸入したりはしていないのでしょうか?
輸入はできても現場でそのままのサイズでは貼れないんです。LAMINAMは現場で切らないといけない。他のタイル会社にはそういった施工のノウハウがないんです。現場で臨機応変に対応して施工ができるのはうちの会社(カワオカタイル)だけです。
普通は、LAMINAMを仕入れてもサイズに合わせて工場で切って、現場に運び貼らなければならない。いちいち工場に持ち帰って切って、現場に持ってくるという作業では、運送代も時間も手間もかかる。
施工サービスを行うグループ会社のカワオカタイルは大判・薄型のLAMINAM施工の10年以上にわたる豊富な経験と熟練した技術を持つ職人がいるので、現場だけで対応が可能になる。
LAMINAMのように薄くて大きなタイルを製造しているライバル会社は世界に数多くある。しかし、日本国内でこうした特殊なタイルを輸入し、現場で施工できるのは、販売・加工・施工サービス体制が整っているラミナムジャパン株式会社だけである。
又、イタリアから輸入すると半年近く納期がかかるため、スピ-ディな供給に対応するため、100以上のアイテムを国内で在庫しているのも他社にない強みである。
工事の延長線上でどういう商品を扱えば、このタイル工事業というのが成り立つかというのを考えないといけないんです。
そういう意味ではLAMINAMとの出会いはすごく良かったと思いますね。
ラミナムを加工する専門施工スタッフ
「裏切らない」ー出会いと誠意が次のステップへ
松下氏が歩んできた道は決して平坦ではなかった。結婚を機に地元のタイル工事店に入社し、その仕事を手伝うことからのスタートであった。
しかし、松下氏は日本で初めて海外からタイルを輸入し、1990年代から始まった高層タワーマンション建設の波の中、当時日本一の高さ(47階建て)を誇る東京での超高層タワーマンションの外壁に採用され、ここから大きく成長することとなる。
当時、資材大国中国に進出する輸入企業は多く、時に投資もしたが中国の独自の商法に拒まれ、海外輸入のメリットが無くなり、撤退する企業が続出する。
しかし松下氏は大きな損失には至らないところで食い止めれた。これまで積み上げてきた輸入実績と築き上げてきた取引先との信頼関係からゼネコン業界では松下氏のことを知らない者はいないという。
負けるケンカはしないという松下氏は、物事を始めるうえで常に計算し、整理し、研鑽を積んで行動に移してきた。そんな松下氏が大事にしてきたことがある。
人との出会いを大事にして、次のステップに繋いできました。自分も絶対、人を裏切らなかった。
他にはない、誰もやっていないことをやり続けてきた松下氏。
後継者のために未来を見据えて開拓した磁器質セラミックタイルLAMINAMは、国内在庫40,000㎡以上(ほぼ東京ドーム1個分)を常備し、国内実績を増やし続けている。
持続可能性のための技術革新であるSDGsの取組も積極的に行い、20以上の第三者機構認証を取得している。
大判、軽量、薄く、様々なデザイン柄の特徴を活かし、建材以外の使用も可能にしたLAMINAMは、これからますます成長していくに違いない。
ラミナムジャパン㈱、カワオカタイル大阪本社 外観