「ベストセラー」よりも、いつまでも愛される「ロングセラー」商品を!<赤・青・黄>のプロフェッショナル企業

株式会社向井珍味堂 / 代表取締役 髙見政暁 氏

                                                                

創業以来、業務用の<赤・青・黄>の商品(後述)をつくり続けているのが、平野区にある煙突を模した看板が目印の株式会社向井珍味堂である。
社名には他にないような、おいしくて珍しい食べ物を提供し、商売したいとの思いが込められている。今は姿を消しているが、昔は煙突があり、それを目指して来る人が多かったそうだ。この取材時も工場からほのかにに香ばしい、きな粉の香りに包まれた。

ベストセラー商品をつくるよりは、品質を落とさず長く愛されるロングセラー商品を大切にし、小さなマーケットの大きなシェアのものを複数持つという戦略で業務用の商品をつくり続けてきた。
2023年4月に6代目の代表取締役に就任したばかりの髙見政暁 氏に話を伺った。

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創業当時から変わらぬ<赤・青・黄>の商品づくり


向井珍味堂は、1947年に向井浅吉氏が唐辛子粉末、きな粉製造を開始したのが始まりである。
1950年には高知県四万十川の青のりの入手権を取得し、青のり粉の製造加工を開始した。
これで<赤・青・黄>、誰もが目にする信号機の三色が出揃う。

『赤』は唐辛子を始めとする山椒、コショーなどのスパイス。
『青』は青のり。
『黄』はきな粉、金ごま等である。



良質な原料を確保するために産地との契約栽培などの供給ルートを確保し、最新の生産体制を整えている。
それぞれの分野で高品質のものを追求し、各分野の食のプロに納得される愛される商品をつくってきた。

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後継者に悩んできた向井珍味堂の3代目社長の中尾敏彦氏は、2013年8月にM&Aの選択をし、鹿児島県日置市に本社を置く「株式会社ヒガシマル」と資本、業務提携を行なった。ヒガシマルは車エビ養殖用の配合飼料ではトップシェアを誇る食品メーカーだ。ヒガシマルも売上を伸ばすために多角化し始めた時期であった。
M&A後、4代目、5代目の代表取締役はヒガシマルからの出向であったが、2023年に代表取締役に就任したのは、長年きな粉の製造にかかわってきた髙見氏である。

Q.6代目の社長に就任されたきっかけはなんだったのでしょうか?
3代目の中尾氏はオーナー社長でした。会社の将来を見越して私に全体を把握できるように、主力のきな粉部門の工場長にしていたのだと今になって思います。
5代目の社長(現・取締役会長 出来正樹氏)は、ヒガシマルの役員も兼務、その状況の中、社員の悩みも親身になって話を聞き、業務の面でも仕入れから製造まで一所懸命働いている姿をみて適任だと、お話をいただきました。
自分には重責だと悩みましたが将来の向井珍味堂を考え大任を拝しました。


向井珍味堂の売上の約50%がきな粉である。
副社長の立場であり、主力商品であるきな粉の原料の仕入れ、製造を最も熟知している髙見氏に白羽の矢が立ったのだ。

Q.大阪・平野区のご出身だそうですね。
そうです。大学を出て外食産業のホールを1年半、その後は家業の鶏肉小売店を手伝っていたんですけれども、廃業することになったんです。ずっと食にかかわる仕事をしてきたので、食関係の仕事を探していたときに、たまたま求人雑誌で見つけた向井珍味堂に応募して、入社しました。30歳の時です。


「ベストセラー」よりも、いつまでも愛される「ロングセラー」商品を!<赤・青・黄>のプロフェッショナル企業
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『黄』:業務用きな粉の種類は60種類以上!大豆の個性を生かす熱風焙煎方式


向井珍味堂のきな粉は、製菓メーカー、アイスクリームメーカー等に卸されている。現在のきな粉ブームも追い風となり、マーケットは広がっている。プロが認めた高品質のきな粉は、食べればその味の違いはすぐに分かってもらえる自信があるという。

Q.きな粉製造で大切にされていることはどんなことでしょうか?
きな粉は、香り、風味、甘味が多い大豆を見つけることが重要です。煎り方や挽き方など用途に合わせています。利用用途によって焙煎や粉砕の粗さをひとつ一つ変えているので、業務用のきな粉の種類はおよそ60種類以上あるんです。例えばある和菓子職人から「きめ細かくて香りが強いのが欲しい」という要望があればそれに応えるなど、取引先の様々な要望に丁寧に応えています。


約60種類以上というのは驚く数だ。フレーバーを加えたり、砂糖を加えているわけではない。きな粉そのものの種類なのである。
生産地によってその特性が変わる大豆は、北海道大豆、丹波黒大豆、また、他の国内の大豆であればどの品種を扱うか等、求められているきな粉に合う品種の大豆を買い付けている。国産大豆と輸入大豆の両方を取り扱い、長年の経験で導き出された独自の選定をしている。
例えばだんごや餅にまぶす、きな粉は水分を吸ってもきれいにみえるように浅めの焙煎で白っぽく仕上げ、わらびもちに使うきな粉は、砂糖とまぜたときに舌触りがいいように粗めの粉砕で仕上げる。またドリンク用のきな粉は、焙煎後皮をむいてから粉砕する事でなめらかで溶けやすいものにしている。
加えて、きな粉のおいしさを引き出す重要な工程が独自の煎り方である。一粒一粒を空中に躍らせながら煎り上げる熱風焙煎方式を採用。

熱風焙煎方式というのは、風で煎るんです。鉄鍋で煎るとどうしても鉄鍋にあたる部分と当たらない部分では差が出てしまいますが、熱風焙煎は、均一にむらなく炒ることができるのです。


このように、業務用のきな粉を約60種類以上も製造しているメーカーは他に類を見ない。
食のプロが求めるきな粉にきめ細かく対応してきたかが分かる。

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『赤』の唐辛子、『青』の青のり、そして「七味の日」


向井珍味堂の30%の売上を占めているのが、唐辛子、香辛料等の『赤』である。
唐辛子は品種によって大きさや辛さも様々であるが、甘口の中国産唐辛子、小粒の軸付き国産唐辛子など、多品目の原料を使用し、用途や要望に合わせた製品づくりをしている。
長年、向井珍味堂の七味を愛用し続けているそば屋、一味を愛用している担々麺店やラーメン店は、全国にある。

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辛味を抑え、山椒とごまの香りを大切にした関西風の「薄味のおだし」に合う七味、和歌山県産ぶどう山椒を中心に調合した山椒が際立つ国産七味等、これらはすべて職人が手で混ぜ合わせているのだという。手仕事でなければ、均一に混ざり合わないからである。
この手作り七味の風味のよさや味わい深さは、他社の追従を許さないと言える。

ちなみに7月3日は「七味の日」だ。
「しち(7)み(3)」(七味)と読む語呂合わせから、向井珍味堂が2010年に制定 した。


『青』の青のりは、昔は浜買いと呼ばれ、生産者から直接仕入れる方法を取っていた。天然ものの減少もあり、現在は良質な養殖の青のりを仕入れている。生産工程においては、色彩選別機を導入し、用途に合わせて選別。異物の混入には特に注意を払い、最新の装置を用い徹底した排除に努めている。

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市販用新市場にチャレンジ!隠れたブランド力を広く消費者へ


長年にわたり業務用で築き上げた信頼を強みに、2020年から新市場として一般的な商店や店舗などで購入できる市販用にチャレンジし、順調に売上げを伸ばしている。主に高級スーパーを中心に販売されているが、ネットでも購入することが可能である。

業務用の業界では向井珍味堂の名前が通っていても、なかなか一般の方に知ってもらえなかったんです。市販用商品の拡大、販売に力を入れることでブランド力の向上をめざしています。他社に比べ、高価格帯にはなりますが品質にはかなり自信を持っています。


プロが長年愛用し続けている商品であり、創業以来追求し続けてきた原料、品質、丁寧な製造法の『赤』『青』『黄』の商品は、どれも買って使ってもらえれば、その良さがわかってもらえるものばかりだ。

和菓子職人ご用達の「京きな粉」は国産大豆100%で香り高く濃いめの焙煎で、兵庫県丹波篠山市で契約栽培している 丹波黒100%使用した「丹波篠山黒豆きな粉」、女性の声から生まれた有機大豆、有機黒ごまを使用した「有機黒ごまきな粉」、すべて国産原料を使用した国産七味缶、国産一味缶等と市販用商品を次々と投入している。
市販商品を充実させることで、逆にまだ取引の無い業者にスーパーで目にしてもらう機会も増え、業務用の販売拡大にもつながるという。

またSNSも積極的に活用しており、多数の芸能人に紹介されるなど新たな販路も広がっている。
ブランド力が向上すれば「向井珍味堂のきな粉使用のソフトクリーム」「向井珍味堂のきな粉使用のわらび餅」「向井珍味堂の七味使用の焼きそば」というように、商品価値を高めるために向井珍味堂の名前をブランドに使用してもらえるようになればと考えている。

天然の素材を使った風味・品質・安全性の三拍子が揃い、食のプロが長年認めた商品の風味や香りの良さは、一度食べたらきっと誰かに伝えたくなるに違いない。一度ご賞味あれ!

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株式会社向井珍味堂
本社:大阪市平野区加美西1丁目12番18号
オフィシャルサイト:https://mukai-utc.co.jp/



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