袋製造一筋でやってきた企業が、新たな価値を創造。追求し続ける<袋に秘められた更なる可能性>



株式会社ドゥパック阪和 / 代表取締役 堂野眞宏 氏・株式会社シェルパック / 代表取締役 堂野眞宏 氏・堂野起佐 氏



大阪市平野区に事業所を構える株式会社ドゥパック阪和は、長年、米やお菓子などの食品向けのラミネート袋を製造・販売してきた「袋」づくりのプロフェッショナルだ。
その知見を生かして、より付加価値の高い自社商品を企画・開発して顧客に提案していくため、代表取締役の堂野眞宏氏は2018年、子会社として株式会社シェルパックを立ち上げた。

当初は思うように売上が伸びず、続くコロナ禍の影響も受けて苦しんだが、娘の起佐氏がドゥパック阪和に入社し、シェルパックの事業に携わるようになって、明るい兆しが出てきた。
起佐氏は、基本的に使い捨てとなってしまう食品用の袋をなんとか活用したいという思いで、素朴であたたかみのあるクラフト紙(※1)を使った、他の人に中身を見られることなく安心して捨てることのできるサニタリーバッグを企画し、「シェルパックサニー」として商品化させた。
(※1)クラフト紙:長繊維パルプを原料として作られた紙で、強度や耐久性に優れている。包装や袋などの用途に幅広く使用されている。

起佐氏の前職時代の営業経験も生かし、紹介を受けた顧客を一件一件地道に回り、今や袋のことはもちろん、袋以外のさまざまな相談も受けるようになっている。
袋と向き合い、シェルパックから生まれる袋の持つ可能性に挑戦し続ける二人に話を伺った。

袋製造一筋でやってきた企業が、新たな価値を創造。追求し続ける<袋に秘められた更なる可能性>


袋に込めた思いが、老舗ホテルを動かす


袋製造一筋でやってきた企業が、新たな価値を創造。追求し続ける<袋に秘められた更なる可能性>

シェルパックを立ち上げた当初は、ドゥパック阪和の代表取締役である眞宏社長が代表を兼務し、高機能衣類圧縮袋を扱っていたが、コロナ禍の影響による落ち込みがあった。

そんな中、娘の堂野起佐氏がドゥパック阪和に入社する。
起佐氏は大学を卒業後、検査機のメーカーに入り、大手メーカーの生産ラインに検査機を導入する営業に携わっていた。
社会に出て3年が経ち、起佐氏の方から家業に入ることを申し出たという。

入社して「何から始めよう」と考えながら、「新会社のシェルパックでは、どんなことをしてるんだろう?」と思って聞いてみたら、「好きなことをしてみろ」という返事だった(笑)。すぐに「これは何とかしないと」という思いを持ちました。

こうして、起佐氏はシェルパックの新商品開発に乗り出した。
丈夫で繰り返し使える自社の袋に愛着を持っていましたが、食品袋は基準が厳しいため使い捨てが原則で、十分使える袋でもゴミになってしまうという現実がもったいないと感じていました。食品以外の分野でそういう廃材にもう一度命を吹き込めないかと、規格外の袋を利用することから考え始めました。


社内の若手女性デザイナーがSNSで情報収集した世の中のニーズもヒントになり、女性やおむつをしている高齢の方などに利用してもらえるように、素朴で温かみのあるクラフト紙を使って中身が見えないようにした、チャック付きでニオイが漏れないサニタリーバッグというアイディアが練り上がった。

ただ、商品化までの道のりは平坦ではなかった。
最初に父と一緒に商談に行った某ホテルでは、提案を聞いた途端に「必要ない」と一蹴されました。
それで「なんとか商品化したい」と父の心にも火がついたのだと思います。その数日後には、別の老舗ホテルとの商談をセッティングしてくれました。

その老舗ホテルでは、女性の総支配人が話に共感してくれた。
宿泊されるお客さんが処分に困った汚物をトイレに流して詰まらせてしまうといった課題を抱えていらっしゃったようで、その辺りが我々の思いと重なったのだと思います。

それから、そのホテルと共同で商品づくりが始まり、試作を繰り返してサイズやデザインなどを決定し、2023年7月からサニタリーバッグ『シェルパックサニー』として、そのホテルで設置されることになった。

袋製造一筋でやってきた企業が、新たな価値を創造。追求し続ける<袋に秘められた更なる可能性>

数字は後からついてくる。社員に求める、自主独立の精神


眞宏氏はもともと、シップ薬などの医薬品の包材を販売する会社に勤めていた。
眞宏氏の父も紙袋に関連する仕事に携わっていて、一族で袋との縁が深い。
会社員ではなかなかやりたいことができない、自分のやりたいパッケージを手掛けたいという思いで眞宏氏は独立を決意。独立当初は無我夢中だったが、振り返れば、その時より今の方が大変かもしれないという。
『創業は易く守成は難し』と言いますが、その通りです。創業時は無我夢中で楽しい面もありました。今の方が苦労しているかもしれません。事業が、少し落ち着いてくると、色んな問題が発生してきます。特にコロナの頃は、資金の問題、人材の問題など色々、大変でした。


そんな眞宏氏が社員に求めるものは。
これまで長く経営を経験してきて大事だと感じていることは、各人が自主独立の精神を持ってやっていくということです。社員には、他人の力を借りずにやっていける精神的な力を付けていってもらいたいです。そうなれれば、売上は後から付いてくるものです。


袋製造一筋でやってきた企業が、新たな価値を創造。追求し続ける<袋に秘められた更なる可能性>

顧客から頼りにされ、袋以外のアドバイザーに


眞宏氏の期待に応えるように、起佐氏は、顧客を一件一件訪問するなどして、販路を切り開いている。
主力の衣類圧縮袋の方はHPからの問い合わせが多いとのこと。選ばれているのは、用途や目的に合わせてさまざまなフィルムを貼り合わせてつくられるラミネート袋のクオリティの高さから。
中に入れるモノとの接触面積を少なくしてスムーズな出し入れを可能にするエンボス加工(※2)と、逆流を防いで空気を抜きやすくする逆止弁(※3 )との組み合わせで実用新案を取得している点も大きな強み。
(※2 )エンボス加工 : 素材に凹凸をつける加工技術。
(※3) 逆止弁 : 袋内部の空気を抜く際に空気が逆流しないようにする構造の弁。


最近は、アパレル関係の顧客からの問い合わせが多いという。
例えば袋にTシャツを入れてセットにして販売したいといったご要望です。
『袋の中で服がキュッと締まっている感覚がかっこいい!』と、お問い合わせの際に皆さん口を揃えておっしゃいます。
と起佐氏。

圧縮袋はTV通販や店舗販売するものというのが普通の感覚のところ、企業を訪問して積極的に紹介していることも新鮮に受けとめられているようだ。
圧縮袋の営業をされることってまずないですよね(笑)。「弊社の圧縮袋を使ってノベルティグッズをつくりませんか?」とお声掛けさせていただくと、「圧縮袋で販促品? 初めて聞いた」と一度は話を聞いてもらえます。


さらに、袋以外のことも相談されるようになってきている。
「飴ちゃん作れる?」とか、「スリッパはないの?」とか、袋に入れる中身の相談まで受けるようになりました。
依頼を受けて探してみると、意外と近くに業者のツテがあったりして、できることもあるので、まずは積極的にお話を伺うようにしています。

そんな起佐氏は眞宏氏と共同代表として、2023年、株式会社シェルパックの代表取締役に就任している。
顧客層や役割が違うドゥパック阪和とシェルパックが、相乗効果で袋の持つ可能性をどう広げていくか、今後の展開も楽しみだ。



袋製造一筋でやってきた企業が、新たな価値を創造。追求し続ける<袋に秘められた更なる可能性>


株式会社シェルパック・株式会社ドゥパック阪和
本社:大阪市平野区加美北1-22-6
ドゥパック阪和サイト:https://www.do-pack.co.jp/
シェルパックサイト:https://www.sherpack.jp/









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