「ものづくりの進化に、金網あり!」 一貫生産で日本初、世界初を創造し続ける特殊金網メーカー
株式会社八尾金網製作所 / 代表取締役 山上昌宏 氏
手首から放つクモの糸に身をゆだね、ビルとビルとの合間をぬって人々を救う世界的ヒーローと言えば、そう、あのヒーローだ!
ヒーローが身をゆだねるクモの糸のように強靱で高機能な線が現実に生産されているのをご存知だろうか。
その技術に一役買っているのが、株式会社八尾金網製作所である。
今、大注目を浴びている新素材である。その新素材の開発に八尾金属製作所のメッシュフィルターが使用されているのだ。
超極細の金網フィルターで目に見えない異物を取り除くこのメッシュフィルターは、革命的なものづくりの下支えしている。まさしくあらゆる産業の縁の下の力持ちの役割を果たしている。
オンリーワンの200年企業をめざしている株式会社八尾金網製作所の代表取締役 山上昌宏氏に話を伺った。
100年以上にわたる「製網技術」が支える "Made in JAPAN"
八尾金網製作所は、名前の通り金網をつくるメーカーである。創業以来100年以上にわたり製網技術をとことん追求してきた国内では数少ない、素材から製品まで一貫生産できる特殊金網メーカーである。
Q.創業当時はどんな金網を製作されていたのでしょうか?
祖父が大正時代に創業した当時は、大阪なんばの道具屋筋で裏こし器をつくっていました。今とずいぶん違うように思われるかもしれませんが、今のメッシュフィルターもほぼ手作業が多いんです。細いものを櫛の中に通していく作業は全部、職人がやっています。職人がやるからこそ高度な技術のものができるのです。
山上氏は、幼い頃から、ものづくりに携わる職人の背中を見て育ったが、自営業よりサラリーマンのほうが生活が安定していると思い、大学卒業後大手保険会社に入社し、10年間勤めた。
Q.会社を継ごうと決めたきっかけはなんだったのでしょか?
父親から『やっぱり後を継いでくれ』と言われまして、改めて自社の製品を見たら、高い技術がなければできないものばかりなので『これはすごい、後世に残していかないと』と思い、継ぐことを決意しました。
魚を焼く網も金網なら、料理の裏ごし器も金網。しかし八尾金網製作所が製造しているのは、目に見えない大きさの異物を取り除く超極細の、ろ過フィルター「ファインメッシュ」である。
線径0.015ミリの超極細線で空間5μ ミクロン(※)の超極細の、髪の毛より細い金属線を織り、まるでシルクのような手触りに織り上げる。
(※)μ ミクロン:長さの単位で、 1ミクロンは1ミリメートルの1000分の1になる。
Q.「ファインメッシュ」は、どのような製品づくりに使用されているのでしょうか?
原料をろ過するためにフィルターが必要な業界の幅は広くて、ほとんどの業種が関係します。薬品や飲料、食品などの製造ラインで異物が入ってはまずい。みなさんが着ている吸湿発熱性素材や化学繊維、カーペット、車のエアバック、シートベルトなどもそうです。様々な商品の製造過程で必ず原料をろ過するためにフィルターが使用されています。
ニッチな産業なので多くの量の発注はでませんが、安全性を求められる高品質な製品づくりで支えています。
目に見えないミクロン単位の不純物を取り除く高精度フィルターは、世界で活躍しているあらゆる"Made in JAPAN"のものづくり企業の技術力を支える、無くてはならない存在である。一人前の職人になるのに10年ほどかかるという。
「匠の技術」をものづくりに生かし、その技術をデータ化し、すべてのスタッフが活用できるものにする「技術の標準化」が必要である。
更なる品質向上や生産性アップを実現するため、山上氏は常に技術革新のチャレンジをし続けている。
そのひとつに、バーチャル上で金網やフィルターのろ過精度を測定するシミュレーションソフトを筑波大学と共同開発した。
これは、国内では珍しい金網の3D シュミレーションソフトである。
金網を編むだけでなく、その金網でどのようにろ過できるかを正確に割り出すことが出来る優れた精度のものだ。
このソフトによって、製品のろ過精度を瞬時に判断することができるようになり、ろ過テストにかかるコストと時間の大幅な削減ができるようになった。
10年ほど前に筑波大学でろ過精度を測定するシミュレーションソフトを途中まで出来ているが頓挫した状態になっているという新聞記事を読んで、自ら筑波大学に出向き実現しました。
高度な職人技が織る、世界初規格
八尾金網製作所は求められるものに確実に応えていき、進化し続けてきた。
山上氏は、今までに3回の転機があったという。
1回目の転機は、祖父の時代の事に成ります。
第二次世界大戦後 合成繊維の工業化は衣料・産業用資材の生産の大幅増産に対応し、日本の復興・高度成長を支えることに成ります。
この合成繊維の原料濾過には、当時最も細い線と言われた35ミクロンの極細線を使用する金網が必要でした。
弊社はこの金網の製品化に成功し、飛躍のきっかけを掴みます。
以降、弊社は極細線金網の専業メーカーとして事業を展開していきます。
チタン100の拡大画像。難易度の高いチタンを世界ではじめての製造規格となる
2回目の転機は、焼結金網(しょうけつかなあみ)である。
父の時代のことです。昭和50年代に入った頃に、アメリカで開発されたすごく強力なフィルターがあったんです。戦車が砂漠を走るときにゴミが入ってもへたらないフィルターをつくる必要があり、生まれた金網、それが焼結金網です。
ステンレス金網を何枚も重ね合わせることで板状にされた金網です。それを日本でも製造開始されたときに、我々の金網が採用されました。
これが2回目の大きな転機です。
そして、最近、新たな転機が訪れた。
加工技術領域の獲得が、ソリューション型企業へ進化
3回目の転機は、金属加工を始めたことです。我々は金網という生地を作り、その生地をフィルターとして使用してもらっているわけですが、顧客が金属加工の部門を辞められるということで、設備全体を我々が引き継ぎました。
自社内で新たに加工技術領域を得ましたので、顧客企業の困りごとを解決する範囲まで事業領域が広がりました。
Q.今までに顧客企業のどんな困りごとを解決されたのでしょうか?
例えば製品を洗浄するためのバスケット(かご)が重いので軽量化してほしいという相談を受けて、ご希望通りに軽くしました。女性社員が日々重いバスケット(かご)を持って繰り返し洗浄する作業は大変重労働なものです。それが劇的に改善され、作業効率が高まり、顧客企業さまから大変感謝されました。
製造過程での品質向上と安全性、更には効率化を図るにはさまざまな課題を解決する必要があるが、金網という分野で金網づくりから最終商品である加工品までを「一貫生産」できるからこそ、顧客企業の課題解決に貢献できるのだ。
ものづくりの進化があるところには、金網があり、金網なしではものづくりが進化できないと言っても過言ではない。
次の200年企業をめざす八尾金属製作所の今後がますます楽しみである。
株式会社八尾金網製作所
本社:八尾市跡部北の町3丁目3-15
オフィシャルサイト:https://www.yaokanaami.co.jp/
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