2025年04月10日 10:00
私の父親は繊維やプラスチックの射出成型の会社などを経営していました。私も大学を出てから父の会社で働いていたのですが、37歳のときに突然『あなたは独立して、なにか別の事業をしなさい』と言われたんです
当時、肉の内蔵のことは、まったくわからなかったんです。だから、父親と同年代で焼肉屋さんをやっておられる方たちに教えを請いにいったり、とにかく無我夢中でやっていました
最初牛の残った部位は内蔵を取り扱う業者に、卸値で安くまとめて引き取ってもらっていました。でもそれなら自分で焼肉店をやって、そこでその部位を出したらいいのではないかと考えたんです。そうすれば必ず、安くて美味しいものが提供できますから。ちょうどその時にマルビル近くの物件が立ち退きになったので、曽根崎で焼肉店を始めました
もともと卸で残る部位なので、当時1人前は300円くらい。その量は150~200gくらいか、もっとあったと思うんです。正確に測らなかったのでわからないんですけど(笑)。1人前の量を多くすることで、普通のお店の倍くらいの量の瓶ビールが出るんですよ。ビールはセルフでお客さんに抜いてもらって、30坪くらいの店やのに1日で250本くらいは出ていましたから。ビール会社の人が来られて、腰を抜かしていました(笑)
お金はいらないから、ここで働かせてくれ。ノウハウを教えてほしいという人が、ずいぶん来られましてね。私は『それどころじゃない、忙しいから』と断っていたんです。 そんなときに大手企業のある方から、これフランチャイズで展開したらどうですかと言われたんです。最初はその企業の宣伝みたいな方向だったのですが、その彼が会社を退職してうちに入社しまして、そこから本格的にフランチャイズ化が始まり、店舗経営の始め方や運営、経営のノウハウを指導をするようになりました
元々出店資金の借り入れが困難で、保証人なしで300万円まで融資が受けられて、審査も比較的通りやすい国金(日本政策金融公庫)にも断られた方ですが、うちでFC店を開業し、家を建てた方や、そのように成功して毎年、盆暮れに感謝のお電話をいただく方もおられます
残念ながら、みなさん全員が成功するわけではないんですよね。私としては関わったからには、みんなに成功してほしい。でも、そうならなかった方もおられます。それを考えると、接客や盛り付け、料理の出し方など、より細かなところまでしっかりと教えられるカリキュラムを作って、もっとフォローをして成功に繫げられなかったのかと、反省のほうが大きく心に残っています
牛一頭をむだなく使うべく焼肉店をやっていても、正直まだ余る部位が出てくるんです。たとえば、マルチョウと呼ばれる小腸なんかがそうですね。これを油で揚げて“かす”にする業者もあって、そこに卸すこともできますが、それでは大した利益にはならない。大阪にはかすうどんの文化があります。だったら自分のところでうどん店を作って、小腸を使ったホルモンうどんを出したらいいのではないかと思ったんです。同じように余りがちなすじ肉も、牛すじうどんとして出しました。おかげさまで、『手打ちうどん がんちゃん』も利益を出せています。今は直営で焼肉店舗が3店舗とうどん店が2店舗ありますが、食材のロスがまったくなく、環境にも優しい、すごくいい状態になっていますね
以前はガスコンロで肉を焼くと、ガスの匂いが肉についてしまっていたんです。でも最近は、そういうこともなくなった。またこれまでうちでは七輪と炭火でしたが、時代とともに煙と匂いを敬遠されるお客様が増えてきました。そんな要望に合わせて炭火から煙と匂いを吸い込む無煙のやり方に切り替えていこうと、曽根崎の本店で試しています。それと同時に単価は上がりますが、最高級の黒毛和牛の内臓を提供して、お客様の満足度を高めていく取り組みをしています。生まれ変わってというより、今までやってきたことを伸ばしていきたいという思いです