雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける

株式会社松よし人形 / 代表取締役社長 小出道子 氏

平安時代に貴族の間で始まったとされている雛人形。桃の節句に飾りつけをし、子どもたちの健やかな成長を願うという日本の素晴らしい文化を、長きにわたり伝え続けています。『人形工房 松寿(しょうじゅ)』は、そんな伝統文化を重んじながら今もなお、雛人形を作り続けている老舗工房。枠にとらわれない人形づくりに情熱を注ぎ続け、人形たちの新たな可能性を広げています。
今回は、我が子のように愛情を注ぎながら人形づくりを続けてきた代表の小出道子氏に、人形にかける想いとこれからの展望を伺いました。

雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける


1960年、先代の小出愛が開店した『人形工房 松寿』。その後1963年に代表取締役会長・小出松寿が店を継ぎ、今に至ります。
創業60年、手作りの雛人形を製作しています。雛人形だけでなく、市松人形や球体関節人形など、伝統的な人形から今流行りのものまで展開しています。
お雛様は頭を作る頭師(かしらし)、頭に髪を植える髪付師(かみつけし)、などなど分業で行い、工場や在宅で作業をしています。顔立も様々あり、松寿だけが取り扱っている顔を頭師さんに描いてもらっているので、切れ長の目をした顔立ちとふっくらとした優しそうな顔立ちから選んでいただけます。
お雛様、お内裏様の対は年間数千組製作しています。生産規模は西日本トップクラスですね。


雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける


長年培われた熟練の技術とこだわり


じっくりと人形たちを眺めていると、人形一体一体に込められた愛情とこだわりがひしひしと伝わってきます。

人形の衣裳は、生地や色を選び、柄がどのように見えるかまで細部にわたって調整をして縫製をします。縫製は、縫い目が見えないようにするのはもちろん、生地同士のズレがなく、模様同士の距離感が同じになるようにしています。
衣裳には、ベトナム刺繍やイタリアンジャガードなど海外の生地も使います。フランスやブラジルの生地もありますね。特にイタリアは、ひとつのはた織り機に一人のデザイナーがいると言われるくらいデザイン性豊かな生地が豊富。なので、その中から色々と選んでいます。



大阪だからできる伝統品の枠を超えたチャレンジ


お雛様が纏(まと)う、生地や柄が美しい衣裳。この衣裳にはスワロフスキー(※)が散りばめられ、昔は考えられなかったようなきらびやかな進化を遂げています。
※スワロフスキー:1895年、オーストリアのチロル地方で創業したクリスタルのプレミアムブランド。

スワロフスキーは10年以上前から衣裳に付けられています。会長は反対することもなく、面白い!って。やるからには本格的にやろう、とすぐにスワロフスキー・ジャパンの本社に行き、正式に許可をもらい商品化しました。衣裳と同色やスモーキーな色を使って静かに光るように工夫しています。
頭を柔らかくし、いろいろとチャレンジしていますよ。大阪だからチャレンジしやすい部分もありますね。振り幅の大きい変わったデザインや新しい素材など、毎年新しい衣裳を展開しています。


雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける


可憐でお上品な『あや』


熟練の技術を誇る人形工房 松寿が新たに生み出した『あや』は、硬質プラスチックと軟質ソフトビニールを併用した球体関節人形です。ふっくらしたほっぺたにさらりとしたお肌の愛され顔。服の着せ替えやウイッグの変更など、様々なカスタマイズが楽しめます。

雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける


こんな顔がいい、こんなスタイルがいい、と話し合って原型師にお願いし、やり取りを重ねて生み出しました。本体だけでなく、着ている衣裳も細部までこだわって作っています。袖はギャザーを寄せて立体的になるようにして…仕立てから縫製まで厳しいチェックをして、こだわりの品質に仕上げています。
女性の根底にある、『綺麗』や『可愛い』を共有できる思いが人形にはあると思っていて。その思いを共有する役割を果たしてくれたらいいですね。



相手を祝う気持ちが絶えないように…


現在では、修学旅行生の工房見学やつまみ細工のワークショップ開催など、若い世代への文化継承にも貢献しています。人形づくりや日本文化と触れ合うことで、心の余裕や愛でる気持ちが養われる、と柔らかな笑顔で道子様はおっしゃいます。

雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける


海外にも広げていきたいですね。もちろん、人形のことを知ってもらいたいという思いもありますが、海外に誇れる文化や技術があるんだ、と日本人が気付けるきっかけにもなります。自分が生まれ育った国を改めて好きになる、分かりやすい働きかけになりますよね。
そして雛人形は、人のために祝う、一緒に祝う、といった相手を想う行事です。小さい頃に祝ってもらった思い出は、ずっと心に残り継承していきます。この思い出が絶えることなく続くように、年代を超えておじいちゃんおばあちゃんと語り合うきっかけを作れるように、これからも人形を作り続けていきたいですね。


雛人形から、尾山人形、市松人形まで。ライフスタイルに合わせた人形づくりで文化と人を温かく繋ぎ続ける


時代が変わっても、受け継がれてきた文化や心の根底に根付く想いは変わりません。これからも、人形を通して文化と人を温かく繋ぎ続ける…そんな未来図が描けた取材でした。

 
人形工房 松寿(しょうじゅ)/株式会社松よし人形
本社:〒577-0843 大阪府東大阪市荒川1-10-4
オフィシャルサイト:https://matsuyoshi-doll.co.jp/


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