「誰かのために」という想いで、石材を常に面白くする革新企業
大阪石材工業株式会社 / 代表取締役 伯井(はくい)守 氏
墓石の製作、施工、アフターサービスまですべてのプロセスを自社で一貫して行っている全国でも数少ない石材企業がある。
東大阪市に本社を置く大阪石材工業株式会社である。
墓じまい、墓リフォーム、墓の文字彫り、墓石の設計、建立、墓参り代行や墓そうじ代行サービスまで一貫したサービスを請け負っている。
大阪府下に7店舗、兵庫県内に1店舗の支店を持ち、本社近くにあるお墓の展示館「ストーンブティック」では、デザイン墓石を始め和風墓石、石のサンプル品などが展示されており、誰でも予約なしで気軽に見ることができる。(蔵書も凄い!)
売り上げの9割は「墓石」が占めているが、エクステリアや神社の石材建築、モニュメントなど石材を用いたあらゆる商品を扱い、石の可能性を日々拡げている。
1977年の創業以来、<誰かのために>という思いを第一に考えているという、代表取締役 伯井(はくい) 守氏に話を伺った。

日本初!スーパーマーケットで墓石の店頭販売
古いしきたりの残る石材業界に、1977年にわずか3名で石材店を始めた伯井氏。
それまでの仕事は石材とはまったく別の業種のサラリーマンだった。
石材店を創業されたきっかけは何だったのだろうか。
27歳くらいの時に勤めていた会社が倒産したんです。その頃、師事していた理論物理学者の小田切瑞穂先生の勉強会に参加していた時に、愛媛県の大島石(※1)を全国に普及しようとしている方から、「一緒にしないか」と誘われたのがきっかけです。
(※1)大島石:愛媛県今治市伊予大島から産出する白系花崗岩。硬質で整った石目が特徴。風化に強く、磨くほどに味わいが増す。主に墓石材として使用され、記念碑、モニュメント、建築材などとしても幅広く使用されている。
こうして、大島石の出会いがきっかけとなり、伯井氏は、1977年に大阪石材工業株式会社を設立した。
それまではまだ重い石を運ぶ技術が発達していなかったが、この頃にはクレーン車が登場し、トラック輸送が発達し始めた頃である。
昔ながらの風習が残る石材業界では、新参者はなかなか参入しづらい状況だったというが、最初から伯井氏は、石材業界の常識を覆すような手法で販売を始めた。
空き地を借りてそこにいろんな墓石を並べたんです。当時は、石材店では価格表示はなかったんですが、価格もオープンにしました。当時、スーパーマーケットなどの量販店全盛の時期で、そこのお客さんは値札の付いた商品を見て、自分の好きなものを選んで買っていました。墓石も同様に、価格を表示して好きなものを選んでもらいたいと考えたんです。
その後、空き地がどんどん店舗などに変わり始め、空き地は無くなっていった。
そこで、伯井氏が目を付けたのがスーパーマーケットそのものだった。
スーパーマーケット(以下スーパー)に飛び込みで営業しましたがずいぶん断られました。ですが、運のいいことに、私の会社の隣のスーパーマ―ケットの方がよく私の事務所に顔を出してて、その方は何と大手スーパーの副社長の側近だったんです。
早速私は副社長に墓石販売の話で繋げて欲しいとお願いしました。
その結果、大手スーパーの副社長は伯井氏に「その発想はおもしろい!一層、全店でやればいい」と承諾してくれることになる。
伯井氏は、スーパーの入り口に墓石を並べ、遂には紅白横断幕を付けスーパーのお客様に目立たせ、わかりやすく展示。
石材業界ではありえなかったことを次々に実行していく。
買い物に来たお客様は買い物ついでに、価格表示のある墓石を自由に見て、気軽にヒアリングでき、購入できる。
スーパーでの展示販売は非常に喜ばれた。
「石材の流通革命をしよう!」それにはコスト削減していくことが大事だという伯井氏の考え方は時代に合致し、最低でも1店舗で350万円程度の売上があった。この数字は通常の石材屋の遥か上をいく売上だった。
前例のない販売形態は石材業界の風当たりも相当強かったそうだが、伯井氏は石材業界の常識を覆していき、一般のお客様へわかりやすく価格を提示したり、顧客目線での対応するなど、今までの不透明な石材業界に革命を起こそうとますます奮闘していく。

お墓作りが楽しくなる展示館
米国No.1企業の立体彫刻技法「ファントーニ」との出会い
大阪石材工業の大きな強みになっているのが、デザイン墓石などに使用されている立体彫刻技法「ファントーニ」(※2)である。この彫刻技術は石の持つ自然な色彩を引き出し、濃淡を表現できる彫刻技法のため、塗料などを使用する必要がなく、色あせする事もほとんどないという。
(※2)立体彫刻技法「ファントーニ」:ファントーニの名前は、総合石材会社ロック・オブ・エイジズ社の誇る彫刻家アルチーデ・ファントーニ氏に由来。イタリア出身の卓越した彫刻技術と芸術家の魂を持ったアーティスト。奥行きを出して陰影をつけた立体的な彫刻技術となる。
大阪石材工業は、関西唯一の「ファントー二」ライセンスを持つ正規店である。
この技術に出会った伯井氏は、ぜひ日本でも使いたいと考え、米国No.1の石材会社「ロック・オブ・エイジズ」と技術提携。技術指導を仰ぎ1996年に本社工場で加工を始めた。
従来の技法では困難だった狭い箇所への深い彫刻も加工に用いる砂を噴射するノズルの形状を改良するなどし、狭い箇所での深い彫刻を実現し、立体的な彫刻や特殊な模様も彫刻できるようになった。
立体彫刻技術「ファントーニ」は、花をあしらう等、オリジナルな墓石を作りたいという方に好評を得る。
また、モニュメント製作にもその技術が活かされ、仕事の幅が広がっている。
他にも電気を使わず、音の反響を利用し、自然の力だけで奏でるオーダーメイドスピーカー。エコな「Echo」を製作する等、石の可能性を拡大させている。

捨てられる石に光を当てたSDGsなお墓「re産(り・うぶ)」
伯井氏は、SDGs活動にも積極的に取り組んでいる。
石材の品質は木材と同様に正目が最も良いとされ、採石場で切り出しても、墓になる石材は全体の3~5%とかなり少ない。
高級銘柄であれば、採石された石の1%しか墓石に使えないのが現状だ。
日本の石材使用量は、ピーク時120万トンと言われたが、外国産墓石の台頭等により、現在は30万トンに減少したと言われている。
このままでは、地場産業としての石材業が空洞化し伝統的な石工の技術が失われる可能性がある。
伯井氏は、そんな現状を打破しようと、従来、墓石として使うことができず土木材などになっていた柄や模様の入った石材を、新しいデザインとして利用し、「re産(り・うぶ)」という名でブランド化し、2022年1月に、富田林市にある大阪石材工業南大阪店で展示するサロンをオープンさせた。
展示サロンには、全国の石材産地(香川県庵治石、愛媛県大島石、佐賀県天山石、岡山県万成石、茨城県真壁石)から、今まで墓石として使用されなかった原石を集め展示し、その模様を個性として捉え、「世界で一つだけの墓」を作るサロンにしている。
ブランド名の「re産(り・うぶ)」には、<re=再び、産=産まれかわる>という意味を込めたそうだ。
自然が生み出す模様を活かすことでオンリーワンの製品にできます。SDGsなお墓を提唱し、根付かせることで日本の石材産地を応援したいので、長期的に取り組んでいきます。
お墓のトータルサービス、そして「墓女(はかじょ)」
他にも墓にかかわるサービスを数多く実施している。インターネットでは、人に聞きづらい供養に関してのあれこれや石材についての知識を常に発信し、新しい情報を更新している。
また、お墓のお掃除代行サービス、お墓の引越しサービス、お墓のリフォームなど、あらゆるお墓のサポートに応じている。
他にも「お墓ディレクター1級」(石材産業協会認定)の社員が案内するお墓の工場見学会、バックヤードツアーを毎月1回開催中だ。
このような革新的な事業展開が企業価値を高め、その事が奏功し、毎年新卒採用を成功に導いている。
その結果2024年時点で社員数はパートを含めると約100人の組織になった。その内約50%は女性というのも驚きだ。
年配の方の話を聞くのには女性がいいんです。うちでは女性社員を「墓女(はかじょ)」と呼んでいます(笑)。

大阪石材のロゴマークは三体のモアイ像だ。
理念でもある<幸福創造カンパニー>として三方良し、利他行(※3)の実践を常に心掛けている伯井氏。
石材業界に国産材の復興を投げかけ、石の持つ可能性を拡げ続けている伯井 守 氏に大いに期待したい。
(※3)利他行(りたぎょう):自分の利益よりも他人の利益を優先する行い。
大阪石材工業株式会社
本社:東大阪市水走 3‐8‐43
オフィシャルサイト:https://www.osaka-sekizai.jp/
社長ブログ:https://hakui-mamoru.net/
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