「できない理由」ではなく「できること」を模索! 前向きに行動し続けることで、ビジネスを活性化させる経営術

株式会社 アーテック / 代表取締役社長 藤原 悦 氏

振り返れば2020年は世界中が新型コロナウイルスに振り回された1年だった。今なお終息のめどは立っておらず、経済活動にも暗い影を落としている。そんな未曾有の状況にあっても「ピンチをチャンスに」切り替えて、売り上げを倍増させた企業もある。それが大阪・八尾市にある教材メーカー、株式会社アーテックだ。今回は同社代表の藤原悦氏に会い、コロナ禍でも業績を伸ばすことができた理由について話を聞いた。
「できない理由」ではなく「できること」を模索! 前向きに行動し続けることで、ビジネスを活性化させる経営術

後発組からの躍進!教具教材のリーディングカンパニーへの軌跡


アーテックの創業は1960年。図工や美術の学校教材専門メーカーとして誕生したが、今では幼児向け知育玩具から、小・中・高・大学および塾で使用する教具・教材まで、幅広い分野の開発・販売を手がけるリーディングカンパニーへ成長した。

初代が会社を興した当時は、競合他社の多くが20億円規模の売り上げ。そこへ後発で参入し生き残っていくには、当然他社と同じ土俵で戦っても勝ち目はないでしょう。一見成熟したマーケットであっても、コストや工程など、改良・改善の余地のある製品が出回っているケースは珍しくありません。そこに着目し、現場のニーズを細かく汲み取りながら、私たちはあえて専門性を持たず、学校教育におけるすべての分野を対象に開発・販売を重ねることで、ありとあらゆる教具教材を手がける随一のメーカーへと成長できたと自負しています。

コロナ禍でも「ピンチはチャンス」のマインドで商機を掴む!


アーテックが開発販売を手掛ける製品は今や10,000点にも及ぶ。今も昔も教具教材が主軸ではあるが、昨年、新型コロナウイルスの感染拡大により、大きな変化が訪れた。転機のきっかけとなったのが不織布マスクをはじめ、手指消毒用アルコールなど医療・介護用品・等の多種多様な衛生製品の製造販売だ。
「できない理由」ではなく「できること」を模索! 前向きに行動し続けることで、ビジネスを活性化させる経営術

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、教育現場の動きもストップ。当然、従来の生産活動も鈍りましたが、それ以上に混乱をきたしたのが、世界的なマスク不足の状況でした。学校の再開も、マスク入荷の目処もいつになるやら・・・。お客様も、私たちも、先行きに不安を感じる日々でした。なんとか現状打破できないかと考えを巡らせていたところ、ある日、社内のこれまでの技術や情報網、仕入れルートなどを活用すれば「不織布マスクが生産できる!」ことに気づいたんです。

世界中がマスクの安定供給を待ち望んでいた折。周囲に「自社で製造可能」だということを告げると噂は瞬く間に広がり、従来の取引先はもちろん、長らく途絶えていた取引先からも注文が殺到した。

倍増した売り上げ。一過性の“特需”で終わらせない「根拠」


マスクが起爆剤となり、史上最高の売り上げを叩き出すことになったアーテック。いわゆる“特需景気”に当たるが、その後も好調を維持している。その根拠について、藤原氏はこう分析する。

マスクが品薄だった当時、私たちが1ヶ月で販売したマスクの数はなんと、1億枚。前年度60億円の売り上げだった同社が、1年後は100億円を超える規模に。もちろん、不織布マスクの製造販売による収益は「特需」でしかないことは重々、承知しています。昨年5月には巷にマスクは溢れるようになり、値段も1/10に下がっています。では、特需が終われば、当社の売り上げも元に戻るのか、と言えばそうではありません。この時の経験を糧に、社内のあらゆる事業部が活性化されたこと、新たな販路開拓につながり、ビジネスチャンスをつかんだことは紛れもない事実です。

「できない理由」ではなく「できること」を模索! 前向きに行動し続けることで、ビジネスを活性化させる経営術

それまで「教具教材」のリーディングカンパニーであった同社は、コロナ禍を境に、持ち前の開発力や調達力を他分野にも生かすことで、「感染対策・衛生製品」さらには「医療・介護用品」「防犯・防災用品」「オフィスサプライ用品」へと多角化に成功。だからコロナ特需が終了した後も、売り上げは好調のまま推移しているのだ。

常に現場のニーズを形にし、さらには事業化して発展・成長し続ける


ただ手を広げただけの「多角化」ならば、長続きしない。アーテックの成功の陰には、これまで教育分野での企画・製造・開発・営業でノウハウを積み上げてきた全事業部の力が集約された「強み」がある。その「強み」がコロナ禍でも活かされた結果となったが、主となる教育事業でも注目したいトピックスはいくつかある。
その1つが、近年注目を集めるICT対応デジタル教材プログラミング教材および教育用ソフトウェアだ。

会社が成長するきっかけは、アイデアを商品や製品といった形にして提供して終わるのではなく「事業化する」ことだと私は思います。世界ではいち早く、デジタルを利用した新しい教育や文化のうねりが起きていますが、残念ながら日本はまだまだ閉鎖的。この分野においては世界的に後進国です。私たちは新興を願い、ユニバーサルロボティクスチャレンジ(URC)の開催に携わってきました。2020年度はコロナ禍で開催できませんでしたが、前年は世界中から1000名の子供達(小・中学生)が参加する国際的なロボット協議会です。ICT教育の裾野を広げる取り組みにも尽力しており、学校や塾、オンライン教育などで活用されるデジタル教材の商品開発にも余念がありません。

「できない理由」ではなく「できること」を模索! 前向きに行動し続けることで、ビジネスを活性化させる経営術

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事業の多角化により、コロナ禍中でも売り上げを伸ばしたアーテックだが、軸足は教育、視線は子どもたちへ温かく注がれている点に変化はない。「子供達に楽しさをきっかけに、学びを大好きになってもらいたい」という企業理念を全うしている。そのために必要なこと、現場で求められていることを素早くキャッチし、具現化し続けている。少子高齢化で縮小傾向にある教育現場にあっても、アーテックは常に現場のニーズに応え、商品開発を行うことで高い支持を得てきた。今回の取材ではその“一端”を如実に垣間見ることができたように思う。

株式会社 アーテック
本社:〒581-0066 大阪府八尾市北亀井町3-2-21
オフィシャルサイト:https://www.artec-kk.co.jp/


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