ライフスタイルをの変化を読み解きつつ こだわりある和の空間を提案したい

谷元フスマ工飾株式会社 / 代表取締役社長 谷元 亨 氏

あなたの住まいに「和室」はありますか?ここ20年で和室が3分の1に減少しているというデータが挙がっているように、日本の家屋から和室は姿を消しつつあります。その要因は、何といってもライフスタイルの欧米化にあるでしょう。そんな逆風の中にありながらも、1946年の創業以来堅調な業績を上げているのが『谷元フスマ工飾』。三代目社長 谷元 亨氏のもと、「間仕切りによる空間価値向上」をコンセプトにフスマや障子・木製建具やアルミ建具・パーテーションなど様々な間仕切りを製造・販売しておられます。谷元氏に和室やフスマに対する想い、フスマがもっと身近に感じられる画期的なオンラインショップ、さらにはインテリアの新ブランドなどについて語っていただきました。
ライフスタイルをの変化を読み解きつつ こだわりある和の空間を提案したい

減り続ける和室。
先代が始めたドアが主力製品に


元来日本の家屋では、フスマや障子、引き戸などの建具が空間を区切る重要な役割を果たしてきました。開け閉めによってパブリックとプライベートの切り替えができるのはもちろん、フスマは用途に応じて取り付けたり外したりすることで間取りを変えることも可能です。しかしライフスタイルの欧米化によって和室は減少。マンションや一戸建ても、新築・築浅の物件はオール洋間の間取りがほとんどで、和室はオプションの一つになっているのが現状です。

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「2000年くらいまでは新築住宅も多く、フスマなど和の建具の需要も多かったんです。それから和室の需要が減っていくのですが、それ以前から先代の父が洋室のドアも手掛けてくれていました。先見の明があったんでしょうね。今では売り上げの7割はそのドアが占めています」

昨今では和室から洋室へのリフォームに携わることも多いそうで、必然的にフスマをドアに替えることになります。谷元氏の考えはこうです。
「フスマ屋でありながら、和室を減らしていると言われることもあります。ですが、格好悪い和室なら無い方が良い。今まであった10のうち7がなくなっても、残った3が今まで以上に格好いい和室であればいいと思い取り組んでいます」


熟練職人を抱えるからこそ作り出される
伝統と革新を兼ね備えた製品たち


 『谷元フスマ工飾』の製品には、伝統的なフスマや障子、格子戸はもちろん、デザイン性や素材などにおいて現代のライフスタイルを考慮した品々が多く見受けられます。例えば、モダンジャパニーズな柄のフスマや数寄戸があるかと思えば、アルミフレームと樹脂パネルによるシャープなデザインの引き戸「アルマジ」、アクリルパネルと和紙パネルをアルミフレーム枠にはめ込んだ和風アルミ建具「和紙戸」もあります。いずれも和洋を問わず空間をお洒落に演出してくれます。

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思わず笑みがこぼれたのは、「猫ちゃん障子」。木製障子なのですが、紙を張っていないので障子の向こうの猫の様子がよく分かるうえ、紙を破られる心配もありません。見事な発想の転換です。

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伝統から革新まで多種多彩な製品を生み出せる理由は、高い技術をもった熟練職人を有しているから。緻密な木材の加工やムラのない紙の貼り合わせなどは、長年フスマや建具を専門としてきた谷元フスマ工飾の強みです。

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 「当社には常勤で上は74歳、下は18歳の職人がいます。毎年、新卒は地元の工科高校から採用をしているので常に下は18歳。74歳の職人が若者に技術を伝授することは大切なことであり、またその姿はとても格好いいです」


オンラインとホームセンターへ
時流を読んだ画期的な販路拡大


 谷元氏は大学卒業後、大手コンピューター関連企業に就職。営業職で充実した日々を送っていました。しかし、自分にはもっと全体が見られる規模の会社が合うのではないかと転職を決意。
「どこかないかなあ?『谷元フスマ工飾』があるじゃないか!と(笑)」
2003年同社に再就職、2008年に3代目社長に就任しました。
「正直当初はバトンを継いだという感じが強かったです。『3代目だからこれをやりたい、あれをやりたい』というよりも、祖父や父が作ったフレームの中で自分にできることをやるという感じです」

気負うことなく、できることを模索した谷元氏は、リフォーム需要を見越して2008年にオンライン販売店舗「和室リフォーム本舗」を開設。こちらは購入者自身がサイズを測り、それを基に一つひとつサイズの違う製品を作り、購入者自身に完成したフスマや建具を取り付けてもらうという内容。工場から直販、さらに職人が現場に出向く必要がないので良質な製品がリーズナブルな価格で手に入るという仕組みです。2017年にはホームセンターへも販路を拡大しました。

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 「開始当初は、フスマのネット販売なんて絶対うまくいくわけないと言われましたが、それが結構注文があるんです。採寸方法は動画で見られるようにしていますし、2種類のアジャスターが付いていて、微調整をできるようにもしています」

 ある研究機関の見通しによると、新設住宅着工戸数はピークを過ぎ、2019年度の88万戸から30年度に63万戸、40年度には41万戸と減少していくといいます。建築ラッシュを見越して起業した祖父、ドアの取り扱いを始めた父と同様、谷元氏にも先見の明がございます。


自分のやりたいことに挑戦。
インテリアブランド「waccara」誕生


 DIYの定着とコロナ禍の巣ごもり需要からでしょうか、オンライン販売とホームセンターの売り上げが全体の1割を占めるように。まだまだ細いながらも新しい1本の柱ができたことで、谷元氏は4月から次の一手を打って出ました。それが和の気配を感じさせるインテリアブランドwaccara ワッカラ」のスタートです。
「もともと和のインテリアが好きなんです。ようやく自身のやりたいことができる状態になってきたので、『よし、やろう』と」

記念すべき第1弾は、デザイナーの鈴木暁久氏によるフスマ紙「hikite」フスマの引き手をモチーフにしたカラフルな水玉が紙面に躍る、大胆かつお洒落なフスマ。フスマの既成概念のない若い層やインテリアに興味津々な女性が注目する新感覚フスマです。
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「マリメッコやミナペルホネンって、一目見ただけで『このブランドだ』って分かりますよね。同じようにこのフスマの図柄も一目見ただけで『waccara』だと認知されるようなものにしていきたいんです。 まずは需要が見込めそうなオンラインで販売を開始します。
さらに、プロダクトデザイナーの三島大世氏による持ち運べる床の間トコノマハニカム」。これは八尾市が主催する「YAOYA PROJECT2020」の企画で、市内企業8社とクリエイターの協創により、それぞれの専門分野を活かしつつデザイン性の高い製品を世界に送りだそうとするもの。「トコノマハニカム」は、熟練の技術で正六角形に木枠を組み、背の部分に京都の黒谷和紙を張ったインテリア。飾り棚として、サイドテーブルとして、和洋どちらの空間にもマッチする逸品です」

ライフスタイルをの変化を読み解きつつ こだわりある和の空間を提案したい

 今後についてまだ詳細は言えませんが、第二・第三の新たな展開に向けて進んでまいります。

と、静かに淡々と語っておられる谷元氏ではございますがその眼差しはすでに次のステージに向けた第一歩を踏み出されてました。


谷元フスマ工飾株式会社
本社:〒581-0815 大阪府八尾市宮町4丁目1-15
オフィシャルサイト:https://t-f-kosyoku.com/


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