コロナ禍で事業承継を果たした旅行会社 2代目社長が目指す会社の方向性と提供価値とは

株式会社国際交流サービス / 代表取締役社長 辻田洋一 氏



新型コロナウイルスによって、移動や対面でのサービスが絡む業界は多大な影響を受けました。旅行業界はまさにその筆頭ともいえるでしょう。海外旅行や外国人が訪れる訪日旅行の取り扱いはほぼゼロに、国内旅行についてもコロナ前と比べると取扱額は前年より7~9割減。
そんな状況下、2021年5月21日に国内外のスタディツアーを手掛ける株式会社国際交流サービスを事業承継した2代目代表取締役社長 辻田洋一氏は次のように語ります。
「こんなときだからこそ、私たちがお客様に対してどんな旅行価値を提供できるのか今までの枠を超えていく必要があると思うんです」

アフターコロナに向けて、現在はオンラインでの活動にも力を入れ、国内だけでなく海外も見据えた辻田氏に事業承継の経緯や2代目として目指す会社の在り方について伺いました。

スタディツアー:個々の旅行者が自由に行う観光旅行とは異なり、企画者側が参加者に伝えたい特別なメッセージがあるツアー。

コロナ禍で事業承継を果たした旅行会社 2代目社長が目指す会社の方向性と提供価値とは

父から学んだ「好きなことに熱中する」仕事の姿勢と海外への関心の高まり


株式会社国際交流サービスは、かつて中国専門旅行社で働いていた先代(辻田氏の父親)の辻田順一氏(現会長)が1989年に独立し創業した旅行会社。
体験型古代旅をクリエイトする」というコンセプトのもと、日本国内および中国をメインとした考古学ツアーを30年に渡って提供し続けてきました。
辻田氏も子供のころから父の仕事を身近に見て育ち、旅行先の下見に付いていく機会も多かったといいます。
「その頃から、父は充実した人生を楽しんでいるように見えました。ある意味、趣味を仕事にできる旅行業ならではの強みかもしれませんね」

その影響もあって海外への関心が高く、大学では外国語学部で中国語を専攻した辻田氏でしたが、いったん家業を継ぐ前に他の企業での勤務経験を積むべきという考えで、東京のメーカーに就職を決めた。その後、香港での勤務経験を経て、2015年に帰国し国際交流サービスに入社しました。
また現場を回る旅行業は、体力的な負担が大きい業種。いつまでも父親だけで会社を回していくのは厳しいだろうとも考え始めました。

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旅行業を手掛ける中で気づく先代と自分の違いとは


まず入社後の辻田氏を待ち受けていたのは、父との知識の差であった。そこで辻田氏は猛勉強を開始。旅行業界についての勉強は、父の背中を見続けた子供時代の蓄積がある分なんとかなりましたが問題は考古学。こちらは別物でした。
「同社のお客様は、博物館でボランティアガイドをされているような根っからの歴史好きが多いんです。そういった方々は、共通の話題で盛り上がってくれる話し相手を求める傾向にあります。さらに旅行のガイドをお願いする先生方はその分野のプロフェッショナル。仕事をお願いする際に、考古学の知識がなくては話も弾まない。元々独立前に考古学関係の機関に対して営業をしていた経験のある父とは違い、なじみのない分野の勉強は大変でした」
と辻田氏は当時を振り返ります。
ただ仕事を覚えていくうちに自分なりの考え方で、先代とのスタンスの違いも新たな強みに見えてくるようになります。
自分でコンテンツを作り、自分で売るのが先代のスタイル。得意な分野を突き詰めていくことに長けた職人気質ともいえます。
一方、辻田氏は自分のことをプロデューサー気質と捉えています。まずはお客様のニーズを拾い上げ、実際の企画に反映させていく。それが自分の詳しくない分野だとしても、見識を持った専門家を探して、コンテンツにすればいい。それが辻田氏の新しいやり方。

コロナ禍で事業承継を果たした旅行会社 2代目社長が目指す会社の方向性と提供価値とは
「父が深く掘り下げていくタイプなら、私は広く拡げていくタイプなんですよね。だからこそ、スタディツアーという基本路線は保ちつつ、新たな試みに挑んでいこうと思いました」

どれだけ年齢を重ねても、知的好奇心をもって探求できる旅。座学ではなく体感で学べる移動教室のような旅。「その軸を変える気はない」と辻田氏は言います。
その中で、先代であればまず企画しなかっただろうというツアーを、辻田氏はゼロから作り上げていきました。

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たとえば、2017年にちくま書房から発売された書籍「縄文とケルト: 辺境の比較考古学」をもとに、海を越えて文化の類似点を発見しに行くケルト考古学ツアーや、メキシコのピラミッド等の遺跡を見に行って日本の宗教観と通じる太陽信仰を学ぶメキシコ考古学ツアーの企画などを実施しました。
通常のツアーとは違い、参加者に対して歴史的な知識をきちんと伝えられる現地オペレーターを発掘する苦労はあるものの、思い入れはひとしおだと辻田氏は語る。
「中国から伝わった漢字がひらがなやカタカナになっていったように、父から引き継いだものを活かしながら自分なりの企業文化を築いていくのが私の仕事だと思っています」

歴史的なスポットを巡る旅行の場合、解説を添える専門家を誰にするかが非常に重要なポイント。そのナビゲーターの顔ぶれにも、辻田氏は新たな風を吹き込みました
例として真言宗のお寺のご住職をお迎えして小豆島の霊場をめぐる「弘法大師ゆかりの地小豆島をめぐる旅」という参拝ツアーを実施しました。
専門家からアイデアを引き出してヒアリングをし、これまでになかった新しいプランを作り上げて従来のツアーとは一味違った商品造成が出来ないか模索中です。


新型コロナがもたらした変化のきっかけと事業承継後の挑戦


旅行業の更新は5年ごと。当初は、次の更新タイミングの2023年に会社を継ぐ予定だった辻田氏だが、2020年2月に先代と話し合い、引き継ぎを2年早めることになった。
事業承継が何の問題もなく上手くいくなんてありえないと辻田氏は言います。
「家を建てるにしても、新築よりリフォームの方が大変なのと同じ。当然苦労はあります。でも、面倒だからと事業継承を考えず先代が築き上げてきたものをつぶすのはもったいない。旅行業登録は認可制で参入障壁がある業種ですし、何より30年も続いてきたビジネスを自分なりにアレンジしながら伸ばしていきたいと思ったんです。それなら飛び込んでチャレンジするしかないですよね」

事業承継の視点からすると、コロナ禍の影響で事業が従来のやり方では通じなくなくなったのは経営的にダメージはあるものの価値観を新たに変化に向けて舵を切るための好機だったと辻田氏は考えます。
社長に就任した後、辻田氏は事業承継専門チャンネルのYouTubeに出演したり、オンライン講演会を開催したりとSNSを有効活用した活動を積極的に行ってきました。2021年7月に北海道・北東北の縄文遺跡群が世界遺産登録された際には、リアルで旅行ができない分「オンライン青森夏祭り」というオンラインイベントで北海道・北東北縄文遺跡群」の世界遺産登録を記念したコーナーにスピーカーの一人として参加しました。

コロナ禍で事業承継を果たした旅行会社 2代目社長が目指す会社の方向性と提供価値とは
「GoToトラベルの反応を見ても、あらためて旅行には需要があるんだと確信をしました。人は変化を好むものです。そして新しい発見を求めて非日常に出かけたくなる人というのは必ずいるんですよね」

旅行に参加することにより「ビフォー・アフターが実感できるような旅」をイメージしながら、アフターコロナに旅行業界は再度伸びていくと辻田氏は見込んでいます。だからこそ、新型コロナが収束した際には趣味を深めるだけにとどまらず、より大きな学びをもってその人の人生観を変えるような旅行を届けたいと辻田氏は考えています。その思いを実現すべく、考古学の枠を超えた新たなアイデア創出のために今日も動き続けている辻田氏。
現在旅のコーディネーターは会長である先代と自分のみですが、いずれは「好きを仕事にしたい!」という熱量のある仲間をさらに増やしていきたいと辻田氏は展望を語った。
「先代が0から1を作ってくれました。だから2代目である私は1を10にするのが使命です。誰もが仕事に熱中できるようなスタイルをいかに作って、会社を回していくか。その仕組み作りがポイントですね」
コロナの最中も挑戦を続ける辻田氏。コロナが明けた先、これから国際交流サービスの新しい展開に目が離せません。

株式会社国際交流サービス
本社:〒541-0057 大阪府大阪市中央区北久宝寺町1-7-16ハイタウン北久宝寺ビル102
オフィシャルサイト:https://kks-kokusai.com/




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