メタバースで<大阪を世界一おもろい都市(まち)>に

株式会社Meta Osaka 代表取締役 毛利英昭 氏

1990年代半ばから普及が始まったインターネットは、今や人々の生活はもちろん、社会においてもなくてはならないインフラである。インターネットが普及する以前と以後では、世界が一変した。そのインターネットの世界に今、次の時代が訪れようとしている。

最近になってメタバースという言葉を見聞きする機会が増えたと感じている人も少なくないだろう。メタバースとは、「インターネット上に構築された三次元の仮想空間」のことを指す。
メタバース空間には現実の世界と同じような街があり、ユーザーは自身の分身であるアバター(※1)を使って空間内でさまざまな体験をしたり、他のユーザーとコミュニケーションをとることができる。
(※1)アバター:デジタル空間におけるユーザーの代理となるキャラクターのことである。

大阪で長らく不動産業を営んでいる代表の毛利英昭氏はメタバースに着目し、2023年9月に別会社の株式会社Meta Osakaを立ち上げた。
設立の経緯を毛利氏が語る。

メタバースで<大阪を世界一おもろい都市(まち)>に

設立の理由は、大きく分けると二つあります。
まず一つ目は、私は不動産業を25年以上やっています。今後はバーチャルの世界も不動産に似たような形で資産になり得る。バーチャル空間のなかでの不動産売買や賃貸など、そういうビジネスが今後もっと本格的になるだろうという点に、すごくチャンスを感じました。


もうひとつは、憂国の思い。

リアルの世界で不動産売買をやっていて、身近なところで海外の企業や富裕層が日本国内の不動産をどんどん買っているのを見ています。バーチャルの世界でも同じようなことが起こると、充分に考えられます。
実際に今、アニメや漫画の著作権など、日本のIP(Intellectual Property / インテレクチュアル・プロパティ=知的財産)も海外に買われているんです。バーチャル世界の大阪を海外から守るために、いち早く着手していかないといけない。そういう思いで立ち上げました。



5億人以上がいるオンラインゲームでのメタバース参入


メタバースに参入するにあたって着目したのは、全世界に5億人以上のユーザーがいるオンラインゲーム「フォートナイト」
無料でプレーできるバトルロイヤルゲームで、アバターのコスチュームやステージ(ゲーム内ではワールドとされる)などがカスタマイズできる柔軟性も人気の秘密。

現在は「フォートナイト」用に、道頓堀界隈などを制作中です。
他社で制作されているところがあるかもしれませんし、海外に先に抑えられる可能性もある。だから我々が先に作って、道頓堀商店街さんや大阪府、大阪市にMeta Osakaのものがオフィシャルだと認めてもらえるバーチャル空間を作りたい。言い方をかえると大阪のIP(知的財産)や歴史や文化を守りたいと思って進めています。


メタバースで<大阪を世界一おもろい都市(まち)>に

「フォートナイト」の世界に、道頓堀商店街の空間を展開する。その狙いは世界中の人々にメタバースの世界で大阪に触れて興味を持ってもらい、実際に来日して大阪観光を促すこと。

Meta Osakaが掲げるミッションは『デジタルツイン(※2)×エンタメで、大阪を世界一おもろいに都市(まち)に』なんです。
宿泊仲介会社のエアビーアンドビーの調査によると、コロナ禍前の海外の人たちの行きたい国ランキングの1位に、大阪市中央区がなったことがあるんですよ。大阪城公園があったり、道頓堀も大阪市中央区です。とにかく世界中から大阪に、どんどん人が集まってくる。今は大阪に来られるインバウンド観光客が年間1200万人ぐらいで、2030年には倍増すると言われていますが、それでも2400万人。
ですがメタバースであればリーチできるのは5億人と、ケタがひとつ違います。大阪にいながらにして、大阪を世界中にアピールできるツール。メタバースを通じて大阪に興味を持った人たちを呼び込んで、<大阪を世界一おもろい都市(まち)>にしたいんです。

(※2)デジタルツイン:リアル(物理)空間にある情報をIoTなどで集め、送信されたデータを元にサイバー(仮想)空間でリアル空間を再現する技術。

大阪の街に人が集まれば当然、雇用も増える。それも毛利社長が目指すもののひとつ。

大阪人が大阪で活躍できるには、大阪で働ける場所が必要です。これからおそらく、「フォートナイト」クリエイターが夢の職業みたいになってくると思います。そのときに就職するならMeta Osakaといわれるようになると、これはかなり面白いかなと。
現在はIT企業の9割は東京なので、地方のコ(人)はみんな東京、もしくは海外に行ってしまいます。ですが今私達と一緒に動いているクリエイターはみんな大阪出身で、大阪に住んでいるコ(人)なんです。大阪の人達が地元の企業で力を発揮できるような、そういう環境を作っていく。
それは大阪にとっての宝であり、財産を守れることになる。今までは働く場所がなかったので、それを作って次世代のヒーローをつくりたいという思いがあります。


メタバースで<大阪を世界一おもろい都市(まち)>に

メタバースの扉を開け、教育とその先へ


「フォートナイト」はMeta Osaka社にとってメタバースの扉を開ける、ひとつのツール。
扉を開けた先に進もうとしている先には、複数の道がある。
そのひとつは、教育分野への進出

わかりやすい一つの例として、「フォートナイト」は小学生の9割以上がプレイしています。そこではみんな、英語でやり取りしているんです。なので子どもたちは英語がしゃべれないとゲームが楽しめないから、親に英語を習いたいと訴えています。以前であれば親が子に勧めていたものを、今は子どものほうから望んでいるんです。ですのでゲームを一つの教育ツールとして利用していくことも考えられます。


「それ以外にも」と言って、話を紡ぐ。

最近は積極的不登校の問題もあります。
これはイジめられているから引きこもるというネガティブな不登校ではなく、知識レベルの高いコ(人)は、学校のレベルが低いから行っても仕方がないので自分で勉強する。それが積極的不登校で、その言葉を最近はメディアでも見かけるようになりました。実際にそういうコ(人)って、知識レベルがすごく高いんですよ。なのでメタバースの空間でスクールとかを作れば、学校の代わりにいろんな教育を施すこともでき得る。学校関係や予備校、塾なども、メタバースに参入してきています。なのでそこにもビジネスチャンスは、すごくあると思っています。


教育分野がBtoCであるなら、もう一方のBtoBのビジネスチャンスにも目を向けている。

メタバース空間にイベント会場を作って、ライブや講演会などのイベントを開けば、そこに集客できる。
例えばバーチャルの大阪城ホールを作って、そこでライブがしたいアーティストに貸し出すとすれば、本物を借りるよりもはるかに安い金額で実現できます。それに「フォートナイト」上の道頓堀商店街のワールドでeスポーツ大会を開いて、会場使用料をいただくのもそう。
そこに広告看板を入れてスポンサーを集めたりする、2次利用の方法もある。ただ現在はまだまだ法整備も追いついてないですし、業界自体も知見や事例が少ないんです。だから私たちが先にいろんなことにチャレンジして、やっていきたい。


BtoC、BtoBで終わりではない。毛利社長はBtoGにも動きを進めている。
GとはGovermment。すなわち、対象は「行政」だ。

行政は、人口減少などの問題を抱えています。なので国や行政の予算を使って、町おこしだったり、観光客を増やすためのビジネスをいっしょにできないかとの相談も受けています。国や行政からの補助金を活用して、バーチャルの空間でイベントを展開していく。
BtoGによる、デジタルツインですね。実際の動きとして政治家の方に呼ばれて勉強会を開いたりしていますし、議員と情報交換をしたり、彼らから相談の連絡が来ることもあるんです。行政、役所とも連携を取りながら進めています。


メタバースで<大阪を世界一おもろい都市(まち)>に


“おもろい大阪”切り拓こうとする開拓者


インターネットがなかった1980年代。日本は世界の勝ち組だった。しかしインターネットが普及し始めた1990年代以降は、世界経済から取り残されてしまっている。これは日本が、新しいテクノロジーにはまらなかったことがすべての要因。そんなインターネットの世界には、メタバースという次の革新が起こりつつある。

インターネットがない時代に日本は、世界でトップクラスでした。アメリカに追い付き、追い越して、世界の時価総額ベスト50のなかに日本の企業が32社も入っていました。
しかしインターネットを使う時代になってから日本は世界では負け始めて、今では残念ながら時価総額ベスト50には1社も入っていません。
これからは、インターネットの中に入る時代、もしくはインターネットの中で生活する時代が始まります。
ここで日本は奮起しないと、もう完全に取り残されてしまいます。今はいわば、次のスタートの時期。ここで立ち後れてしまっては、もう取り返しがつきません。


祖国がデジタル社会に出遅れてしまっている現状を打破せんとする憂国の士であり、自らの商いの地場である街を、メタバースで“おもろい大阪”に切り拓こうとする開拓者毛利英昭氏。
彼がどんなOsakaの未来を我々に見せてくれるのか、楽しみだ。

メタバースで<大阪を世界一おもろい都市(まち)>に


株式会社Meta Osaka
本社:大阪市中央区平野町1丁目7番3号 BRAVI北浜7階
オフィシャルサイト:https://www.meta-osaka.co.jp/




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