金属加工会社がぽん酢作り!? 趣味を仕事に、売れ行き順調
株式会社平井製作所 / 代表取締役社長 平井隆之 氏
下請け企業として発注企業の思惑に振り回され、常に厳しいダンピング競争にさらされている中小の、特に製造業の多くは、オンリーワンの自社製品を持つことを夢見ている。とはいえ、金属加工で80年以上の歴史を持つ株式会社平井製作所(八尾市)の代表取締役社長平井隆之氏が手掛けた新事業はなんとも異質。畑違いも極まる食品、ぽん酢の製造販売だった。だれもが「噓でしょ」とあきれた事業に乗り出した平井氏に、経緯や今後の取り組みを伺いました。
コロナが後押し。寝かせていたアイデアが日の目
平井製作所は1934年、平井氏の祖父がブリキバケツの製造販売会社として創業。戦後に金属プレス加工を始め、今では高度なプレス加工技術をベースに、金型設計からプレス加工、組み立てまで一貫生産も行っている。しかし、この業界も景気変動による浮沈は激しく、同業者も多いため競争は厳しい。このため、2014年に父から受け継いで5代目社長に就任した平井氏は、いつか自社独自の製品を出したいという思いを募らせ、ひそかに寝かせていたアイデアがあった。

下請け仕事が多いものですから、日ごろから価格競争にさらされています。コストダウンの代わりに設計段階からの提案を行ったりして付加価値を高める努力をしましたし、シャープさんとの古いお付き合いから得た信頼で、取引先を多く紹介してもらったりして順調に新規顧客の獲得もできていました。ところが、コロナで一変しました。メーカーからは「来てくれるな」と言われ動けなくなってしまったんです。それで考える時間ができ、「いずれ」と思っていた新規事業に取り組むことになったんです。

5代目社長に就任するまでの紆余曲折も無駄ではなく
それでも「なぜぽん酢?」という疑問が残ります。実はそこには、平井氏の趣味と経歴が大きくかかわっている。平井氏は家業であった同社を継ぐ前、環境調査会社に就職。生物調査に携わっていました。これもまた、金属加工とは全く異質な分野ですが、今でも毎週のように出かける趣味の魚釣りとはつながっていた。

子供のころから生き物が好きで、魚を飼ったりしていました。中学の時に近所に熱帯魚屋さんができてよく通っていたのですが、店主の方が近畿大学の水産科出身。いろいろ話をしているうちに、勉強は数学や経済だけではない、魚の勉強をしてもいいんだと思うようになり、近大の水産に進み、4年間魚の勉強をしました。
ただ、生まれた時から家業は継ぐべきだという気持ちはあり、周りもそんな雰囲気だったので、卒業後、金型の勉強のために親戚の工場に入りました。でも、生き物と触れ合っていたいという気持ちが抑えきれず、2年たらずで辞めて先輩に紹介してもらった環境調査会社に移りました。
趣味と実益が導いてくれたぽん酢作り
環境調査会社では、環境アセスメントの一環として魚をはじめ鳥や昆虫の生息調査を行いました。趣味嗜好にマッチした仕事のように思えましたが、好きだからというだけでできる仕事ではなく、工事が自然環境に与える影響を調べる環境アセスメントのはずが、はじめから工事事業者に都合のいい結論が決まっているようなものでした。このため、ここも2年で辞めて、いよいよ金属加工の家業に取り組むようになりました。そしてここから趣味で続けていた魚釣りがぽん酢につながっていきます。

大学時代から、趣味は釣りと言うほど魚釣りによく行っていました。釣った魚はもちろん料理して食べます。同じ食べるならおいしく食べたいですから、調味料も自分で作るようになりました。ぽん酢もいろいろ試しましたが、ぽん酢自体はおいしくても魚を引き立てるものがなかったんですね。あるとき、釣りの帰りに和歌山の農産物直売所に寄ったらダイダイが売られていて「ぽん酢を作ってみませんか」という案内を見つけたんです。ダイダイはまろやかで酸味・香りもそんなに強くないので、これはいけそうだと思い、買って帰ってぽん酢作りに取り組むようになったんです。ダイダイ:ダイダイはミカン科ミカン属の常緑樹、およびその果実。柑橘類に属する。正月の飾りや鏡餅に乗せるので知られる。
試行錯誤すること4年。凝り性な性格が妥協を許さず
それが社長就任前後のこと。根が凝り性なだけに、ダイダイの果汁に醤油・酢・ミリンとコンブやカツオだしを加えて試行錯誤すること4年。ようやく満足のいくぽん酢に仕上がり、翌年からは大量に作って得意先などに配ったらこれが大好評。そのころから商品化を意識するようになりました。
実は、料理にも中学のころから興味があったんです。今の得意料理は魚の煮つけやみそ漬け。干物も作ります。釣りに行って外道でフグが釣れたらみんな捨てるのを見て、これはもったいないと思ってフグ調理の免許も取り、あがったフグをもらって自分でさばくようになりました。食品衛生責任者や小型船舶の免許も持っています。

地元八尾への恩返しと「代々栄える」ようにとの願いを込めた商品名「八尾の代々」
こうした経緯をたどると、ぽん酢に乗り出したのはむしろ必然とさえ思えてくる。そして、コロナ禍に背中を押される形で商品化したぽん酢が、「八尾の代々」。ネーミングには、製品化するにあたって八尾市内の各企業の協力を得たことに加え、ダイダイのごろ合わせで会社が「代々栄える」ようにとの願いを込めた。2021年1月から200㏄入りで製造開始。1年目は約3,000本製造(1本税込980円)。八尾市のふるさと納税の返礼品にも加えられ、地方発送にも対応しています。
▼ダイダイの金平糖

▼ダイダイのグミ
妻からは「何言うてんの」とあきれられ、先代社長の父からは「あほなことを」と一蹴されましたが、こんなにうまくいっていいのかと思うくらい順調な売れ行きです。ぽん酢と言えば鍋ですが、「八尾の代々」はまろやかでツンとしていないため、鍋よりもむしろ、お造りや揚げ物・塩焼き・蒸し物・それにサラダや餃子にも合うと思います。また、ダイダイの皮の香りを生かした金平糖と子供向けのグミも作っています。さらに、釣ってきた魚でみそ漬けや塩こうじ漬けを作って、これも販売をしています。会社の敷地内に建てた小さな小屋で売っているのですが、近所の人にも買いに来ていただいています。またぽん酢は現在1種類だけなのですが、今後はラインアップを増やしたいとも考えているところです。
面白さの追求が生んだ自信のぽん酢。本業との相乗効果にも期待
何事も面白くないと続かないと思うんですよ。逆に言えば、どんなしんどい仕事でも面白い部分があり、そういう面白い部分に光を当てていけたら、新しいものも生まれてくるのではないかと思っています。食品は笑顔をいただけるので力になりますが、同時に、食品と金属加工が双方向でつながれば、もっと面白くなるのではないかと期待をしています。
当初は平井氏の趣味から始まった「ぽん酢」作り、それが今では社員みんなが誇りに思う自社ブランドに。「八尾の代々」に続く新たな商品の可能性は無限に拡がります。ぽん酢の販売をきっかけに食品工場から声がかかるようになり、本業の金属加工につながったケースも出てきています。
これからはさらに本業との新たなシナジー効果を生み出してゆくに違いありません。
株式会社平井製作所
本社:〒581-0052 大阪府八尾市竹渕3丁目137番地
オフィシャルサイト:https://hiraiworks.com/
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