自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で

株式会社nakota(ナコタ) / 代表取締役 吉田真太郎 氏

                                                                

高品質の製品を適正な価格で販売し、自社ブランドの製品を身に着けてもらうことでたくさんの人が笑顔になってくれればいいと願い、2011年に創業した株式会社nakota(ナコタ)代表取締役 吉田真太郎氏

自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で

オフィスにお邪魔すると、人懐っこいフレンチブルドッグが真っ先に出迎えてくれた。会社で飼っている”おから”だ。

自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で

nakotaは実店舗を持たず、自社ブランドで価格競争に巻き込まれない帽子を中心に靴下・小物・バッグなどをネットショップ展開している会社である。自社製品が7~8割、それ以外は足で見つけだしたセレクト商品。「nakota」の社名は、ネイティブアメリカンの言葉で「友人・仲間」を表す言葉で、起業したときから吉田氏の仕事のやり方のベースになっている。そんな起業のきっかけは、東日本大震災だった。

高校を卒業した後は、日本IBMで半導体の製造をしていました。外資系だったので8時間勤務でしたが、仕事を効率よくやっていれば実務は数時間でもいいという成果主義。段取りよくやれば時間も多く作れたんです。時間通りきちんと働かなければならない当時の日本の働き方とは全く違い、仕事を段取りよくすれば時間が作れるんだということを学びました。
いい会社だった印象ですが、どうして辞められたんですか?
日本の半導体のバブルが終わって、東レとIBMが液晶ディスプレイ事業をすることになり、その部署を移動することになったんです。日本の会社が入ることで今までと雰囲気ががらりと変わってしまいました。そのとき、早期退職の募集もしていたので、ちょっとゆっくりしてみようと思い、そのタイミングで退職をしました。

退職後は、当時、注目されていたFlash(フラッシュ)(※1)という動くHPを作る仕事などをしていたのだが、突然、Flashにアップルが対応しなくなるという事態が発生した。

(※1)Flash(フラッシュ):動画やゲームの中で利用されるアニメーション作成ソフトと、その作品を再生するためのFlashプレイヤーで構成されている技術
「技術って価値の変動が早くて怖いな」と思ったんです。また家族にちゃんとこんな仕事をしているんだと説明できることをしたい、何か目に見える有形物を売ろうと。またモノを購入した人に「ありがとう」といった感謝の言葉を言ってもらえる仕事がしたいと思い始めました。


東日本大震災を期に「やりたいことをやらなければ」と起業の決意が固まる



吉田氏は日本IBMを退社した後、大阪の小さな衣服販売店に勤めそこでネットショップを担当。すぐに実績を上げ、マネージャー兼店長としてすべての運営に関わった。しかし次第に組織の力で戦わなければという思いが強くなり始める。その思いに背中を押したのは、東日本大震災だった。仙台にボランティアにも出かけた。現地での状況を目の当たりにし、被害にあった友達の話を聞き価値観が変わったという。
「安定な人生より、自分もいつ死ぬかわからないので本当にやりたいことをやらないと。」という気持ちになったんです。
そして震災の10日後の2011年3月21日に在籍していた会社を退職し、すぐに起業したのだ。


アパレルが厳しい時代に起業



2011年に個人事業主として「nakota」を創業。アパレル業界は厳しさを増し、冬の時代と言われ始めていた頃である。しかし、3か月で月商100万円、3年で年商1億4000万円に達し、2015年に法人化、株式会社nakotaとなる。帽子はネットではなかなか売れないといわれていたが、大手が多く参入しているアパレルで複数アイテム勝負するのは厳しい。大手に勝つためには、何がいいのか、絞り込んでいった結果「帽子」の選択だった。コンセプトは適正な価格で品質の良いものを販売することである。下請けをいじめるようなことをしたり、不当に高い価格にすることはしない「三方よし」(※2)の近江商人魂でなければならないと決めていた。この方針は今でも変わらない。

(※2)三方よし:近江商人の経営哲学のひとつ。 「商売において売り手と買い手が満足するのは当然のこと、社会に貢献できてこそよい商売といえる」という考え方。

色々と候補はありましたが、自社製品は、やっぱり同じモデルで長く続けられるものにしたかったんです。創業当時から今もナンバーワンの商品が「ワークキャップ」です。これは結構リピーターも多いんですよ。

人気No.1を誇る「スウェットワークキャップ」を見せてもらった。シンプルなデザインで男性でも女性でもかぶることができそうだ。オリジナルの帽子の特徴は、素材のよさと被りやすさである。

自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で

自社製品を作る際、原価の設定をしていないんです。こういう商品を作りたい。で、いくらで売る?という感じです。ですから誠意のある適正価格を提示してくれる相手でないと長い付き合いは続けられません。
帽子のその先はどんな展開を考えているのだろうか。
ユーザーが求めているものはまだまだあると考えています。例えばノーメイクでも大丈夫な帽子とか。帽子が似合わないからかぶらないという人もまだまだ多いので、そういう方がかぶりたくなる帽子を考案中です。ワンステージ上げるために今までやってこなかったプロのモデルを起用しようと考えています。


コロナ前から無理なく続けられるために全員ノートパソコンに



現在、社員は9名。まだ面接中の人もいるそうだ。特にデザイナーや商品企画等の専任として雇ってはいない。入社後、商品企画が楽しいという人は商品企画に、デザインがしたければ、デザインを担当と、それぞれの可能性を伸ばしている。平均年齢は25歳と若く女性も多い。社員は積極的にSNS等で情報を発信している。

自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で

特に20代の女性が多いので、結婚しても無理なく続けられるようにコロナ禍の前に「ここでの戦い方を考えないと」と思って全員ノートパソコンにしてたんです。
この決断のおかげで、結果コロナ禍で在宅ワークが増えても慌てることなく対応がスムーズに出来ることとなる。

実はコロナ禍でマスクが不足したときに、たまたま僕の甥や姪が「マスクがないとアルバイトにも行けない」と嘆いていたのを聞きました。そのとき、取引のある中国の会社から航空便でマスクを150箱送ってもらえたんです。甥や姪にはそんなにいらないからフェイスブックで「原価でマスクを売るよ」と告知しました。

余ったマスクは1枚、1枚梱包して商品を買ってくれた人にサービスで入れたところ、お礼の連絡がたくさん届いた。また自社でマスクを販売し大変売れて、今は自社ブランドのマスクも販売している。

自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で


大阪発のブランドは武器になる!アウトドア製品の新ブランドの立ち上げ



これからはやりたいことと売れることを一緒にしていきます。僕自身、アウトドアが好きなこともあって、機能に特化した自分でも使えて人に勧められるものを作ろうと進めています。アウトドアにもフィールドを広げていこうと、実は今回水筒にチャレンジします。実は大阪、水筒屋さんが多いんですよ。

自社ブランドのネットショップは近江商人の教え「三方よし」で

そういえば、象印マホービンやタイガー魔法瓶も大阪本社である。新ブランドの名前はCAMURI(カムリ)に決まった。大阪は武器になる。大阪でやる意味は、近くに関連会社を持ち、すぐに動けることだ。ネットショップは様々な技術の複合だ。「まだまだやれることは数限りなくある自分たちのセンスが世の中の誰かに個性的に響くようなものを作りたい」と吉田氏は言う。世の中の誰かに個性的に響く商品展開をしている。大企業ではできない個々の感性が強みである。近江商人の「三方よし」の精神は起業したときから変わらない


株式会社nakota
本社:大阪市西区江戸堀1-25-35 近商ビル2F
オフィシャルサイト:https://lakota.jp/
通販サイト:https://nakota.jp/





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