大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

株式会社ワサビ / 代表取締役社長 大久保裕史 氏

突然ですが、問題です。
新品の洋服一着を作るのに排出されるCO2および、必要とされる水の量は、それぞれどれくらいかご存知ですか。

正解はCO2=25.5kg、水=2,300ℓ。CO2は500mlのペットボトル約255本製造分、水は浴槽約11杯分に相当する。CO2は石油資源の使用や工場の稼働で排出され、水は原料となる植物の栽培や染色で使用される。我々が普段、何気なく購入している洋服を作るのに、これだけの環境負荷がかかり、購入された洋服のうち、68%がゴミとして廃棄されている(各出典:環境省 サスティナブルファッション)。

この問題を解決する一助になると考えられるのが、リユースである。廃棄物が再利用されれば新品の製造量を減らすことができ、環境負荷の軽減つなげられる。株式会社ワサビ代表取締役社長 大久保裕史氏はその点に着目し、リユース品の流通システムの開発と販売を行う。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

弊社が開発した『WORLD SWITCH/ワールドスイッチ』は、リユース品に特化した供創型EC管理システムです。ここに商品を登録すると楽天やAmazon、ヤフオク!、eBay(※1)など20以上の提携モールに同時に出品され、自動翻訳機能もあるので海外のモールにも出品が可能になります。出品・在庫管理・受注・買取の効率アップが図れるシステムです。
(※1)eBay(イーベイ)は、アメリカ合衆国カリフォルニア州サンノゼに本社を置くアメリカ合衆国のグローバル電子商取引(EC)企業で、世界中で1.6億人、Sellerは2,500万人(個人・法人含む)とインターネットオークションでは世界最多の利用者を持つ。事業内容は自社ウェブサイト上で消費者間取引](C2C)および企業間取引(B2B)など個々間での取引を可能にするグローバルマーケットプレイスの運営を行っている。


リユース事業者の手間を劇的に削減するシステムを開発
日本で価値がなくとも、ニーズのある海外に販路を広げる



このシステムを開発するに至ったきっかけは、大久保氏の過去の経験による。

私は以前、古着屋で店長を務めていたんです。リユース品は元が同じ商品であっても、それぞれに状態が異なります。そのために当時は一点ずつ商品を在庫登録して、それを今度は各モール一軒ごとに出品する。どこかのモールで商品が売れれば、ほかで出品していたモールを一軒ごと巡って出品を取り消す。その手作業の繰り返しで、これがすごく大変な作業だったんです。それを一括してできるシステムが作れないかが、始まりでした。

今ではTVでCMを流す有名業者をはじめ、多くのリユース事業者がワサビ社のシステムを導入。そんな「WORLD SWITCH/ワールドスイッチ」の大きな強みのひとつは、自動翻訳機能にある。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

大きなリユース事業者はだいたい、当社のシステムを使ってもらっています。買い取りから販売まで一元管理するシステムを提供していまして、強みは国内だけではなく、いろんな国にボタンひとつで出品できることです。我々のシステムのなかで商品登録すると、英語に変換されてeBayに、中国語に変換されて現地のモールに出品されてと、世界中に販路が広がるんです。

出発点はリユース品の販売労力の低減だったが、業界に携わるうちに、新たな視点が大久保氏に備わった。それは廃棄をリユースに切り替えることを、積極的にやっていくべきだとの考えだ。
あるリユース事業者さんは以前、商品を廃棄するのに年間数億円かけていたそうです。だけどマレーシアにショップを作ってそこで商品を売ると、すごく売れるんですよ。日本ではいらないけど、海外で必要とされるものって、すごくあったりするんです
日本ではなんの価値もないものが、持っていく先によっては価値がある。廃棄するのではなくリユースにつなげるには、やっぱり日本国内だけでは解決できない。私たちは生産するだけが経済じゃなくて、次につなぐことができる会社になろうと思って行動しています。


大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える


大量消費、大量廃棄を当たり前とする現代社会
それは生産現場にとってクリーンなのか



大久保氏の取り組みは、SDGsに太く通じるところがある。自社の事業の社会的価値について、意義があることだと胸を張る。
私たちがやっていることの社会的価値は、すごくあると思っているんです。リユースが進むと今の大量消費、大量廃棄の流れが止められます。ひとつの例をあげると2013年にバングラデシュバングラディシュで、縫製工場が倒壊して1千人以上の死者を出す事故が起こりました。その背景には大量消費、大量廃棄が遠因にあります。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

この事故の原因は、違法に増築されたビルの上層部に設置された発電機とミシンの振動が共鳴して振動が発生。補修の必要があったにも関わらず、放置されたままだった建物がその揺れに耐えられなくて倒壊を引き起こしたものだった。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

バングラデシュは当時、主にファストファッション業界からの仕事を受注していて、従業員ひとりあたり日本円で月に3,900円くらいの賃金で働いていたんです。それを断ると次に仕事がもらえないかもしれないので、工場を休めないんですよね。建物が危ないのはわかっているけど、受注を止めて別の工場に振り替えられると仕事がなくなる。だから、受注主は断れない。従業員もそこで、安い賃金で働いていた。その結果、起った悲劇でした。
その現状を憂うからこそ、言う。
今の私たちは安く購入して、いろんな服を着たりして裕福な気持ちになっているかもしれませんが、その生産背景は果たしてクリーンなのでしょうか。昔は7,000円ほどで買ったジーンズを大切に履いていましたが、今はファストファッションなら3,000円くらいで気軽に買えて飽きたり、流行りが移ろうと廃棄する。だけど、そうじゃないと思うんです。今はモノが、フェアトレード(※2)で作られていません。それを正しく作れるような環境にしようよと。私がみなさんに伝えたいのは、モノのリセールバリュー(※3)をわかってほしい。いいものであれば使い捨てではなく、売って次につなげるらる。それがわかれば高いものでも、安く買えるんだよということを伝えたいんです。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

(※2) フェアトレードとは「発展途上国との貿易において、フェアなトレード(公正な取引)をすることにより、途上国の人々の生活を助ける」しくみのこと。
(※3)リセールバリューとは、一度購入したものを販売する際の、再販価値のこと。中古車販売などの際に使われることが多い。

大久保氏の例えになぞらえると、7,000円で買ったジーンズをある程度着用したのち3,000円で売れたなら、実質的な購入金額は4,000円。これなら、ファストファッションのアイテムを購入するのとさほど変わらない。手放したアイテムは廃棄されず、次のユーザーの手に渡る。ひとつのモノの価値向上は環境負荷の軽減につながり、生産現場の環境改善に波及効果を及ぼすことも考えられる。


探偵業をやっていた経験もある異色の経歴
発想と行動の幅を広げるのは、フットワークの軽さ



そんな大久保氏の経歴をひも解くと、興味深い面が浮かび上がる。古着店の店長以前には、探偵業を行っていた。自らが探偵につけられ、その探偵を捕まえて話を聞くと、探偵は儲かりそうだと思って、自分もやってみたというのだ。

20代のころは、いかに楽にお金を儲けるかに特化していました。だけど今はお金をゴールにすると、間違うという考えがあります。僕にとって20代は、失敗した時代でしたね。今はなにか意味があることをしようと思っていて、もう本当に逆です。ただ昔から勢いと、周りをまとめる力みたいなものはあったんですよ。今はそれがちゃんとした方向に振られていて、正しく動けている感じです。

唐突に無縁だった探偵業にトライするなどした20代だったが、自らの衝動を信じて行動するフットワークの軽さは今も失ってはいない。
自分でもフットワークは、めちゃめちゃ軽いと思います。この前もリユースに関する大きなイベント「リユースフェス(リユースの教科書)」(※4)をやったあとで大変だったのに、次の日の朝にはタイに飛びましたから。現地でまた面白くやれそうなことも、見つけられました。私としてはやりたいことがすごく多いので、そのバランスをどう図っていくのか。それとこの事業を上手くまわせる人たちを育てていくことが、今後の課題ですね。それができれば、私たちはもっといい方向に、進めるんじゃないかなと思っています。
(※4) リユースフェスとはリユース業界の発展を促し、リユース・リサイクルビジネスを通じて環境・経済共に持続可能な社会をめざし、企業だけでなく、個人でもできるリユースを応援するイベントです。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える


次に求める人材は「社長募集!」
なにかをやり切る人が望ましい



ならば、これからも発展と拡大を目指すワサビ社に、どんな人材を望むのか。
社長をやりたいと思う人に、来て欲しいなと思っています。今後は自治体の粗大ごみ収集の仕組みを改善し、リユース品として流通させるシステムを成立させたり、中古車や不動産の分野に進出するなど事業展開を広げていく方向で、新規受注も増えると思うんです。力づくでも、なにかをやり切るぞという人が望ましいです。アイデア種はいっぱいあるし、仕組みもだいぶできてきたので。新規事業を子会社化して、そこの社長になってくる人が入ってきてくれたらなと思っています。『社長募集!』が、いちばん適切かもしれないですね。


リユースの業界とユーザーをつなぐ
寿司における「ワサビ」のような存在に



社名の「ワサビ」は、思い立ったら即行動の大久保氏らしく、良く言えばヒラメキ、別の言い方をすれば思いつきで決めたのだという。

大量消費・大量廃棄の時代に、リユースで社会の仕組みを作り替える

驚かれるかもしれませんが、深い考えはなくて、ただお寿司を食べていたときに決めただけなんです。あまり深く考えない能力みたいなものが、あるのかもしれませんね。弊社のサイトでは、社員がなにかと後付けしてくれていますけど(笑)。

ネタとシャリの間にあるワサビは、それ単体では主役にはならない。だがネタとシャリをつなぎ、陰ながら両者の持ち味を最大限に発揮するようサポートする。寿司にとっては、欠かせないピースなのである。
昨今の回転寿司などではワサビ別添えが当然となっていて、従来の寿司とはまた別のものと感じる向きもいるのではないだろうか。それは現在のファストファッションの立ち位置に通じるものがあるとするのは、穿ちすぎか。

大久保氏が深く意図せずつけた社名は、社が歩みを進めるごとにその在り方を表すものになっている。大量生産、大量消費の現代社会に、ピリリとした刺激を与え続けていってもらいたい。


株式会社ワサビ
本社:〒530-0011大阪市北区大深町3番1号 グランフロント大阪北館 ナレッジキャピタル コラボオフィス8階K812号室
オフィシャルサイト:https://wasabi-inc.biz/

社長インタビューとは?

社長インタビューは、大阪で活躍する企業の経営者の思いやビジョン・成功の秘訣などを掘り下げる人気コンテンツです。 商品誕生および事業開始秘話から現在までの道標や、経営で特に意識をされているところ、これからの成長において求める人材… 様々な視点から、企業様の魅力を発信致します。現在、大阪府下の中小企業様を120社以上の取材を通じ、「大阪 社長」「大阪 社長インタビュー」といったビッグワードで検索上位表示の実績があります。取材のお申し込みについては、下記よりお問合せください。


同じカテゴリー(大阪市北区)の記事画像
日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者
月収5万円の元芸人社長の快進撃!「芸人インターン」サービス
小学生からの起業家教育サービスで、若者の挑戦をデザインする会社
数々の事業で成功を収めた若き起業家の思い描く理念とは?
コーポレートコーディネートで「人を育てる会社」
産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に!
同じカテゴリー(大阪市北区)の記事
 日常にミューラル(=壁画)がある環境を! 日本のアート、カルチャーの先導者 (2024-04-05 09:30)
 月収5万円の元芸人社長の快進撃!「芸人インターン」サービス (2023-12-15 09:30)
 小学生からの起業家教育サービスで、若者の挑戦をデザインする会社 (2023-12-08 09:30)
 数々の事業で成功を収めた若き起業家の思い描く理念とは? (2023-12-01 09:30)
 コーポレートコーディネートで「人を育てる会社」 (2023-11-17 09:30)
 産後家族のライフスタイルからサポートし、家族を笑顔に! (2023-10-06 09:30)