株式会社 エフエム・キタ 代表取締役社長　竹間郁夫 氏

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　

都市型コミュニティFM局、愛称「ウメダFM　Be Happy! 78.9」は阪神梅田駅前のハービスOSAKAの地下一階にサテライトスタジオがある。
DJの顔が見えるガラス張りのスタジオなので、目にした方も多いのではないだろうか。
梅田界隈で働く人や遊ぶ人たちのためのコミュニティFM局である。
1997年の開局以来、「音楽と大人のためのFMステーション」として、愛されている。
そのFM局を運営する株式会社エフエム・キタ　代表取締役社長 竹間郁夫氏に話を伺った。



代表になられたのはいつでしょうか？

2020年の5月、「コロナがいよいよ拡大するぞ」という時でした。
2006年から2007年まで1年間だけ株式会社 エフエム・キタに在籍していたことがあったので、「分かっているだろう」ということ（笑）で就任いたしました。
それまで姫路のケーブルテレビに8年、その前はBaycom （ベイコム）（※1）に5年いました。

（※1）ベイコム：株式会社ベイ・コミュニケーションズ。愛称は「Baycom」（ベイコム）。ケーブルテレビ局。現在、竹間氏が代表取締役社長を兼務している。

梅田にコミュニティー放送局を立ち上げたきっかけはなんだったんでしょうか？

開局はハービスOSAKA（※2）ができた1997年です。
当社は阪急阪神グループが母胎です。ハービスOSAKAは阪神電気鉄道が社運を賭けたビルなんです。
その情報発信するシンボリックな基地としての意味合いで、このコミュニティーFMを立ち上げました。

（※2）ハービスOSAKA：1997年3月19日に開業。阪神電気鉄道が運営。正式名称は梅田阪神第1ビルディング。阪神電気鉄道の本社跡地に建設された地上40階建ての高層ビル。オフィスタワーとザ・リッツカールトン大阪、ハービスPLAZA で構成されている。


関西のコミュニティーFMの多くが、災害や行政の情報伝達、まちの活性化などを動機にして開局したのに対し、「ウメダFM　Be Happy! 78.9」は民間のコミュニティーFMとして、西梅田再開発から誕生した新しい都市 梅田からの情報発信の機能を持ってスタートした。

少し、コミュニティFMの歴史を紐解いてみよう。

コミュニティFM放送とは、1992年に制度化された、放送エリアを市町に限定したラジオ局である。
1995年1月に発生した阪神淡路大震災が、地域密着のコミュニティFMの設立を促した。
1998年には100局を超え、2010年には238局、2021年には300局を超えている。

DJはおしゃべり控え目、演歌やアイドル曲は流さない

「ウメダFM　Be Happy! 78.9」の一番の特徴はなんでしょか？

DJはおしゃべりは控えめです。
大人が聴けるFMですので、誰でも知っている曲や口ずさんでしまう曲を選曲しています。

竹間氏にインタビューをしている間もずっと当局のラジオが流れていたが、おしゃべりは控えめというだけあって、ずっと曲が流れていた。1日24時間のうち、18時間以上が音楽の放送である。

3分おしゃべりをしたら3曲から5曲、音楽を流します。
選曲スタッフが、一日を通してバランスを見て曲を選んでいます。

なるほど、徹底している。

放送免許申請区は、北区、福島区、西区ですが、電波は大阪市内を飛んでおり、聴取エリアの人口は約800万人から約1,000万人いるという。
FM放送を店舗やオフィスで聴取して、職場のBGMとして利用している方も多い。
梅田界隈での車内や梅田の地下街では「ウメダFM　Be Happy! 78.9」がいつも聴くことができる。

DJはどのようにして採用しているのでしょうか？

新人からベテランまでいますが、みんなオーディションです。
毎回、オーディションの時は20人から30人くらい来ますね。
若い子を育てたいという思いがあり、新人だった方が多く育っています。
あまり成長が見えない場合は、1年で別の方に変わることもありますね。

そこは、プロの厳しい世界である。
中には何度かオーディションに落ちても、あきらめずにチャレンジして、見事DJの座を勝ち取った方もいるそうだ。
番組の流れや構成もDJが担当している。
番組担当のDJが1週間前からテーマや選曲を決めているそうだ。

当社はボランティアスタッフはおらず、事務や編成関連を担当するバックヤードが3名、ミキサーが4名、そしてDJは15名おります。

多くのコミュニティFMは、ボランティアスタッフがパーソナリティになることが多い。
中には地域市民を登録制とする「市民パーソナリティ」や地域の学生が番組の制作やパーソナリティを務めるなど、さまざまなケースがある。
「ウメダFM　Be Happy! 78.9」は、ボランティアスタッフを使わず、プロ集団で運営されている。



どんな番組があるのか見てみよう。

毎週月曜日～金曜日まで、日替わりで各DJがそれぞれの番組を担当している。

【1日の番組テーマ】
10：00～12：30　/　Be Gourmet! グルメ、ショッピング情報
13：30～16：00　/　Be Travel! お出かけに役立つ映画、梅田のイベント情報
17：00～19：00　/　Be Sports!　スポーツ情報

放送時間は、月曜日未明 0：00～6：00 を除く24時間放送である。
（19：00以降は基本自動放送）

とはいえ、自然災害など突発的なことが起これば、緊急対応が必要である。

台風とかが接近しているときは、スタッフは放送局近くのホテルに宿泊させます。
大阪府北部地震（※3）の時は、福島に住んでいるスタッフに急遽来てもらい対応しました。
当社の目的は災害を伝えることではありませんが、緊急の場合には、災害に関する情報を伝えるのはコミュニティFMの使命であると思っています。

（※3）大阪府北部地震：2018年6月18日7時58分39秒に、日本の大阪府北部を震源として発生した地震。最大震度6弱を大阪府大阪市北区・高槻市・枚方市・茨木市・箕面市の5市区で観測した。

働く人、学びたい人を応援する、はたなび＋（プラス）

毎回、専門家をゲストに迎える番組もある。
2022年1月10日からスタートした「はたなび＋（プラス）」（毎週月曜日 12：30～13：00）は、「働きたい！学びたい！楽しんじゃいたい！」という人を応援する番組で、就職活動中の人だけでなく、転職を考えている人、副業を考えている人、新たな学びを考えている人、更に日本で仕事を探したいという留学生にも役立つ情報を様々なゲストを迎えて放送している。
放送番組審議会（※4）から「番組のテンポがよく、情報量も多くて聴きやすくかった」、「留学生が必要とする情報をわかりやすくまとめられている。」といった評価も得ている。
（※4）放送番組審議会：放送事業者が設置する放送番組審議機関である。「番組審議委員会」という名称を使う事業者もある。
はたなび＋収録前のガッツポーズ！

スタジオが梅田という立地の良さは、ゲストも招きやすい。
例えば、梅田芸術劇場に主演する役者の方などは、前日に連絡を受け、出演者が「明日出演できる」と聞けば、即対応。
翌日、生放送に出演してもらうということもよくあるそうだ。

民間のFMなので制約も少ない。
「しゃべりたい、発信したい」という希望があれば、番組を購入し、おしゃべりすることも可能である。
（ちなみにタイム料金は＜収録番組15分41,800円（税込）、30分82,500円〜（税込）＞とのこと。）

竹間氏に今後の展望を聞いた。

梅田という場所を活かして、地方からのプロモーションを考えています。
地方の活性化に役立つ番組作りも考慮していきたいと思っています。梅田に数多くある都道府県事務所とのコラボとかもしていきたいですね。
また、ラジオでしゃべりたいと思っている社長さんもたくさんおられるのではないでしょうか？
放送料も安いので、お気軽にお声がけしてください。

この取材時にも事務所の壁には和歌山・岡山など様々なエリアとのコラボレーションのイベントの告知ポスターが掲出されていた。


梅田発のコミュニティーFMだからこそできる可能性は、まだまだありそうだ。

株式会社　エフエム・キタ
本社：大阪市北区梅田2丁目5番25号　ハービスPLAZA 3階
オフィシャルサイト：https://www.be-happy789.com/