視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」

丸安洋傘株式会社 / 代表取締役 川口弘幸 氏

                                                                

「NHKのサイレントアンブレラを見て、なんて素敵な傘なんだろうと思いました。傘にあたる雨音がうるさいのはわかっていましたが、視覚障がいの方にとって命に関わる問題だなんて知りませんでした。」(消費者から丸安洋傘に届いた感謝の声・一部抜粋)

日本で消費される傘は年間約1.2億~1.3億本。そのうちの6割にあたる約8000万本がビニール傘などの使い捨て傘だ。
そんな中、質の高い、すべて手仕事で傘をつくり続けている会社がある。その小さな工房で世界でも類を見ない雨音に着目した傘が誕生した。激しく降る雨の大きな雨音を静かで耳に心地よい音に変化させる画期的な傘「サイレントアンブレラ」である。

世界初といってもいいこの傘は、視覚障がい者からの声で誕生した。
すべての工程を丁寧な手仕事でやり続けてきたからこそ、今までどこにもなかった傘が誕生した。
丸安洋傘株式会社 代表取締役川口弘幸氏に傘に込められたものづくりへの思いを伺った。

視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」




「雨音が静かな傘をつくれないですか?」という問い合わせで生まれた画期的な傘!


JR寺田町駅から歩いてすぐのところに昭和の香り漂う工房がある。
細かく分けられた棚には様々な傘のパーツが収納されており、熟練の職人が黙々と手作業で傘を製造していた。
1966年(昭和41年)の創業以来、質の良い傘を作り続けいる丸安洋傘では、高度な傘づくりの技術が受け継がれてきた。
ほとんどの工程が分業制の傘業界の中において、ここでは一貫生産で手作りしている。

日本の傘のづくりは、分業制でしたが、10年くらい前からその一端を担ってきた職人が減少して、分業制が成り立たなくなってきました。今までやっていなかったことも自分たちでやらなければいい傘が作れなくなったので、今までやっていなかった技術をあらたに習得して、一貫生産できるようにしました。技術を引き継ぐのはそれは大変でした。


視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」

日本の傘は、ほぼ500円くらいのビニール傘が占めており、97、8パーセントが海外製品だと川口氏はいう。
日本の傘技術が詰まっている丸安洋傘の傘は、ギフトカタログの人気商品となっている。
伝統を受け継いでいく中で、世界でも類を見ない傘を生み出したきっかけはなんだったのだろうか。
今から17,8年前に私の父(先代の社長)のときに視覚障がい者の方から「雨の音が静かになる傘をつくってもらえないか?」という問い合わせが来たのがきっかけです。当時、着手はしたのですが、忙しくて製品化するまでにはいたりませんでした。

丸安洋傘は川口氏を含め10名で傘を製造している。すべての傘は手作りだ。
生地を裁断し、各パーツを組み立てていく。手間暇のかかる傘づくりは、1日30本から40本の傘を製造するのが限界だという。
日々の注文に対応するだけで精いっぱいだったそうだ。
「サイレントアンブレラ」が誕生したのは、2023年の10月。ふたたび製品化に向けて始動した理由は何だったのだろうか。
今までは生産が間に合わない状態だったので、新しい傘を開発する余力がなかったんです。でもコロナ禍で少し時間に余裕ができたので、製品化に向けて再始動しました。コロナ禍がなければ誕生しなかったかもしれません。


視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」

長年、いい雨音が聴こえる傘を意識して作ってきたが、「サイレントアンブレラ」はその真逆だ。
なるべく雨音が聞こえない静かな傘でなければならない。
視覚障がい者は、雨の外出の際に傘を使うと雨音で周りの音がかき消され不安になるという。
だから、静かな雨音になる傘が必要だった。
今まで誰もが考えもしなかった雨音が静かになる傘をつくる。さて、どうやって開発していったのだろう。

消音にするために2重構造にすることに辿り着きました。1枚目はいろんな生地で実験し、2枚目の外側になる生地は、洗濯用のネット(網)がヒントになりました。2層の生地の間の空間をどのくらい空けるか、その調整にも苦労しました。
露先(※1)は、2枚の生地と骨を結びつけないといけないので、今までとは違います。1個作るのに5時間以上かかりました。
(※1)露先:傘布と骨が結び付けられている部分


視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」


川口氏に製造現場の棚に仕まってあった傘のサイズに仕立てた洗濯用のネットや型紙を見せてもらった。
少しずつサイズの違うものがあり、いかに試行錯誤したかが伺える。生地を裁断するために使用される木型も手作りだ。
雨音の消音性に加え、生地の張り具合の調整に苦労したという。2重構造だと、どうしても重量が増える。そのために、外側の骨をカーボンにし、中の骨はグラスファイバー、中棒(シャフト)はアルミにして計量化を図った。傘の重さは450グラム。
ついにビニール傘の重さとほとんど変わらないものになった。

「サイレントアンブレラ」は、2重構造で雨滴の音を軽減し、静かな雨音に変える。静かだけでなく、その雨音が心地いいと評判だ。
機能面だけでなく、デザイン性も高い。このデザインをしたのは、川口氏とその弟で常務取締役の川口博文氏。現在、兄弟二人で会社を切り盛りしている。


いままで経験したことのない感謝の言葉


お客様からの要望で、5月から「サイレントアンブレラ」用の傘入れも販売する。肩に簡単にかけられる傘袋は持ち運びに便利だ。
「サイレントアンブレラ」は、普通の傘に比べ、紫外線を99%以上カットする。しかもとても涼しいと川口氏は太鼓判を押す。
ゴルフに使用された方から余りの涼しさに感動したという声をいただきました。また聴覚過敏の方や音に敏感な方にも雨音が静かなのでいいと言われます。

雨音が静かだけでなく、心地よい音に変えてくれる。
川口氏の元に喜びの声が続々届いているという。川口氏は、この傘をつくったおかげで傘職人として今まで体験したことのない感動を何度も味わったそうだ。
「サイレントアンブレラ」の販売開始後、感謝の言葉を全国から寄せられた。
それは今まで経験したことのないことだった。

お礼のメールをいただいたり、展示会に出展した時、地方から全盲の方が感謝の気持ちをわざわざ伝えに来てくださったんです。会いたかったって!今までこんな感動、したことはありませんでした。商売抜きで「ええ傘作ろう!」って気持ちになりました。

視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」


日本の傘の伝統技術を守り、継承し続けるために


今、発売されている「サイレントアンブレラ」は、男女兼用だが、もう少し、小さ目のものが欲しいという声を受け、小さ目の「サイレントアンブレラ」も来年には発売予定だ。
心地よい雨音を聞いてみたい方は、動画投稿サイト(ユーチューブ)で一般の傘との音の比較をしているので、聞いてみてほしい。
https://www.youtube.com/watch?v=gqmtitjH9C4

小雨の時はほとんど雨音が聞こない。強い雨でさえ、静かな雪でも降っているのかと思うくらいの音である。
イギリスのメディアからの問い合わせメールもあり、「サイレントアンブレラ」を送ったそうだ。唯一無二のメイドインジャパンの傘が世界へ広がる日もそう遠いことではなさそうである。


★消費者からの感謝の声(一部抜粋)

「・・・、なんて素晴らしい傘なんだろうと思いました。傘にあたる雨音がうるさいのはわかっていましたが、視覚障がいの方にとって命に関わる問題だなんて知りませんでした。それに、障がいのある方は雨が降って危険な時は外出しないと勝手に思い込み、偏見を抱いたことにも気づかされました。(略)・・まさにサイレントアンブレラは、相手の立場に立って寄り添うことで出来上がった思いやりの傘だと思いました。・・・」

「TVで拝見し着眼点の素晴らしさに感激しました。私は健常者ですが、(略)・・私の娘が言った一言に共感したからです。私の娘は(略)・・世の中の音が音階として聞こえるようで、(略)・・音に敏感なところがあります。(略)・・音楽を専攻している方や音楽に携わる仕事の方、またそれを目指しているような方は傘に当たると雨音が非常にストレスになる事多いらしく視覚障がい者のみならず、そういう方々もターゲットにしたらいいと思うとTVを観て言ってました。(略)・・本当に素晴らしい傘だと思います。」


視覚障がい者にやさしく心地よい奇跡の傘、 「サイレントアンブレラ」


丸安洋傘株式会社
本社:大阪市阿倍野区天王寺町北2丁目6-15
オフィシャルサイト:https://maruyasuweb.jp/
YouTube:www.youtube.com/@user-tz5tw1os4j/
instagram:www.instagram.com/maruyasuyougasa/




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