業務用イスを手掛けて60年。「QUON」ブランドで他社との違いを際立たせる

オオサカジン運営事務局

2022年02月25日 09:30

株式会社オーツー / 代表取締役 梶原弘隆 氏

                                                            

長く畳の上での生活が長かった日本人の暮らしにも、今やイスは欠かせない。ただ、一口にイスと言っても家庭用とオフィスや飲食店などの業務用では趣が違う。どちらかと言えばくつろぐための家庭用に対して、業務用は長い時間仕事に集中できたり食事がしやすかったりといった実用性への欲求が強く、より強度が求められて空間を彩るデザイン性も重要。イスをメインに業務用家具全般を自社製造・販売している株式会社オーツー(八尾市楠根町)は10年前に「QUON(クオン)」という新ブランドを立ち上げ、オンリーワン製品の開発普及に取り組んでいる。既に、大手コーヒーチェーン店や大手家電量販店、大手IT企業のオフィスなど納入先を拡大しているが、代表取締役梶原弘隆氏は「時代に応じて常に進化していきたい」と意欲的だ。




コンセプトは「高品質」「世界規模の視点」「オンリーワン」


オーツーの前身は、梶原氏の父が1962年に創業した梶原鉄工所。当初はイスやテーブルの金属部分の加工を下請けしていたが、注文に応じて作るだけの下請けだけでは面白くないと思った父が、完成品製造に手を広げていった。高校生の時、父が亡くなり母が後を継いだが、その母も病気で会社に出られなくなり、2012年31歳で3代目社長に就任。「QUON」を立ち上げたのはその前年のことだ。


2012年がちょうど創業50周年だったのですが、それを迎えるにあたって心機一転、何か新しいものをとの母の提案を受け、社員全員で考えて生まれたのが「QUON」です。「10年後を想像しよう」をテーマに話し合って出てきた「高い品質(QUALITY)「世界規模の視点(UNIVERSAL)」「オンリーワンの商品開発(ONLY ONE)」というコンセプトの頭文字をとったのが「QUON」。お客様の要望に応え、お客様とともに他メーカーとは違う世界に通用する商品を作りたいという思いを込めています。

技術が蓄積した自前の工場がオフィスと一体化。信条は「ないモノは創り出す」


業務用のイスは量産品主体にならざるを得ず、競合も多いため結局は安くて丈夫なものが売れるという世界。そうした価格競争に飲み込まれない製品力を持ちたいという強い意志が「QUON」を生み出したのだが、業界を取り巻く壁は、思いや情熱だけではなかなか乗り越えられない。それでも、地道に取り組みを続け、10年を経て次第に定着してきたと感じている。それを支えているのが、創業時からの財産である自前の鉄工所


本社オフィスと一体となっている工場には、加工能力がそれぞれ異なる4台のプレス機や溶接 ロボットをはじめとした各種溶接機。パイプベンダー※①や電動ミシンなどさまざまな機器がそろっているうえ、創業時から蓄積してきた職人の技術もあります。このため「QUON」のマインドを体現した量産品だけでなく、お客様の個々のニーズやこだわり、専属デザイナーが生み出す新しいアイデアもすぐに形にできます。また、イスの座面の張り職人は「なにわの名工」※②にも認定いただいています。こうした一貫生産体制のおかげで、オリジナリティにあふれ、安全性や耐久性はもとより感性やデザイン性の高い製品をリーズナブルな価格で提供することが可能になっています。理想の一脚を追い求める「QUON」の真骨頂は、「無いモノは創り出す」という姿勢。ですので自社工場はこれからも持ち続けていきます。
※① パイプベンダー:パイプベンダー(Pipe Bending Machine)とは、対象材を管(パイプ)専用とし常温で扁平することなく曲げる為の工具又は機械のこと。
※② なにわの名工(大阪府優秀技能者表彰):極めて優秀な技能を有し、その技能が府内において第一人者と認められる35歳以上の技能者を表彰、表彰は知事が毎年1回、原則として大阪府職業能力開発促進大会(11月)において行なう。


会社の成長と軌を一にして「無気力」の殻を破っていった青年社長


こうして見てくると、梶原氏はやる気にあふれた熱血経営者のように思われるかもしれない。しかし実は自他ともに認める無気力人間だったそう。ある意味会社の発展・新しい方向性を見出して伸びていった過程は、ご自身の成長の軌跡でもありました。


小さいころから跡取りとして育てられ、夜中まで無理やり勉強させられて勉強嫌いになりました。そのため友達とも話が合わずに孤立。将来が決まっているのなら、別に(努力しなくても)という気になって完全無気力状態でした。バンド活動をしていて「これで飯を食う」などと考えたこともありましたね。同級生らが大学を出て就職する時期に合わせて会社に入ったものの、やる気はないまま。社員から待遇や仕事のやり方などについて不平不満をぶつけられると、自分も同じように愚痴をこぼしていました。
ただ、子どものころからモノ作りだけは好きで楽しかったんです。入社して3~4年後に新商品企画の部署に変わったところ、外部デザイナーから言われたことが全然できなくて悔しい思いをしました。でも逆にそれで絵に描かれたものをカタチにすることにはまっていきました。さらに、営業に移ってお客様からラインナップにない特注注文を受けるようになると、何とかその要望に応えたいと考え、他社のサンプルをバラバラにし研究もしました。こうしたことを通じモノづくり目線がより深化していったような気がします。


カタログに工夫。イタリアの会社と提携し新たな『美』の追求も


梶原氏は社長になるまで経営のことを考えたことはなかったと言います。しかし社員とともに「QUON」のコンセプトを考え、海外展示会にデザイナーとともに参加するなどしているうちに自分の目の前が開けて行きます。
業務用家具は、カタログ販売が8割を占めます。どの会社もカタログを作りますから、まずそれを手に取ってもらうことが勝負。ですので特にカタログの見せ方に力を入れました。ロケ写真をふんだんに使い、たとえばベルリン駅とイスを合成したり、古代ローマの温泉技師が主人公の漫画「テルマエロマエ」を参考に温泉にイスを入れたりした写真を大きく掲載するとか。そういう点でも、海外の展示会は大いに参考になります。特にイタリアは刺激が大きいですね。フィレンツェにある※③アルキリボルトデザインというデザイン会社を知ったのも展示会の視察を続けたおかげです。同社は手がけるデザインすべてに〝美しさ〟を追求する姿勢を崩さず、その創造性が高く評価されています。同社と提携して共同でデザイン開発に取り組み、日本のトレンドなどを組み合わせたオリジナル商品も手掛けています。一方で独自のカラーオーダーシステムを採用、フレーム塗装色のバリエーションを数多く取りそろえるなど選択の幅も広げてもいます。
※③アルキリボルト(Archirivolto): アルキリボルトは、1983年にClaudio Dondoli / クラウディオ・ドンドリとMarco Pocci / マルコ・ポッチによって設立された工業デザイン・建築デザインのスタジオ


当面の目標は世界最大の国際見本市「ミラノサローネ」への出展


「QUON」を立ち上げて10年。ようやく従来の量産品と肩を並べるまで「QUON」の売上も伸びてきた。だからこそこの先の10年に目を向け「QUON」の思いをさらに昇華させ、より満足度の高い製品づくりを目指して、社内でリブランディングに取り組んでいる。


価格競争の商品の扱いを全部やめて、オンリーワンで売り上げを立てられるようにできたら最高なんですが、それは見果てぬ夢として、まずは10年以内に世界最大規模の国際家具見本市「ミラノサローネ」※④に出品したいですね。出展には厳しい審査があります。でも日本の家庭用家具メーカーは多く出していますので、我々も業務用でそれに伍していきたいです。インテリアのトータルプランナーとしての活動も拡大していきたいので、新たな人材も求めています。ポイントは「明るく元気にあいさつできる人」です。ご興味のある方は一緒に新しい歴史をつくっていきませんか。
そう語る梶原氏の力強い言葉から「QUON」が業務用イス・テーブルの定番ブランドになる日も近い将来に違いありません。

※④ミラノサローネ:毎年4月にイタリアのミラノ市で開催される見本市。ミラノ大都市圏のロー市にある見本市会場フィエラ・ミラノを会場として、イタリア家具工業連盟イベント会社が100%所有する COSMIT の主催により開催されている。


株式会社オーツー
本社:〒581-0814 大阪府八尾市楠根町2-1-1
オフィシャルサイト:https://otu.co.jp/


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