2024年09月13日 09:30
秘書をやっていたのは、24歳から26歳にかけての1年半くらい。当時やっていた仕事は、実は探偵みたいなものだったんですよ。僕が秘書をしていたころは、政治資金なんかをばらまいていた時代でした。今は絶対に、捕まってしまいますけど(笑)。それであるときに先生から、運動員が活動資金をくすねていないか調べるようにと指示を受けたんです。当時はお金を自分の懐に入れて女性に使ったり、ギャンブルをしたりする人は結構いましたから。そんな人たちを調べるのに尾行をしたりしているうちに『これは面白い仕事だな』と思って、いろいろと調べたら探偵業という仕事があると。先生に『探偵として独立したい』とお話して、許しを得て探偵なりました。
(テリー伊藤が総合演出を務めた)『浅草橋ヤング用品店』や『EXテレビ』などに探偵としてレギュラーで出たり、行方調査をする番組にスタッフで参加したりしていました。あのときは1年間で、50番組くらいに出ましたね。ほかにもドラマの原案や漫画の原案とか、そういうこともしばらくやっていました。
ぶっちゃけて言いますが、学校があったら教育が楽だなと思ったんです。自分のところのスタッフを教えるのは、大変なんですよ。学校があれば、そこに来るということは探偵に興味がある。この仕事がしたいという人が多いだろうから、これは一石二鳥だなと思いました。
たとえば株主総会に出席する10人の役員を全員、尾行してくれというような依頼もあるんです。それは探偵が10人くらいの小さな事務所では無理。そのような依頼があれば僕たちは全国に号令をかけて、総会の会場が東京ならそこに40~50人を集める。あるときはファミリーレストランの店内にいる客が、全員うちの探偵だったこともありました(笑)。そういう大きな仕事ができることが、いちばんのメリットですね。
弁護士さんからの依頼は、調査が日本全国に渡ることが少なくないんですよ。たとえば、借金して逃げた人を探すとかね。調査を進めるうちに北海道のある場所にいるかもしれないとなれば、うちのFCがそこに行って本当にいるか確認する。そういうことができるのも、全国展開をしている強みかなと思います。
たとえば失尾といって、尾行中に調査対象を見失うこともあるんですよ。そうなればうちは、依頼者から料金をいただきません。そうしているのは、うちだけじゃないですかね。最初から『調査費用は300万円』などと言う会社が多い業界なので。うちは見失えば依頼者にちゃんと申告して、成功するまでやります。だからフランチャイジーのみなさんには、『引っ越し屋さんが荷物を運ばなければ、料金はいただけませんよね。それと同じです』と話しています。交通費などの経費はいただいてもいいけど、必ず成功報酬にしてくださいと。
コンプライアンス違反もそうですし、プライバシーの侵害とかもうるさくなりましたね。戸籍謄本なども他人のものを見てはいけない法律になりましたし、陸運局も昔は車のナンバーを言えば持ち主の情報をすぐにくれていたのに、今はもらえないですから。だから、全部の調査の質が変わってきました。より調査員の質によるところのウエートが、大きくなっていますね。
僕はなんでもありよりは、いろいろと制限があったほうがいいと思っています。たとえば結婚調査をした場合に、昔は書類をかき集めて『この人は、こういう人です』という報告の仕方をしていました。だけど今は『この人は、どんな人なんだろう。どういう生活をしているんだろう』と生で見る。そういう方向に変わってきました。いくら綺麗な女性でも、尾行してみたら中身は全然違っていたことも少なくありません。男性の場合はほかに女がいたり、ギャンブルが好きだったり、酒癖が悪いとか。そういうことは、生で見ないとわかりません。生で見たほうがいいという、そういう時代になってきたんです。だけど調査そのものは質が変わっただけで、調べることは同じなんですよ。
殴られて顔が真っ青に腫れ上がった女の子を助けたりとか、そういうことはよくやらせてもらっています。それは僕らの業界だからこそ、できること。もちろん営利団体ではありますが、それに負けないくらい社会貢献をしたい思いが、探偵になったころからあるんです。政治家の先生に育てていただいたことも、影響していますね。でもそれをやっているから勲章が欲しいとか、テレビに出してとかは一切言いたくありません。自分は無名でいいから、困難な状況に置かれている人や子どもを助けたい。その気持ちが自分のなかに、いっぱいにあるんです。