「下駄(Geta) をもう一度(Re:)」
株式会社 リゲッタ / 代表取締役 高本 やすお 氏
下町育ちの高本やすお氏は地場産業のサンダル加工業を継ぎ、2006年有限会社シューズミニッシュ(現:株式会社リゲッタ)設立。
同社の生産拠点である生野区で「職人×リゲッタブランド」を連携させ、世界を席巻するブランド リゲッタを展開。2019年には同社デザインの新ブランド「ツヴォル」が「グッドデザイン賞 2019」を受賞し、2020年には2店舗目となるドバイに出店が決まっている。
家業への道程
学生時代は、大阪っぽく言えば所謂 "ちゃらんぽらん" な子。当時は将来のことも真剣に考えていませんでした。専門学校卒業後、神戸のメーカーで修行しました。その当時は師匠よりも5分前に出社、5時になったら退社。お恥ずかしいはなしですが、当時は修行とは名ばかりで目的意識も低く、ただ大阪と神戸を通勤していたんですよ。
――― 靴作りの醍醐味を目の当たりにして
ある日の帰り道。通勤改札を普段と同じように通ろうとしたとき、ふと「なにやってんやろ...俺」と、思い立ち、事務所に戻ったことがありました。普段なら帰る時間の5時ごろ。なにかの衝動に駆られて、その時は夜9時ごろまで事務所で自主的に修業をしていました。
「気づき」があるまでの修行は「やらされている」という感覚だったのです。
「靴づくりを追求し、モノづくりの楽しさを知っている」同業者の親戚や師匠の影響は大きかったです。尊敬する彼らから情熱や知識を吸収させてもらっていくうちに「靴づくり」に対する考え方も変わりました。
――― 心から「やりたいこと」が見つかった瞬間
それからは靴の勉強が楽しくて仕方ない。当時は無酸素運動のような状態で、寝る間も惜しんで靴づくりに没頭しました。
風下に立つとき
神戸での修行を終えた23歳。親元の会社へ入社。靴メーカーの受注生産で生業を成立させていた当時の課題は「下請け」という弱い立場からの脱却。まず取り組んだのは、「デザイン」の知識を活かし、企業へ商品提案ができる環境構築。現場の職人さんの協力を得て出来上がった靴は市場動向にもマッチングし、大ブレイク。滑り出し順風満帆の2000年に見えたが...
――― デザインした製品が独り歩きし、契約が切られる
追い風になるときには、ある人にとっては逆風が吹いているもの。競合他社の取引先への作為的な歩み寄りで、理不尽な取引を強いられることになります。
「生産拠点を中国に移す」
この取引先の裏切り行為は「受注生産下請け型」だった父の会社にとって廃業への追い込みでしたが、私にとってはチャレンジの年となります。
イラスト:高本 やすお
メーカーとして心機一転
2001年「発注元に左右される下請け」から「みんなに愛されるメーカー」への幕開け。しかし、デザイナーの経験しかなかった私にとっては「ブランティング」「経営」に関することは壁にぶち当たりながらの手探りです。当時はそんな自分を追い込み、寝る間も惜しんで仕事をしていたこともあり、体調を崩すまでに。
その後、背水の陣で挑んだ国内最大級の展示会「東京ギフトショー」
ようやく努力の甲斐あって、その出展をきっかけに商談も増え、リゲッタを知ってもらう機会が増えました。
イラスト:高本 やすお
リゲッタの由来
Re:getA...「下駄(Geta) をもう一度(Re:)」
機能的な履き物である下駄(GETA)を、硬いアスファルトを歩く現代人の足にフィットするように人間工学に基づいた技術とアイデアで再設計し(RE:)、作り上げられたのが「Re:getA(リゲッタ)」
組織が大きくなって気づくこと
企業と社員の成長が顕著になってくると、社風が見えてきます。基本的な舵取りは社長の仕事ですが社風で言えば『ボトムアップ型』とも言えます。
言葉で伝えるとすれば...
――― もし悩んだら、笑顔の量の多いほうにして
何人笑うか?
商品が売れて、うちの会社だけが笑っててもアカン
働いてる現場の人も笑っててほしい
お客さんも笑顔でいてほしい
採用活動をしていくうちに2種類のタイプに気付きます。
『人生楽しそう。ノビノビ仕事をするタイプ』
(この人とおったら、おもろい仕事ができそう)
『社長を助けたいから。支えたいからこの会社で働きたい』
(目的が社長のサポート)
実際のところ、スタートから社長の顔色を見ながら仕事をするタイプは一緒に働くには難しいタイプかもしれません。本当に私が困った時は具体的な指示を出すので問題ないのです(笑)まずは自分の役割でしっかり仕事と向き合ってもらえれば。
弊社ではプロジェクトの立ち上げも
「こんなことしようと思うねんけど、やりたい人おる?」
チャレンジしたい人がリーダーシップを取ります。そんな環境なので成長志向の子は馴染み易い会社かもしれません。そして、この環境なので性格的に内向的な子も知らない間に成長していることがあります。気づいた頃には「手を挙げて」いることも...
本社近くに直営四店舗目となる「リゲッタ生野本店が2/14 OPEN」
大阪生野区「リゲッタ生野本店」は全6ブランドを展開する唯一の店舗です。
目指すは「日本で一番面白い靴屋さん」
正直なところ、はじめから100点目指すと翌年には反省会が待っています(笑)
でも70点くらいを目指せば、残りの30点はみんなで変化を楽しめます。
そして、お客様にはご来店の都度「変化」を見ていただき、「我々スタッフの活躍とお店の成長」をご覧頂けるお店にしていきたいのです。
2019 Gデザイン賞を受賞した「ツヴォルが3月下旬販売」
ツヴォルの特徴は「二つの丸み」
二つあって、丸くて、柔らかい物。
それは人々に温かさや安らぎの気持ちを与えると思っています。
一つでは不安だし、硬くても四角くても不安。
二つの丸み、形が少し違って大きさも少し違うのがちょうどいい。
――― 高本氏おすすめポイント
母性を感じる胸もそう、赤ちゃんのほっぺやお尻も同じでふんわり丸くて二つあって柔らかい。安らぎを考えた時、足元にも歩きやすく履き心地の良い設計を考えたいと思いました。見た目のデザインだけではなく足裏に設置した丸みが歩行の際の衝撃を逃がし、屈曲性もあるので歩行の際にバランスを保ってくれるのもツヴォルの特徴です。
とにかく履いて心地よかったら買ってください。
何よりも" つくり手の想い "に共感頂いてお買い求めいただけたらとても嬉しいです。
おもしろくなかったけど、楽しい国へ
既にアジア展開はしていますが、マーケットを考慮すれば人口世界一位のインド。
個人的には旅先として関心はありました。いわゆる「バックパックで旅する国」
しかし、ビジネスで考えれると、
――― 5年先だと遅い。でも今の我々には早い。
だったら、いま見に行かないと...
そんなことをおもって先日、出張でインドへ行きました。なにより体力的にも元気な時に行かないと(笑)実は、以前、交換留学生のインド人の子が弊社にいたんです。その子に今回の出張で再会できて、とても有意義なインド出張でもありました。インドの進出については課題がたくさんありますが、社内チームの「本気度」を見ながら前向きに検討しています。
ドバイ2店舗目がオープン
ドバイの男性は8割がサンダルです。でもデザインは一辺倒なんです。そこでバリエーション豊かで、履き心地の良い我々のサンダルが受け入れてもらいやすい。それが進出のきっかけにもなりました。今後は周辺のオマーン、カタールなど中東へも積極展開していく予定です。しかし2店舗目のドバイについては2月1日にオープン予定だったはずが、如何せん、業者さんの「お国柄」が如実に出ていて...
店舗改装は終わっているようです(笑)
(取材当時は2020年2月中旬)
やりたいことを描き実現
幼少期より熱烈な「手塚治虫作品」のファンだった高本氏は、2018年にリゲッタカヌーと手塚治虫作品とのコラボレーションを果たす。開発当初の高本氏直筆ラフを見てもその熱い思いが伝わってくる
創業当時から社員と描いてきた「思い描く未来」には今後社史になるであろうスケッチが記されていた。
株式会社 リゲッタ
本社:〒544-0012 大阪府大阪市生野区巽西1丁目9-24
オフィシャルサイト:https://regettacanoe.com/
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