AIとロボット技術の融合で社会課題の解決に取り組む技術者集団のリーダー

知能技術株式会社 / 代表取締役(生命医科学博士) 大津良司氏



社員わずか7人でAIとロボットを融合させた新技術を次々に開発している技術者集団が大阪にある。知能技術株式会社(大阪市北区)。くら寿司が導入したタッチレス端末がコロナ禍の今、注目を集めているが、これも同社の開発だ。代表取締役の大津良司氏は社会人になってから大学院で医学を学び、生命医科学で博士号をとった異色の経歴の持ち主。「社会のため、だれかのお役に立つ」ことをモットーに、次々に活躍の場を広げている。
AIとロボット技術の融合で社会課題の解決に取り組む技術者集団のリーダー

くら寿司が導入したタッチレス端末を開発、コロナ禍で引き合い続々


くら寿司が導入した装置は、入店時や精算時、店頭に設置されたディスプレイに指を近づけただけで触れることなく必要な項目を入力できる。カメラとAIで指の動きを感知することで可能にしたこの装置、新型コロナウイルスが猛威を振るう前から開発が始まっていた。
 
実は私自身、昔からみんなが触れた後のタッチパネルに触るのが嫌でした。それで他社でも非接触型は以前からあったのですが、専用装置が必要であったり大きなディスプレーが高額なため世間には広がってませんでした。そんな中当社の製品は既存装置(券売機等)にセンサーを付け、ソフトをインストールするだけで難しい工事も不要。コストがおさえられるメリットがあります。くら寿司さんは使用用途の要望水準が高く、20数回改良を加えました。そのおかげで利用範囲は幅広くなり、コロナ禍の中、ファストフード店やスーパー・キャッシュレスチャージャーなどさまざまな業種で導入に向けた話が現在進んでいます。

AIとロボット技術の融合で社会課題の解決に取り組む技術者集団のリーダー


阪神大震災が変えた人生。社会への直接貢献の道を探って


大津氏は大学卒業後、富士通に入社。核融合設備のコンピューター化を経てビル管理システムの開発に取り組んだ。全くの門外漢で図面も描けなかったが、同社が持っていた制御技術を使ってビル全体を1カ所で制御するシステムを開発。次々に販路を拡大していった。しかし、1995年に発生した阪神大震災が人生を大きく変えました。
 
サラリーマン時代は楽しかったですよ。いろいろなこと、大きなことができましたから。ただ、組織の歯車でしかない、仕事がなかなか評価されないなどということから、このままでいいのかと思うようになっていました。
そこへ震災です。技術者として「社会に直接貢献できるものをつくりたい」と痛切に思い、地震から1週間後に、東京で「新社会システム研究所」を立ち上げました。社員は私1人です。あの時、出身地・神戸などの惨状が初めて伝わったのは、報道のヘリが映し出した阪神高速道路の倒壊現場の映像によってでした。そこで、災害が起きた時に役立つものとして、画像伝送装置が必要だと考えました。
 
AIとロボット技術の融合で社会課題の解決に取り組む技術者集団のリーダー


災害対策用無人化施工ロボットへの道を一直線。大いなる人脈が生きる


そこからの動きは早かった。A4 1枚にワープロで文章を打ち、手描きの絵を付けて、防衛庁の3幕僚長に提示。自衛隊は災害復旧で現地に入っていただけに、すぐにゴーサインが出、試作機を戦車に搭載して実験にこぎつけた。続けて、長崎県・雲仙普賢岳の土石流除去で、二次災害を恐れる土木建築会社向けに、無人の建設機械をラジコンで動かす自動操縦ソフトを開発して提案。さらに、有珠山・三宅島の噴火、そして福島第一原発と災害現場は相次ぎ、当初は現場の情報を送るだけだったものが、遠隔コントロールする技術も付加するようにバージョンアップしていった。
 
事業を広げていくにあたっては、それまでの仕事で培ったネットワークで多くの人の力をお借りしました。自衛隊の場合は防衛庁の調達実施本部にいた知り合いのつてですし、大手企業の部長さんからは、いろんな企業の経営者を紹介してもらいました。新会社は資本金が300万円でスタートしたためすぐに資金難に陥ったのですが、これも応援してくださる経営者の方に出資してもらって解消できました。

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経産省や大阪市に請われ、大阪でAIとロボットに特化した新会社を立ち上げ


それも、行動力と技術力、そして社会の役に立ちたいという強い思いがあったからこそだろう。現在の知能技術社設立は震災から12年後のことだ。出資してもらった会社との関係で1サラリーマンに戻ってしまったことに忸怩たる思いを抱えていたことと、神戸で一人暮らす父親への「親孝行の真似事」という気持ちがあいまって関西に戻ってきた。
 
その前に、経済産業省から「大阪のロボット事業の育成を助けてほしい」と声をかけられ、市場の広い東京ならできるはずと考えて取り組んだのですが、2年やってもうまくいかない。現場の事象が見えない大手企業と、仕様書があって初めてできる研究者の間に入る存在がないとだめだと経産省にしつこく言っていたら、「あなたがやってくれ」ということになり、大阪市の協力も得られるということもあって、踏み切りました。

AIとロボット技術の融合で社会課題の解決に取り組む技術者集団のリーダー


AIとロボット両方の技術を持つ強みも「だれかの役に立ちたい」の思いあってこそ


2007年に大阪で発足した知能技術社だが、数か月後には西日本高速道路からの依頼を受けて作ったテントウムシ型の「お掃除ロボット」の記者発表を行っている。実践的な技術開発を積み重ねてきた成果の一端だ。その卓越した技術は、三菱総研主催の「社会問題解決プログラムビジネスコンテスト最優秀賞」をはじめ数々の受賞歴が証明している。さらに、医学を学んで知った病院や介護施設で多いベッドからの転落事故を防止するためのセンサーの開発も進行中だ。
AIとロボット技術の融合で社会課題の解決に取り組む技術者集団のリーダー
 
AIが人間の仕事を奪うと懸念されていますが、AIやロボットは人間的な仕事を支えるものです。介護など人材難な部分にAIやロボットを使うことで社会は維持できるようになると考えています。大切なのは現場の課題を技術課題に置き換えて解決につなげることであり、その視点に立って、AIとロボットを合わせて事業化しているところが当社の強みです。コンサルティングにも力を入れています。これから態勢を拡充したいと考えており、学ぼうという気持ちを持ち、人の役に立ちたいという思いの強い人なら一緒にやっていきたいですね。


知能技術株式会社
本社:〒530-0047 大阪府大阪市北区西天満2丁目6-8 堂島ビルヂング414
オフィシャルサイト:https://www.chinou.co.jp/





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