黒糖産業を守っていく!“第三の創業”に挑む老舗砂糖メーカー
上野砂糖株式会社 / 代表取締役 谷添高視 氏
江戸時代から明治の初頭まで、海路からあらゆる砂糖が運ばれ、大阪は砂糖の集散地として賑わっていた。大阪に集まった砂糖は北前船によって北海道に運ばれ、北前商人たちの昆布と売買されていた。砂糖は大阪の昆布文化にも大いに関わってきた歴史がある。
そんな砂糖と歴史的な関係が深い大阪の地で1913年に創業した砂糖メーカーが上野砂糖株式会社である。
2013年の創業110年を機に株式会社神明ホールディングス(※1)のグループ企業として“第三の創業”を開始し、谷添高視氏が代表取締役に就任した。
(※1)株式会社神明ホールディングス:兵庫県神戸市中央区に本社を置く持株会社。事業子会社の株式会社神明は1902年(明治35年)創業の精米卸販売の老舗業者であり、米卸業者としては国内最大手である。
谷添氏は、神明で培った経験を活かして、どんな新しい風を吹かそうとしているのであろうか。
谷添氏に話を伺った。
大阪の地で100年以上前に創業
上野砂糖の歴史は古く、現 取締役会長である上野誠一郎氏の祖父である上野清作氏が1913年(大正2年)に砂糖再製糖業と砂糖販売業を開業した。
その11年後の1924年(大正12年)に上野製糖所を設立し、一貫して各種精製糖や黒糖(黒砂糖)製品の卸・販売、加工黒糖や黒糖蜜、きび糖の他、粉糖のメーカーとして実績を積んできた。
創業以来100余年に渡り培った製法で、沖縄黒糖を贅沢に使用し、鹿児島県徳之島産の国産原料糖とブレンドした加工黒糖などを製造している。
1997年には、現在の工場敷地内に上野浪速ビルを建築し、南船場に所在していた営業、総務部門を移転し、製造と販売を一拠点に集約した。
主力商品は、登録商標商品である沖縄産の黒糖を使った加工黒糖「焚黒糖(たきこくとう)」だ。
ミネラルやビタミンが豊富な黒糖の含有率が高いのが特徴だ。焚黒糖は黒糖に原料糖(砂糖を作るためにまず最初に作られる砂糖)をブレンドしたものである。

ミネラルやビタミンが豊富な健康食としても知られる黒糖は、サトウキビの搾り汁を濃縮してつくられている。
この「焚黒糖」は2012年に、また2023年には鹿児島県の離島である徳之島産の国内産原料糖を使用した国産原料100%の「和砂糖(きびあじ・きび和糖)」(登録商標)が「大阪産(もん)名品」(※2)に認証されている。
きび糖は、さとうきびの風味を残しつつもクセが少ない砂糖で、さとうきびのミネラル成分を含んでおり、料理に使用するとコクが増す。
どの商品も一般消費者や菓子メーカーなどから高く評価されている。
(※2)大阪産(もん)名品:大阪産(もん)名品は、「天下の台所・大阪」で長く愛され続けている、お土産や贈り物にもおすすめの加工食品を大阪府が認定する名称。伝統や大阪らしさなど複数の項目を審査し、認証されたものが大阪産(もん)名品となる。現在300商品以上が認証されている。https://www.osakamon-meihin.com/about.html

第三の創業!砂糖の付加価値を高めるために
神明ホールディングスのグループ企業として“第三の創業”を開始した上野砂糖の代表取締役である谷添氏に目指す思いを聞いた。
Q.神明ではお米を扱ってこられたわけですが、米から砂糖に変わって戸惑いはないですか?
砂糖と米はよく似ているんです。神明も農業を守っていくんだという理念をもっていましたが、砂糖も沖縄離島の黒糖産業を守っていくということは同じです。
黒糖を仕入れる量が増えることによって、島の製造者さん側も守れるんです。
年間8000トンから9000トン生産の、その約2割弱を上野砂糖は仕入れています。
サトウキビ栽培と黒糖生産は離島の数少ない産業であり、売上を伸ばすことは離島の産業を守っていくことになり、強いては国防にもつながる大きな役割を担っている。
Q.黒糖は沖縄のどんな島で生産されているのでしょうか?
沖縄県の8つの離島で生産されています。そのうち約3割が多良間島(※3)です。多良間島は宮古島と石垣島のちょうど真ん中にあるところです。黒糖はその島のナンバーワン産業で、上野砂糖は多良間島の黒糖を中心に仕入れて原料に使用してます。
(※3)多良間島:石垣島と宮古島の間に位置し、多良間島と水納島の2島からなる。多良間村は「日本で最も美しい村」として認定された沖縄県唯一の村。 まだ観光地化されていない壮大な原風景とゆったりと流れる島時間、独特な伝統文化を生み出している。
Q.焚黒糖を始め、数多くの精製糖なども販売されていますが、それぞれに用途も栄養価も違うのでしょうか?
はい、用途も様々。栄養価も違います。例えば、当社の「粉糖 初雪」は、コーンスターチやデキストリンなどの固結防止剤を使用せず、グラニュー糖のみを微粉砕し、50日間固結しない当社独自の粉糖です。
例えばマカロンに使用した場合、出来上がりのひび割れによるロスが少なくなると評判です。
アイスクリームやプリンなどの原料としても最適です。洋菓子や和菓子作りもにも適しています。
「カレーハウスCoCo壱番屋」とのコラボで生まれた『焚黒糖入り辛甘カレー』
谷添高視氏は、神明時代には、新規先開拓や新しい営業所の立ち上げに尽力してきた。
名古屋での新規事業所立ち上げの時に、全国カレーチェーン「カレーハウス CoCo壱番屋」を展開する株式会社壱番屋との繋がりが新たな新商品の開発となった。
神明時代に知り合った株式会社壱番屋の方が外販事業部にいたので、挨拶に行ったんです。
そのときに「黒糖をカレーに入れたら?」と話をしたのがきっかけで、黒糖入りのレトルトカレー『焚黒糖入り辛甘カレー』が生まれました。
黒糖が普段の料理の隠し味にも使用でき、カレーの美味しさをより引き出すことが出来るのを多くの方に知っていただきたいですね。
2024年4月に新発売された『焚黒糖入り辛甘カレー』。
黒糖の風味を生かしたカレーは、辛くて甘すぎない美味しいカレーである。
10月以降には量販店の店頭にも並び始めた。上野砂糖のネットショップ「おさとう ドットコム」からも購入できるので、ぜひ一度試してもらいたい。
おさとう ドットコム https://www.osatou.com/takikokutou-curry.html

Q.今後、進めていこうとしていることはなんでしょうか?
50年ほど前と比べると米の摂取量も砂糖の摂取量も半分以下に減っています。
もっと多く販売するには、製造ラインを増強しなければなりません。昨今、健康志向の高まりにより、黒糖やきび糖などの色物砂糖は需要の増加もあり、受注量が増加しているので、思い切って製造ラインの増強をしています。
新しい製造ラインは2024年末には完成予定である。
Q.神明ホールディングスグループになり、グループという組織を活用した今後の展開のお考えは?
上野砂糖と株式会社神明の人材交流を深めて、その中で神明とのグループ間でシナジー効果を起こして行こうとしています。
上野砂糖はメーカーですが、直接お客さんの生の声を聞けるようにしていきたいと考えています。
また神明からも上野砂糖に営業マンが来ているので、今後は積極的に新規開拓を進めていきます。
新規開拓は一番楽しいですね。
砂糖の付加価値を高めることで、砂糖の新たな位置付けを見出そうとしている谷添氏。
今まで培った矜持を活かし、新しい風が吹きそうである。
上野砂糖株式会社
本社:大阪市浪速区塩草3丁目6番3号
オフィシャルサイト:https://www.osatou.com/
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