美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい

株式会社アークティック  代表取締役 久保田光恵 氏



愛らしいペンギンのキャラクターを見ると、幼い頃の楽しい思い出と甘い舌の記憶がよみがえる人は多いことでしょう。1945年、終戦直後の大阪難波に創業した「北極のアイスキャンデー」(社名・アークティック)は、大阪を代表する味の一つです。大阪を離れてもオンラインショップで購入し続けている長年のファンもいると聞きます。世代や場所を超えて愛され続ける理由とは、そしてさらなるファンを獲得するためのアイデアとは。
代表取締役の久保田光恵氏に伺いました。

美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい


「凍ってなくてもいいからちょうだい!」----終戦直後の大阪人を笑顔にした冷たく甘いアイスキャンデー


107年の歴史を誇る大阪なんばの戎橋筋商店街。多くの観光客や地元住民が行き交うこの通りに「北極」はあります。創業は戦争の傷跡が生々しく残る1945年、食糧難で砂糖も貴重品だった頃です。「せめて子どもたちや女性だけでも冷たくて美味しいものを」と、初代の志村秀三氏がアイスキャンデーの製造・販売を始めました。ミルク・あずき・パインの3種類で1本20円。あっという間に人気に火がつき、店には連日長蛇の列ができたそうです。

美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい

店で手づくりしていましたが、作っても、作っても追いつかないんです。しまいには、
『凍ってなくてもいいからちょうだい』と言い出すお客様までいらっしゃって(笑)。


飛ぶように売れるとはまさしくこのこと。現在は、創業当時からの味であるミルク、あずき、パインに加え、ココア・イチゴ・抹茶・さつまいも・オレンジ・本くずアイス柚子・濃茶・大阪名物ミックスジュースの11種類があります。人気トップ3は、ミルク・あずき・パインです。

美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい
美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい



愛され続ける理由は安心、安全、手づくりへのこだわり


「北極のアイスキャンデー」が75年の時を経ても親しまれているのは、創業以来変わらぬ手づくりを信条としているからではないでしょうか。

食品ですから体にいいものや自分の子どもに食べさせても安全なものというこだわりをもって作っています。ここだけは譲れませんね。


現在のアイスキャンデー工場は兵庫県三田市にあり、7名のスタッフが製造に携わっています。まず大きな鍋に原料を入れて煮込みます。できあがった熱々のアイスキャンデーのもとをステンレス製の氷缶に流し込み、1本1本手作業で棒を入れていきます。この時、氷缶の角を対角線を結ぶように刺すと、北極アイスキャンデーならではの斜め棒(約15度)になるそうです。

斜めに刺さっていることで食べやすく、アイスが落ちにくくなっています。またお持ち帰り用の箱の中でドライアイスのスペースが確保しやすいという利点もあります。


美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい


マイナス24度で冷凍すること約2時間。ゆっくりじっくり凍らせることで独特の食感も生まれるのです。
できあがったアイスキャンデーは1本1本手作業で型から抜き取り、検品しながら包装機へ入れていきます。こうして一日約6000本、年間約70万本のアイスキャンデーが製造されています。

北極の暖簾を守り抜いた決断力と行動力が抜群だった母



両親が育て上げた「北極」を久保田氏が継ぎ、株式会社アークティックを設立したのは2005年1月のこと。アークティックとは英語で「北極の、北極地方の」という意味です。安心・安全な原料、昔ながらの手づくりにこだわり続けるのは早くに亡くなったお父様に代わって店を守り続けたお母様の背中を見てきたからでしょう。

母はいつも着物姿で、商店街では“マダム”と呼ばれていたんですよ(笑)。


しかし優雅な“マダム”というニックネームとは違って、お母様の決断力や行動力は飛びぬけていました。
こんなエピソードがあります。お父様は1955年に自社ビルを建てます。地下がアイスキャンデー工場、1・2階が喫茶・軽食のパーラー、4階は和洋菓子の工房という立派なものでした。しかし高度経済成長期で人気があったにもかかわらず、お母様はパーラーを閉め、事業を縮小するのです。

美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい


従業員が5、60人くらいいたので、管理するのがしんどくなったのかもしれません。


また、30年前にホームページを立ち上げたのもお母様。
大阪を離れたファンの方々に見てもらうために作ったようです。今のようにショッピング機能はありませんから、商品紹介のみで、ご注文は電話でいただいていました。


後に久保田氏がホームページのオンラインショップを開設。遠方に居ながらにして「北極」の味を楽しめるようになりました。
 

販路拡大に新商品開発…。次にチャレンジすることとは



代表取締役に就任して15年、久保田氏は「まだまだチャレンジしたいことがあります」と言います。それは、数十年来のお客様を大切にするのはもちろんですが、新たなファンを獲得することです。その方法の一つとして、販路の拡大を図ってきました。

百貨店さんから夏の催事出展のお声がかかるのですが、母は心斎橋大丸さんだけお付き合いして他はお断りしていました。私は多くの方に北極のアイスキャンデーを知っていただきたいので、阪急百貨店や高島屋さんにも出展するようになりました。

これから試作品に取り掛かる段階ということですが、低カロリーの天然甘味料を使った新商品も企画しています。
少々高くても健康や美容にいいものを食べたいという方が増えています。そういう方にも「北極のアイスキャンデー」を手に取ってもらえるようになればと思っています。


人柄でしょうか、様々な経済団体のメンバーにも名を連ねている久保田氏。自社だけでなく、地元商店街や大阪府、さらに日本全国…と、広い視野を持って経済活動をしていかなければならないとも言います。

美味しいものは人を笑顔にする。 「北極のアイスキャンデー」で社会貢献をしていきたい


うちが社会に貢献できることといえば、美味しくて安全なものを届けることです。しかしこれからは環境問題を考慮するなどプラスアルファの活動をしていきたいです。



「北極のアイスキャンデー」は食べる人だけでなく、社会にも幸せを与えてくれる存在になりそうです。

株式会社アークティック
本社:〒542-0076 大阪市中央区難波3-8-22
オフィシャルサイト:https://hokkyoku.jp/




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