味噌の可能性をどんどん深掘り。 都会の味噌屋だからこそできることをしたい
株式会社 大源味噌 / 代表取締役 安齋善行氏
皆さんの日々の食卓には味噌がありますか?味噌は日本の食文化を代表する調味料であり食材の一つです。スーパーやコンビニでも手軽に買えますが、残念ながらその質や味は玉石混淆。昔ながらの伝統的な製法で作られた味噌は、だんだん少なくなっています。そんな中、文政6年(1823年)創業の『大源味噌』は伝統の味を守り続ける一方、味噌の文化的価値をさらに高めようと様々な取り組みを行っています。「大阪の台所」黒門市場のそばにある本店を訪ね、7代目社長の安齋善行氏にお話を伺いました。

老舗を背負う責任感が空回り。
「傲慢だった」と振り返る30代
穏やかな口調でインタビューに答える安齋氏は、現在55歳。大源味噌に入社して25年目、社長に就任して13年目です。大学時代は建築工学を学び、就職した不動産会社ではマンションの設計・施工管理を担当していたという異色の経歴の持ち主。そんな方がなぜ味噌屋に?という疑問の答えは至極簡単。大源味噌の娘さんと結婚したからです。
「当時は妻の祖父が社長をされていました。とても温厚な方で、経営の全てを私に任せてくださいました。経営のことなんてまったく分かりませんでしたが、とにかく改善したいところだらけで。商品パッケージを変えたり、人の入れ替えや就業規則を改定したり。朝礼も会議も開かない、いい意味で家族的というか、ゆるい会社だったんです」。
老舗ゆえに固定客がついています。そのため、今思えば殿様商売にあぐらをかいているような会社になってしまっていました。ただ仕事にバカ真面目で、従業員さんを怒鳴りつけることもあったそう。安齋氏は30代~40代前半だった当時の自分を「傲慢だった」と振り返ります。老舗を背負っていかなければならないという責任感が、空回りしたのかもしれません。

離婚が大きな転換期に。
聞く耳を持った経営者へ
安齋氏が経営者としての未熟さを反省し、様々な業種のリーダーたちと交流を持つようになったのは、43歳の頃でした。きっかけは、離婚。デリケートな話題なので触れていいのだろうかと戸惑う取材陣に対し、「今ではネタになっていますから大丈夫ですよ」と微笑む安齋氏。味噌同様、熟成が進んで人間がまろやかになっているようです。
「創業家の娘と離婚するのですから、当然出て行かなければならないものだと思っていました。でも先代と義理の母から『離婚はいいけど、会社には残ってもらわないと困りますよ』と言われまして。これを機にセミナーや講演会などに積極的に出席するようになりました。結果を出している方たちの話を聞いて、刺激を受けています」。
新商品の開発や事業の新展開については、数年前までは一人で考えていましたが、今ではスタッフと一緒にアイデアを出し合っています。本店2階の「MISOカフェ(現在は休業中)」で10月から始めた「手前みそ作り教室」も好評。月1回の定期イベントになりつつあります。「今後は料理教室を開催したり、レンタルスペースとして活用したりして、味噌の文化的な発信ができる場にしていきたいです」。

「蔵を持たない味噌屋」が取り組む
うちにしかできないこと
「大源味噌」は大阪では歴史の長い味噌屋です。大正時代には海外輸出にも取り組み、味噌だけではなく醤油の製造も始めるなど、事業を着々と拡大していました。しかし現在は、製造は日本各地にある他社の蔵に委託しています。それは、太平洋戦争によってすべてが灰燼に帰してしまったからです。昭和25年(1950年)に現在地で再スタートを切りますが、「蔵を持たない味噌屋」という独自路線を歩むことにしたのです。
「もちろん自社で味噌を製造したいと思ったこともあります。しかし味噌づくりには広い土地が必要で、設備投資もしなければいけません。あれこれ考えた末、ある時から『こんな都会でやっている味噌屋は他にない。都会の味噌屋だからこそできることをやろう』と考え方を変えたんです」。
取引のある味噌メーカーは、北は仙台から南は鹿児島まで十数社あります。原料の配合割合や使用する原料を指定するほか、昔ながらの味噌づくりにこだわるメーカーの逸品を選りすぐっています。
他社と差別化を図る取り組みの中から生まれた商品の一つが、5年前から始めた1年に1回だけしか仕込まない数量限定の「プレミアム醸造味噌」シリーズです。こだわり抜いた有機栽培の大豆、米と海水塩を使い、歴史ある信州の味噌蔵でじっくり熟成させた天然醸造の無添加生味噌。味わえば“本物の味噌”の味に感動すらおぼえるかもしれません。



対面販売の利点をweb上に。
海外進出も視野に
「大源味噌」には、味噌のありとあらゆることに精通した味噌のプロフェッショナル、「みそソムリエ」が安齋氏を含めて5人います。対面販売、量り売りを旨とする同社にとっては、お客様の様々な質問に的確に答えられる知識は必要不可欠なのです。
しかし、今回のコロナ禍で対面販売だけでなく、オンラインショップの更なる充実を図ろうとしています。
「それぞれの商品の特徴を説明したり、実際に使ったりしている様子を撮影して、その動画をYouTubeで紹介していこうと考えています。店頭で私たちが行っていることをweb上でも見てもらえれば」。
さらに、さらなる販路の拡大を狙って海外進出も視野に入れています。2013年に「和食:日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録されて以来、世界各地で和食レストランが急増。そこに商機があると見ているのです。
「まずはアジアを中心に。直営店を出すことも視野にいれながら、まずは弊社の味噌を使ってもらえる飲食店やホテル等、B to Bの開拓をしていきたいです」。


味噌の栄養、効能をPRして
味噌の可能性をもっと広げたい
「みそは七色の妙薬」、「みそ汁は朝の毒消し」など味噌にまつわることわざがたくさんあるように、昔の人は味噌の健康効果を体験的に知っていたことがわかります。実際、昔ながらの製法で作られた味噌には抗酸化成分であるポリフェノールが多く含まれ、菌の働きも活発であることが科学的に解明されています。安齋氏は、そのような味噌の栄養や効用を多くの人に知ってもらうことで、味噌の文化的価値を高めたいと言います。
「SDGs(エスディージーズ)をご存知ですか?2015年の国連サミットで採択された、国連加盟193ヵ国が2016年から2030年の15年間で達成するために掲げた17の目標です。『貧困をなくそう』、『飢餓をゼロに』、『すべての人に健康と福祉を』など、いくつかの目標をクリアする手段として味噌が大きな役割を担うと確信しています」。
たかが調味料と侮ることなかれ。安齋氏には味噌の無限の可能性が見えているようです。尽きぬアイデアをカタチにすべく、安齋氏は挑戦を続けていきます。
株式会社 大源味噌/
本社:〒542-0073 大阪府大阪市中央区日本橋2丁目5番6号
オフィシャルサイト:https://daigen-miso.com/
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