柔軟な発想力で介護と就労支援を実現。 西成を住みたい町、働きたい町に!
株式会社 シクロ / 代表取締役 山﨑昌宣 氏
『シクロ』は、日雇い労働者の町「あいりん地区」を抱える大阪市西成区をホームグラウンドとし、高齢者介護や障がい者支援を行っています。2008年6月設立という比較的若い会社ですが、今や地域最大の介護事業所に成長。活躍のフィールドは医療や福祉の枠を越えてどんどん拡大しています。新事業の仕掛け人であり、同社の原動力である代表取締役 山﨑昌宣(アキノリ)氏にお話を伺いました。

“やってみなはれ”精神で1年ごとに新事業が誕生
「シクロ」は2008年6月に設立されました。きっかけは、山﨑さんがケアマネージャーとして勤務していた前職の介護会社の倒産。山﨑さんは、利用者の新たな受け入れ先の手配や自身の身の振り方に頭を悩ませていました。するとある利用者から、「山﨑さんにはずっと世話になってきた。あんたが独立してやればいい。ついて行くよ」と背中を押されたのです。そこで一念発起。介護サービスについての相談やプランの提案をするケアプランセンター「シクロケアプランセンター」、ほどなくして自宅へのヘルパー派遣「シクロつるみばし」を立ち上げたのです。
その後は新事業が次々に展開していきます。福祉用具の販売・レンタル「テクノエイドシクロ」、デイサービス、「パルクール訪問看護ステーション」、障がい者(児)相談支援「シクロソーシャルサポート」、就労継続支援雇用型施設「ディレイラ」…といった具合。
1年ごとに事業体が増えているんです。決して計画的ではなく、行き当たりばったりと言いますか、必要に迫られてと言いますか(笑)。いただいたご縁とスタッフのやりたいことが合致したら、鳥井信治郎さんや松下幸之助さんではないですけれど、『やってみなはれ』といった感じです。

西成のおっちゃん達をやる気にさせたビール醸造事業
数ある事業体の中でも異彩を放っているのが、クラフトビール醸造・販売事業「ディレイラブリューワークス」でしょう。
ディレイラに所属している方たちと、物販イベントの後で打ち上げと称する呑み会の席でのこと。西成に若い頃から住んでいるメンバーたちが、山﨑さんに言いました。「わしら酒のことなら誰よりも詳しいから、社長が本気で酒作ってくれたら、商品として俺らも本気で売ったるで!」と。
自分が社会の一員になっているという参加意識を促すことが大事。おっちゃんたちが本気でやってくれるんなら、やってみようと腹を決めた山﨑さん。ビール醸造プロジェクトの始まりでした。
ブルワリーの名前にもなっているディレイラとは、フランス語で「道を外す者=生き方を自分で選ぶ者」を意味します。その名の通り、固定観念にとらわれない自由な発想で醸造に取り組んでいます。看板商品は「西成ライオットエール」。かつて労働者の暴動(ライオット)があった町という負のイメージを逆手に取り、労働者の町の気概を込めました。商品名はとんがっていますが、ホップのほのかな苦みとフルーティーな香りが楽しめる、ドリンカビリティの高いアメリカンペールエールです。

あくまでもビールは質で勝負。コラボ商品も続々登場
ビールの仕込みから配送まで、現在は約80人の障がい者が醸造所や直営のビアカフェなどで仕事に従事しています。しかし、山﨑さんはきっぱりと言い切ります。
“障がいを持つ人が頑張って造っているビール”つまり、感動ポルノみたいなアピールはしたくない。あくまでも質で勝負したいんです。そして、スタッフたちには西成で働くことに誇りを持ってほしい。
山﨑さんの信念とスタッフの尽力の賜物でしょう。2018年4月に初ビールを販売するや否や、国内外の気鋭の醸造所が出品する「インターナショナルビアカップ」で受賞。今やクラフトビールファンがその動向を常に注目している醸造所の一つになりました。
多種多様なコラボ商品も特徴といえるでしょう。1回の仕込み量(1バッチ)が約500リットルと小規模であること、さらに顧客のリクエストをカタチにできる確かな技術があるからこそできる業。これまでにコラボしたのは、大阪王将、前田製菓など。今後はJリーグのセレッソ大阪、大阪メトロ、某百貨店のフードコートへの出店などが予定されています。
複数問題も一気に解決。次なる挑戦はクラフトジン製造
同社の事業体は、今後も増え続けそうです。その一つが、クラフトジンの製造です。クラフトジンとは、ハーブやスパイスを用いて作り手が様々なアレンジを加えた蒸留酒「ジン」のこと。実はジンにはほとんどルールがなく、ジュニパーベリー(ネズの実)が入り、アルコール度数が37.5度以上あればいいそう。だから作り手が自由に遊ぶことができるのです。
このプロジェクトは、同社が抱えていたいくつかの課題を一気に解決に導きそうです。
「思惑通りに完成しなかったビールを廃棄せずに活かす方法をずっと考えていたんです。論文を読んだり、実際にビールからジンを作っている常陸野ネストビールの『木内酒造』さんにお話を聞いたりして、うちでもやってみようと決めました。
ちょうど前田製菓から旧社屋を倉庫兼畑として貸してもらえることになり、ホップを自家栽培。更に一度の醸造量が3000リットルになる第二醸造所を建設しました。
諸般の事情から現醸造所を閉鎖することに。しかしジンの蒸留所にすれば、空き物件にせずに済みます。生産性もアップし、さらなる雇用にもつながります。一石二鳥どころではありません。
山﨑さんの発想力に脱帽です。
『アイデアとは、複数の問題を一気に解決するもの』なんです。「スーパーマリオシリーズ」や「ドンキーコングシリーズ」の生みの親である任天堂のゲームプロデューサー、宮本茂さんの言葉なんですけどね。
尽きぬことのないアイデアが成長のエンジンになる
介護事業を幹として、やってみなはれ精神で次々に新事業を開花させる山﨑さん。
民主主義を信じていないところがあるんです。みんなの意見を取り入れていたら、それこそ衆愚政治ですよ。話は聞きますけど、意思決定は私がします。
発想力、決断力、行動力の三つが揃っているからこそ、200人ものスタッフのベクトルを合わせることができるのでしょう。
山﨑さんのアイデアは尽きることがありません。新醸造所の一部をサービス付き高齢者向け住宅にしたり、ビール製造の際に出る麦芽粕を前田製菓に提供してクッキーを作ったり、新醸造所の敷地内でビールの主原料の一つであるホップ栽培も行う予定だそう。
いつの日か、西成ライオットエールを1バッチ限定で自家栽培したホップで造ってみたいですね。

西成にしっかり根を張りながら、成長し続けるシクロ。
どれだけ多くの実を結ぶのか、1年後、2年後の姿が楽しみです。
株式会社 シクロ
本社:〒557-0031 大阪府大阪市西成区鶴見橋1-6-32
オフィシャルサイト:https://cyclo-inc.jp/
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